写真de俳句の結果発表

第42回「降車ボタン」《ハシ坊と学ぼう!⑦》

ハシ坊

降車ボタン

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

自死と言ふもの捨つる掌よ涅槃西風

福島 サキ

夏井いつき先生より 
「自死」と「涅槃西風」、イメージとして近いかもしれません。
“ポイント”

押し相撲ボタンを巡る抱く子の手

槇 まこと

夏井いつき先生より
「親に抱かれている子が、降車ボタンを押したくて、全身をよじって手を伸ばす。親はマダよマダよとその子の手を引っこめる。バスに乗ると、よく見かける出来事です。そこのところを詠んでみました」と作者のコメント。

「押し相撲」が、降車ボタンのこととは、ちょっと読み取り難いですね。
“ポイント”

受験日や降車ボタンの優し顔

暑寒りんご

夏井いつき先生より
「優し」が「顔」に接続する時は、「優しき」となります。
“ポイント”

春装やショウは途切れず京のバス

曾我風蘭

夏井いつき先生より
「二月の京都の昼下がりのバスは、比較的空いています。茶会か女子会を終えた京女や、お洒落な観光客をバスの中で楽しむことができます」と作者のコメント。

中七「ショウは途切れず」とは、どういう意味でしょう。
“ポイント”

旅費全て一発ルーレットの夜凍つ

俊恵ほぼ爺

夏井いつき先生より
「ゴールドコーストのカジノでの、ある日本人の実話です。その若者の旅の所持金は、残り確か1000ドル程でした。その全額を、彼は『黒』に賭けたのです。その無謀とも言える度胸に、当時の私は感服致しました。そして結果は『赤』なのでした」と作者のコメント。

なるほど、そういう出来事だったのですね。この逸話を十七音に入れるのは、ちょっと難しいか。もう少し、細かく区切って一句一句にしてみましょう。
“ポイント”

紹介状手に見上げれば花吹雪

錆鉄こじゃみ

夏井いつき先生より
「見上げれば」は不要です。良い句材ですから、丁寧に仕上げましょう。残りの音数で「花吹雪」を描写するのですよ。
“ポイント”

小満や「アマゾン」降車ボタン売る

藤田ほむこ

夏井いつき先生より
「『降車ボタン』をグーグルで検索したら、アマゾンで降車ボタンを売っていてビックリ……。ただそれだけのことなのです」と作者のコメント。

うーむ……素材はあってよいのですが、季語「小満」を取り合わせた意図が見えにくいというか。
“ポイント”

目覚ましのアラーム押して朝寝かな

亀子

夏井いつき先生より
「目覚まし」「アラーム」「朝寝」の三点セット。中七「アラーム押して」があれば、「目覚まし」は不要ですね。
“ポイント”

降車ボタン三月尽の退職

神谷元紀

夏井いつき先生より
「三月末に定年退職を迎えます」と作者のコメント。

語順も含めて、調べを整えてみましょう。
“ポイント”

伊勢参外宮から内宮へ路線バス

松浦 夏城

夏井いつき先生より
「母の実家は伊勢にあり、子供の頃はよく里帰りについていったものです。お正月の伊勢参りは臨時バスが出て、それに乗って移動しましたが、普段の伊勢参りは通常路線バスで移動していました。地元では伊勢参りは外宮・内宮の一方だけに参拝することを『片参り』といって、忌み嫌われていました」と作者のコメント。

「外宮から内宮へ」とあれば、「伊勢参り」と書かなくても想像できるかも。となれば、新年の季語を別に置くのも一手ですね。
“ポイント”

バスの抜けるやボタン押し夏に入る

きたくま

夏井いつき先生より
「帰省の長距離バスで停留所間隔が大きい中、寝過ごさないよう、ここを過ぎたら押しておくという意識を持って乗っていたことがあります」と作者のコメント。

「バスの抜けるや」とは、どういう意味でしょう。
“参った”

降りてみた花に誘われ老後旅

美川妙子

夏井いつき先生より
「降りてみた」とあれば、「誘われ」と理由を書く必要はありません。「花」という季語を信じましょう。
“ポイント”

降りようか迷ふ過を桜蕊降る

末居志風人(すえいしかぜひと)

夏井いつき先生より
「バスを降りるタイミングを逃したのと、桜の時期を過ぎた後をイメージしました」と作者のコメント。

「迷ふ過を」の部分、意味が読み取り難いですね。
“参った”

春めくや次で降りて信号右

風乃杏

夏井いつき先生より
語順を一考して、調べを整えてみましょう。
“ポイント”

春近し十二回目を引っ越すや

道工和

夏井いつき先生より
下五の「や」は、バランスが取り難い難しい型です。
“ポイント”

新学期決意表明ボタン押す

沢山葵

夏井いつき先生より
「初登校の日の降車ボタンを押すのは、頑張るぞという気持ちが込められているようです」と作者のコメント。

何のボタンなのか、読み取れません。比喩かな、と。
“ポイント”