第45回 俳句deしりとり〈序〉|「がや」③

始めに
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。


第45回の出題
兼題俳句
軒下の紫陽花あがれない我が家 けーい〇
兼題俳句の最後の二音「がや」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「がや」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
蛾役ってオリジナルなの文化の日
松本厚史


蛾屋集ふ影ゆらめきて夏の霜
沖庭乃剛也
蛾屋の夜蛾と戯れて蛾と眠る
水越千里


蛾寄生長実粒茸謝肉祭
家守らびすけ
これも蛾の仲間……? そもそもなんて読むの……??
この長ったらしい名前は「蛾寄生長実粒茸(がやどりながみつぶたけ)」と読み、その正体は文字通りキノコの仲間。蛾の成虫に寄生する冬虫夏草の一種なのだそうです。へぇー!! 写真を見たら、寄生された蛾の死体から淡黄色の粒々が生えており……苦手な人にはなかなかショッキングな映像で……『風の谷のナウシカ』の王蟲の死体が苗床になってるシーンみたいになってますけども……。なんでこれと「謝肉祭」取り合わせた!? と問いただしたくなる気持ち半分、いやたしかにカーニバルの衣装や仮面の非人間的な感じが似合うかもな、と納得しそうな気持ち半分……。


賀谷くんのくれし藤の実薄みどり
源早苗
賀谷という苗字はかやと読むなんて
あまちゃん
「賀屋」の前「加」が欠けてます秋の聲
加賀屋斗的
人名の「がや」。「賀谷(がや)」かと思いきや「賀谷(かや)」なの? 《加賀屋斗的》さん、自分の俳号をしっかりネタにしてきましたねえ、ナイス! 「秋の聲」がなんとも愛すべき侘しさ。


我や雅など名付けの漢字探し秋
千代 之人
「雅」やっぱり十二画の「賀」夜長かな
鷹見沢 幸
雅や美なら画数も良し春近し
骨のほーの
こちらは名字じゃなくて名前。名前につかう漢字をどうしようか、って悩むよねえ。「秋」や「夜長」にじっくり悩んでる人もいれば、あっけらかんと「春近し」を取り合わせる人もいるのが個性見えて愉快。


GAJAに酔ふ葡萄の土はありのまま
わおち
GAJAは白葡萄酒醸すテロワール
ときちゅら
GAJA二本空き散財の年忘
太井 痩
ガヤ・エ・レイ抜栓良夜の銀婚式
芝歩愛美
ガヤのバルバレスコ錦秋のテラス
天雅
ガヤのワインうちに有ります紅葉鍋
伊藤 柚良
「GAJA(ガヤ)」? アルファベットのJをヤで読むということは、スペイン関係のなにかかしら~と予想しますが、はて。調べてみると、有名なイタリアワインの生産者であり、かつてスペインからイタリアのピエモンテへ移住した、と解説がでてきました。ほほー。あまりワインには詳しくないんですが、並んでる句を見てると美味しそうで良いねえ。《芝歩愛美》さんや《天雅》さんの銘柄調べるとけっこうイイお値段しますわよ、奥さん! 良夜に錦秋、いずれも秋が爽やかな味わいを思わせて美味しそう。


ガヤルドにガソリン給油空高し
原島ちび助
ガヤルドにこだわる理由かじけ猫
欣喜雀躍
ガヤルドに乗り込む薔薇の打点王
亘航希
ガヤルドのソフトトップへ花吹雪
海里
ガヤルドのチョロQ柿ピー黒ビール
めいめい
ガヤルドのつなぐ使命や天使祭
ゆきえ
ガヤルドのハザード点り神の留守
小川さゆみ
ガヤルドのフォルム秋夜の角ハイよ
白発中三連単
ガヤルドの音けたたまし月冴ゆる
夏村波瑠
ガヤルドの轟音サーキットに夕焼
夢佐礼亭 甘蕉
ガヤルドの車体のカーブ寝待月
舞矢愛
ガヤルドの消しゴム飛ばし若葉風
小笹いのり
ガヤルドの爆走山葡萄踏みて
のなめ
ガヤルドの唸りに揺れる銀やんま
九月だんご
ガヤルドを撒く2CV(ドゥ・シュ・ヴォー)や謝肉祭
早霧ふう
ガヤルドを乗りまはす餓鬼紅葉狩
白猫のあくび
ガヤルドを緑白赤夏フェスタ
チョコ婆
イタリアつながり。「ガヤルド」はイタリアのランボルギーニが販売している高級スポーツカーなのだそうです。価格を調べたらモデル一覧と共にン千万円単位がずらずらずら~っと出てきました、ひえーっ! 小市民のわたしゃチョロQか消しゴムくらいでええわっ!


ガヤの丘金風をゆく牧羊犬
杏乃みずな
ガヤの木々へ孔雀色なる夏の風
内田ゆの
悩ましい二句。なにが悩ましいかというと、この「ガヤ」は同じ場所なのか、ってこと。世界に目を向けると、「ガヤ」とつく地名は複数あるようなんですね。《杏乃みずな》さんの句は「丘」や「金風」との取り合わせが秋のワイン畑を思わせるので、さきほどのワイン関係の「ガヤ」かなあと予想します。一方、《内田ゆの》さんの「ガヤ」は「孔雀色」がイタリアというよりは東南アジアやインドをイメージさせるんですよねえ。
〈④に続く〉



