写真de俳句の結果発表

第61回「鯛焼屋の行列」《ハシ坊と学ぼう!⑯》

ハシ坊 NEW

鯛焼屋の行列

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

鯛焼きや人もこんがり牛歩かな

八重山吹

夏井いつき先生より
「や」「かな」と、切字が重なると、感動の焦点がブレるということで嫌われます。どちらかを外しましょう。
“ポイント”

鯛焼にビタミンBがあるみたい

雄蹴

夏井いつき先生より
「あるサイトからの情報です。意外な成分があるんだなと思いました」と作者のコメント。

この書き方だと、報告になってしまいます。「鯛焼」と「ビタミンB」の取り合わせを詩にするには、あと一工夫必要です。
“ポイント”

鯛焼は飯櫃の中客はまだ

海里

夏井いつき先生より
「電子レンジでチンするのではなく、『ご飯粒のついた鯛焼きがいい』という友人がやってきます。祖母の代から私もそうして頂いてきました。焼きたてはもちろん最高ですが、ご飯の布団でぬくぬくとしている鯛焼きを、ほうじ茶でいただくというのもまたよいものです。季語としての『鯛焼』とするには重みがないとは思いましたが、お試しいただきたくて……」と作者のコメント。

なぜ、「飯櫃」に入れるのだろうと、その行為そのものが疑問でしたが、なるほど、そういうことなのですね。とはいえ、「飯櫃」そのものを知らない人が増えている昨今、この句意を理解してくれる人の割合は、少ないのではないかとも思います。勿論、自分が表現したいことに果敢に挑むのは、大切なことではあるのですが。
“参った”

係みな赤い羽根ある投票所

となりの天然水

夏井いつき先生より
「行列から投票所を思い付きました。その上で歳時記をめくって『赤い羽根』の項目を見つけ、あれこれ書きながら作った句です。『貼る』だと、投票が始まる前に示し合わせて貼っている様子みたいに読めそうで、純粋に皆さん赤い羽根が付いているなという感慨を表現したくて、『ある』としました」と作者のコメント。

なるほど、そういう意味での「ある」なのですね。とはいえ、多少の違和感をこの一語に感じてしまいました。「付け」では、当たり前な感じがしたのかもしれませんが、「付け」の方が受けとめ易いのではないかと。
“ポイント”

しなしなの詫びし袋の鯛焼きよ

風花舞

夏井いつき先生より
「詫びし」は、誰かに謝るという意味でよいのでしょうか。だとすれば、語順を再考したほうが、分かりやすいかな。
“良き”

鯛焼屋へ百の頭の並びをり

はるを

夏井いつき先生より
この「頭」は、行列の人々の頭? 鯛焼きの頭? 句意が明確になるよう、叙述を再考してみましょう。
“ポイント”

鯛焼や内ポケットにバスの中

高田三毛

夏井いつき先生より
上五が「鯛焼や」で切れているので、少々句意が読み解き難く。鯛焼を内ポケットに入れている、という意味でしょうか? だとすると、助詞「や」が意味を分かりにくくしているということになります。
“難しい”

鯛焼きを放つ蛸唐草の海

雉虎緑目

夏井いつき先生より
「蛸唐草の古伊万里のお皿に鯛焼きを並べる。ささやかな贅沢です」と作者のコメント。

「~放つ~海」という表現の工夫は分かるのですが、「蛸唐草」が模様の名であり、その「海」が古伊万里の皿の比喩であることまで、読み解いていくのに少々時間がかかります。これが例えば、「古伊万里の海へ」ぐらいにシンプルに書けば、ぐっと分かりやすくなるのではないかと。
“参った”

あやつこやぬかに鍋墨太き春

のんきち

夏井いつき先生より
「あやつこやぬかに」の部分が分からなかったのですが、「綾っ子や額に」という意味のようです。「生まれた子を初めて宮参りさせるとき、鍋墨や紅で額に×印や『犬』の字などを書く風習。魔よけや子の成長を願うためという」という説明が辞書にありました。この言葉を知らない人たちに、どこまで句意が伝わるのか。せめて、上記のように漢字にしてもらえると、意味を理解するための取っ掛かりができるのでは。
“ポイント”

観覧車素風に晒され一周す

ふく

夏井いつき先生より
第36回『廃遊園地』並選の〈野ざらしの観覧車へと素風過ぐ〉を推敲しました。かつては賑わった観覧車の色が褪せて剥げて、でもまだそこに立っている様子を詠みました」と作者のコメント。

「て」を入れて、「す」を外すと、人選です。

添削例
観覧車素風に晒されて一周
“ポイント”

かいずかな口の中ではねまわる

勺子

夏井いつき先生より
「あつあつのたい焼きを、ほくほくと食べている様子です」と作者のコメント。

「かいず」とは黒鯛の若魚でしょうか? 作者コメントによると、「たい焼き」を比喩したということになるのかもしれませんが、一句のどこにも「たい焼き」という言葉が出てこないので、読んだ人は黒鯛の刺身? と思ってしまいます。
“ポイント”

ヘルメットの中差し入れの鯛焼や

すがのあき

夏井いつき先生より
佳い句材ですね。語順を再考すると、人選は目前です。
“参った”

シュレッダーの咀嚼しづめて鯛焼を

岡根喬平

夏井いつき先生より
「こちらの句は、就業後に鯛焼を食べる光景を詠みました。シュレッダーは紙を食べていると把握して、大食漢のシュレッダーを見ていた人も、お腹が空いてしまうのではないかと思いました」と作者のコメント。

「シュレッダーの咀嚼」と「鯛焼」の取り合わせは、面白い。「~しづめて~を」という叙述は、一考の価値があります。
“参った”

ペンギンの散歩キラキラソーダ水

遊川百日紅

夏井いつき先生より
「きらきら」と平仮名書きにすれば、人選。
“良き”