俳句deしりとりの結果発表

第44回 俳句deしりとり〈序〉|「くう」①

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俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第44回の出題

兼題俳句

朝貢のラピスラズリや李喰ふ  日進のミトコンドリア

兼題俳句の最後の二音「くう」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「くう」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

くう・ねる・あそぶ園庭は秋日和

オカメのキイ

くうてねてあそんですごすなつやすみ

平井伸明

くうねるあそぶあとは俳句があれば良し

南全星びぼ

くうねるあそぶ俳人の去年今年

さおきち

くふねるあそぶひねもす俳句原爆忌

おりざ

くうねるあそぶ」虹へ向かうセフィーロ

おこそとの

食う寝る俳句」八十への路の秋めいて

あま門

食ふ・寝る・遊ぶ」じやうとうじやうとう夏休み

冬島 直

喰うて寝て育った子等よ馬肥ゆる

若狭草

喰うて寝て起きて喰う寝る馬肥ゆる

⑦パパ

喰う寝るも踊る歌うも秋野かな

ほうちゃん

食うて寝てまた食うて寝て冬籠

京あられ

食うて寝て空っぽになる夏休み

ユリノキ

食うて寝て遊ぶがよろし秋高し

牛乳符鈴

食うて寝て猟犬ぐでとオフの居間

海里

食うて寝よ究極の生秋の風

シラハマナオコ

食う寝るところ秋刀魚やぼんぽこぴー

どゞこ

食う寝るに明け暮れ紅き花カンナ

となりの天然水

食う寝るや秋風感ず休養日

槇 まこと

食う寝るや歩けぬうちの秋半ば

西 メグル

食う寝る遊ぶ心も弾む夏休み

チョコ婆

食う寝る遊ぶ飽きた二月のニート

芝歩愛美

食う寝る処住む処のあっぱっぱ

紫黄

食う寝る所に住むところ文化の日

山川腎茶

くうねるところにすむところ身に沁む

宙海(そおら)

くうねるところ」から加速する夕立来

ぐわ

くうねるあそぶ! 心躍る言葉だな!! これだけたくさん食う寝るファミリーが集まるあたり、みんな共通した望みだよねえ。ちなみに《紫黄》さんをはじめ食う寝るところ住むところシリーズは落語の『寿限無』が元ネタ。《ぐわ》さんの句の「から加速する」は口上の速度がってことでしょうね。夕立がわっ! と迫ってくる勢いとリンクしてて粋であります。
“良き”

喰ふ食ぶ食むおでんそれぞれ具も人も

七六三一三四

喰ふたれど悔ひて冥途の河豚の鍋

霜川このみ

「喰う」と音の組み合わせを楽しんだ人たち。《七六三一三四》さんは「喰ふ食ぶ食む」の三種類使い分けと具だくさんなおでんとの取り合わせが賑々しい。《霜川このみ》さんは「喰ふ」と「悔ひ」、音は似てるけど違う意味の単語の組み合わせ。毒持ちの生物最初に食べた人もすごいけど、毒だと判明したあとにも美味しいからって喰おうとする人類、すごいよな……。以前いつきさんが番組のロケで河豚の毒抜く小屋(?)に行った話も衝撃だった。よみ旅だっけ??
“ポイント”

芯菜って美味しいの秋日和

おかだ卯月

芯菜どこを摘み取る日の盛り

閏星

心菜ザクリ炎帝消え失せよ

二城ひかる

心菜鍋をぐるぐる秋の音

山姥和

心菜さっと炒めて台風圏

ゆりかもめ

芯菜炒めスコールの食堂

陽光樹

芯菜に虚あれば吹く野分晴

七瀬ゆきこ

芯菜の茎に空洞ありて秋

源早苗

芯菜の中へ逃げたき溽暑かな

湯屋ゆうや

食べ物で意外と多かったのが「空芯菜」。作物は季語になってるものも多いですが、手元の歳時記で確認した限りは「空芯菜」は記載されていませんでした。文字通り茎の中が空洞になっているのが特徴な空芯菜。切ったり炒めたりするだけでなく、空洞の内側を句材にしようと挑戦しているのも興味深かったですね。中でも《湯屋ゆうや》さんの句は、芯の中へと自ら入り込もうとする発想が面白い。瑞々しい早緑の管の中で過ごせたらどんなに涼やかで心地良いだろうか。そう願ってしまうほどに、厳しく己を取り囲む「溽暑」なのですねえ。対比によって季語が際立っております。

“とてもいい“

欄を埋めよ夜長の感想文

千葉水路

欄を埋めるヒントやすいつちよ

慈庵風

欄を埋めるペン音夏期講習

雪ん子

欄を埋めるペン先受験の日

のなめ

欄を埋める早さよ秋学期

田原うた

欄に「焼」「定」ためしみるちちろ

一寸雄町

欄の三文字暑気払

じゅあ

欄の長さで(a)や秋桜

白猫のあくび

欄は埋めた薄暑の4時間目

梅野めい

欄へ入れる七文字火恋し

ぷるうと

欄をうめる草の名秋うらら

草深みずほ

欄にわかりませんと秋の蝿

花豆

欄で進路希望出す風の色

鹿達熊夜

欄の志望校名夏霞

天風さと

欄の性別欄や月涼し

春海 凌

欄の職歴秋のこゑゆたか

佐藤儒艮

欄のままの証人こぼれ萩

蜘蛛野澄香

欄の父の氏名や空つ風

すそのあや

欄に零るる余滴春北斗

片山千恵子

欄を薄翅蜉蝣埋めゆく

青に桃々

「空欄」、みんな経験したことのある句材はやはり投句が多かったですねえ。学生時代のテストからクロスワードっぽいもの、書類などまで。「以下の中から答えを選んで書きなさい」みたいな問題で( a )の長さからいってこれや!! って答え選んだりするよね。個人的には《片山千恵子》さんのガラスペンを使ったような句が綺麗で好き。書き切ったあとの感情の余波のように零れる「余滴」。中七まででしっかり余滴を映像化しておいて、下五で季語へと切り替える展開もグッド。気づいたら夜。空にはぽつんと春北斗。手紙を書いていた時間と、孤独と、それでも充実した心と。

全然傾向は違うけど青に《桃々》さんの句も興味深い。文字が主役になってるのでどれだけ季感があるかは悩ましいのですが……問題の解答が「薄羽蜉蝣」だったのかなあ。「埋めゆく」が一画一画ペンを動かす実感があります。画数の多さによる圧迫感がみちみちと詰め寄ってくるッ……!

〈②に続く〉

“ポイント”