俳句deしりとりの結果発表

第44回 俳句deしりとり〈序〉|「くう」③

俳句deしりとり
俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第44回の出題

兼題俳句

朝貢のラピスラズリや李喰ふ  日進のミトコンドリア

兼題俳句の最後の二音「くう」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「くう」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

空と墨磨る夜の冬至粥

虎有子

空と鳴けや梟夜更けまで

まゆ志

空と冷たき風や石巻

狐狸乃

空にクレー砕ける草いきれ

ひな野そばの芽

々の句集を探す黴の書庫

茂木 りん

空の部屋に机と霞草

銀猫

「空空」または「空々」とは、何もないさま、むなしいさまを意味する言葉。または心にこだわりのないさまを意味します。仏教用語でもあり、その場合は「宇宙間の一切の存在はすべて空であり、その空であるという道理自体も空であるということ。」という意味だそうです。《ひな野そばの芽》さんの「クレー」はクレー射撃に使う円盤のこと? だとしたら「空空(くうくう)」じゃなくて「空空(そらそら)」なのかなあ?……いや、むなしく砕けていく、と読めば「空空(くうくう)」でも成立するか。破壊されたクレーの残骸が草いきれの中へ無数に散らばる様が儚い。
“良き”

といふ思想わたしもまた銀河

嶋村らぴ

空寂寂の間萩の散るらん

和脩志

寂よ御巣鷹山の夕焼けよ

黒猫

有とは量子のことか銀杏散る

三日月なな子

仏教用語あれこれ。さきほどの「空空」でも多少触れましたが、「空空寂寂」や「空寂」も宇宙の全ては実体がなく空である、という考えに基づいた言葉のようです。それに対して異を唱えるのが《三日月なな子》さんの「空有」。事物の実体はあると肯定する立場と、実体はないと否定する立場を意味するそうです。ほほう、いろんな考え方があるんだねえ。昨今量子技術についてのニュースも目にするようになりましたが、科学素人からすると軒並み「???」ってなるようなつかみどころのなさなんだよなあ。
“ポイント”

海が風の中へと秋の空

葉山さくら

海とは父母の心か秋彼岸

風蘭智子

海と四国一周山笑う

かたじん

海の口より百八の秋思

広島じょーかーず

海の寺巡りゆく秋の旅

閑か

海の伝説の井戸水涼し

のぐちゃん

海の伝説数多夏期休暇

雨野理多

海の木像若し朝すずし

杉本年虹

海の木乃伊身じろぎ冬の地震

池田義昭

海の脛の硬さよ秋の風

草夕感じ

海も聞くや波音御厨人窟の秋

木香イバラ

海や身に沁む暗き窟の中

むい美縁

海忌中暗いプラネタリウム

夜汽車

海忌洞に一番星見据ゑ

はなぶさあきら

也はんラッパーでダンサー冬の虹

レオノーレ・オオヤブ

也めく老僧海豚は二割引

天雅

也よりふわりと仏春の雲

瀬文

也忌に眠りし詩人俊太郎

大月ちとせ

也忌のなにか唱へてゐる羊

麦のパパ

也忌や核を廃絶する祈り

青屋黄緑

也忌や空虚な空気だけ吐かむ

青野みやび

也上人めく夜店の吹き戻し

松虫姫の村人

也聖人炎天下に念仏す

くちなしの香

也堂踊念仏子も踊る

沖庭乃剛也

也念仏輪に入り盂蘭盆会

山内プーコ

也様おはす跡部(あとべ)の踊り念仏

杏乃みずな

也踊躍念仏みやこの溽暑

信茶

也蒸しすんと奥まで切る白露

梅田三五

也の最中ずっしりと溽暑かな

飛来 英

仏教関係の人名にも空の字はよく使われるようです。空海に空也上人、どちらもビッグネームですねえ。特に空海は伝説的な逸話も数多いせいか、いろんな作品の題材になってる気がする。猿渡哲也先生の漫画にも出てたような記憶があるなあ……『異形人おに若丸』だっけ。ちなみに《夜汽車》さんと《はなぶさあきら》さんの「空海忌」は春の季語。弘法大師空海の入定した三月二十一日に法要が営まれるそうです。

空也上人の忌日である「空也忌」は一月十三日。諸国を巡って念仏を広めた僧侶として有名ですね。念仏踊の創始者といわれています。《梅田三五》さんの「空也蒸し」のほか、《飛来 英》さんの「空也の最中」など、いろんな食べ物とご縁があるそうな。こういう関係性も民衆に広く親しまれたせいなのでしょうか。興味深いねえ、歴史って。

