写真de俳句の結果発表

第61回「鯛焼屋の行列」《ハシ坊と学ぼう!⑬》

ハシ坊

鯛焼屋の行列

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

風も人も香ばし冬の路地裏

とも

夏井いつき先生より
「風も人も香ばし」の理由が知りたいですね。「鯛焼き」は冬の季語なので……

添削例
風も人も香ばし路地の鯛焼き屋
“ポイント”

鯛焼き屋老舗感じる木の看板

仲間英与

夏井いつき先生より
俳句では「感じる」のような説明の言葉は不要の場合が多いのです。感じているから、このような句が書けているのですものね。どんな看板だったから、老舗を感じたのか。その看板を描写してみましょう。
“ポイント”

芝居跳ね友と食む鯛焼甘し

芳野まさこ

夏井いつき先生より
あとで「鯛焼甘し」とあるので、「食む」は不要です。
“参った”

周回遅れのランナーへ止まぬ拍手や天高し

スマイリィ

夏井いつき先生より
「長距離走では、少しずつ列は散け、周回遅れの選手がでてくる。力いっぱい完走する選手に、人々は惜しみない拍手を送る。その頑張りは、観戦者に清々しさを与えてくれる」と作者のコメント。

音数が多すぎるので、「周回遅れへ」と上五を八音の字余りにして、中七下五で調べを取り戻すことはできます。
“良き”

浪花やで鯛焼きもやけどたこなんちゃう

駿酔

夏井いつき先生より
「鯛焼き屋さんの名前が、浪花屋さんだったので……」と作者のコメント。

「で」という助詞が散文的な使い方になっています。更に、「たこなんちゃう」が分かりにくいですね。
“ポイント”

季語なし

有名店菓子の列は進まない

嫌夏

夏井いつき先生より
季語がありません。その「菓子」が季語だったら、カンタンに対処できるのですが。
“難しい”

ちゃんちゃんこ着てちゃんちゃんこ売る白寿翁

さら紗

夏井いつき先生より
下五の字余りがとても惜しい。「白寿」とするか、「翁」とするか、二択でしょう。
“参った”

手ににずしと香る鯛焼の紙袋

山内彩月

夏井いつき先生より
上五「に」が一つ多いのは、イージーミスでしょう。「に」を一つとれば、十八音の字余りですが、人選に頂けます。
“ポイント”

まかないは餅もんじゃ屋の土間

東ゆみの

夏井いつき先生より
「まかない」が「餅」であるという事実にリアリティがあってよいです。ただ、「~の土間」とは、土間で食べてる? そのあたりが、少々分かりにくい。調べも整えられるとよいのですが。
“ポイント”

泰し日の客の行列花八ツ手

富永三紀

夏井いつき先生より
「泰し」は「日」にかかるのですよね。だとすれば、「泰き日」となりますが……。
“参った”

寒天のさやかに透くる麻布かな

ノセミコ

夏井いつき先生より
一読、冬の季語の「寒天」かと思ったのですが、食べ物の寒天なんですね。だとすると、その誤読が生じにくい語順を工夫してみてはいかがでしょう。
“参った”

鯛焼きに「養殖」「天然」あるらしい

郡山まる

夏井いつき先生より
「『養殖』はいっぺんに複数匹焼ける金型で焼いたもの、『天然』は一つずつ焼く金型で焼いた鯛焼きのことらしいです」と作者のコメント。

中七下五が説明というか、知った情報を書いてみた、というか……。
“良き”

行列の五感に触れし芋煮会

むねあかどり

夏井いつき先生より
中七が一種の説明になっています。その「五感」の一つ一つでキャッチした映像や匂いや味を、言葉で描写してみましょう。
“参った”

「情報を食ふ」列長し秋麗

かなかな

夏井いつき先生より
「ある有名ラーメン店の主が、大半の客が同じものを注文し、同じ感想を言うのを聞き、『ラーメンを食べているのではなくて、情報を食べているのでは』と言ったそうです。情報を確かめるための行列とはいえ、美味しいものを待つ気持ちは明るいんだろうなと思います」と作者のコメント。

「ラーメンを食べているのではなくて、情報を食べているのでは」という言葉には納得させられます。ただ、この俳句の字面だけで、「情報を食ふ」の意味がどこまで理解されるか。そこが、少々不確定で気になります。
“良き”

季重なり

鯛焼きに食欲の秋店並ぶ

夏井いつき先生より
「鯛焼き」は冬の季語ですから、こちらを季語として作り直してみましょう。
“参った”

鯛焼きや食べ食べ歩くインバウンド

西茉生

夏井いつき先生より
「海外では『鯛焼きは日本の代表的な和菓子』として認知されていると聞きます。アニメの影響もあるでしょう。そういう外国人たちが、鯛焼き屋を見つけたら並んでも買いたくなると思います。街の中を食べ歩きしている外国人の姿を想像して詠みました」と作者のコメント。

こういう情景を描きたかったとして、下五を「インバウンド」と説明してしまうのは、俳句としては得策ではありません。その外国の人たちの様子を、中七下五を使って描写してみましょう。
“参った”

季重なり

たい焼きのミミうろたえ橋の律の風

飯沼深生

夏井いつき先生より
「たい焼き」と「律の風」、どちらを主たる季語として立てたいのか。自問自答してみましょう。
“参った”