“とてもいい“

くうりすますがことしもやチキン喰む

暮待あつんこ

仏教関係もあればキリスト教関係も。とはいえ、クリスマスを「くうりすます」はちと強引じゃないかい!? いや、「~がことしも」まで含めて歌詞だってわかるけどね?? 「や」は切字なんだか、「や(ってくる)」がぶち切られてるのかどっちだろう(笑)。

“ポイント”

クール便で届く冷え切つたる指輪

常磐はぜ

うっかり荷物に紛れ込んだのか、手の込んだ絶縁宣言か。わざわざクール便で冷やして送るとはいったいどれほどの……こわやこわや。しかしこの場合指輪が冷えてるのはクール便の力なので、「冷ゆ」がどれだけ秋の季語としての力を発揮できるかは少々疑問でありまする。
“良き”

位なる教皇選挙五月晴れ

素偶

位なる妻求め果て秋の蠅

ガジュマル新山

「空位なる」の二句。「教皇選挙」はカトリック教会のローマ教皇を選ぶ選挙のこと。2025年5月には第267代教皇としてレオ14世が選出されました。「五月晴れ」はこの時代に立ち会った我々にとって実感のある取り合わせですねえ。清らかな格調がある《素偶》さんに対して、《ガジュマル新山》さんは……もの悲しいなあ……。「空位なる」ということは、以前は妻の座におさまる人物がいた可能性が高いんじゃないかな。……いや、妻の座にふさわしい存在がついぞ見つからず探し続けている、という可能性もあるか……? いずれにしても「秋の蠅」がなんともわびしい。
“ポイント”

室のホテルのボタン夏の夕

八一九

室の曰くは知らず熱帯夜

雛あられ

個人的な体験で恐縮ですが、昔ホテルマンのアルバイトしてたんですよ。どの部屋にお客様を割り当てるかのルームアサインとかやってたなあ、と懐かしくなりました。どんなに予約入っても使っちゃいけない部屋、ってのもありましてね。先輩に「なんでこの部屋使っちゃいけないんですか?」って聞いてみたんですが、返ってきた言葉は「行けば分かるよ」とだけ。う~~~ん、なーんか気持ち悪いなあ……。噂程度の話ですけど、ホテルって部屋にお札貼ってあるんじゃないか、幽霊が出る部屋があるんじゃないか、なんて話はよくありますよね? それ以来あまりその部屋には近づかないようにしていたんですが……。ある日、夜勤シフトに入った僕は件の空室を訪ねることになるのです……。
“ポイント”

席のやっと見つかる春の寄席

落花生の花

席の目立つ完売月涼し

さ乙女龍チヨ

席の目立つ芝居や秋時雨

薔薇の舟

席を夫婦占むドヌーヴの秋

早霧ふう

席に薔薇を一輪誕生日

夏村波瑠

席にすました顔の秋の風

咲葉

席に空席さんのゐる月光

髙田祥聖

比較的身近な句材である「空席」。寄席やお芝居、移動やお店での食事など、いろんな場面での空席との関わり方が想像されてきます。一方、《咲葉》さんと《髙田祥聖》さんは違った角度からのアプローチ。人が座っているべき場所がぽっかりと空いている状態、それそのものを句材にしています。特に《髙田祥聖》さんの「空席さん」がいる、という把握はファンタジーホラーみたいで好き。空席さんへとさしかかる月光はゆらりと屈折したりするのだろうか。
“ポイント”

港チャイム秋爽のパリジェンヌ

とひの花穂

港に河豚の寿司喰ふ別れかな

巴里乃嬬

港に風呼ぶ俳句甲子園

あみま

港のつれづれなるや秋扇

ゆきえ

港のラウンジに食ふ雑煮椀

清瀬朱磨

港の長きデッキや雁渡し

大久保一水

港の展望からの秋夕焼

メグ

港の展望台や油照り

殻ひな

港バス一番乗りの朝や秋

Q&A

港閉鎖凍つる夜のスマホ音

玄子

空港のつれづれ。俳句甲子園を季語として使ってくれてるのも嬉しいねえ! 東京の地方大会は羽田空港でやっておりますので、みなさまぜひご覧下さいませ。地味ではあるけど《清瀬朱磨》さんの句がけっこう好き。あれこれ仕事で空港は利用するけど、お正月には乗ったことない気がする。ラウンジにも特別にお雑煮食べられるようにしてたりするのかなあ。「空港のラウンジ」と美々しい「雑煮椀」、和洋融け合った上品な空間であります。

〈④に続く〉
“ポイント”