写真de俳句の結果発表

第62回「バッテリースタンド」《ハシ坊と学ぼう!⑥》

ハシ坊

バッテリースタンド

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

ミーニシ(新北風)島影遠く淡みゆく

猫日和

夏井いつき先生より
「毎日、西の水平線に見える慶良間(けらま)列島の島影を眺めております。ミーニシが吹く昨今は、島影が薄らとして霞がかかったように見えます。『霞』は春の季語なので、『淡みゆく』としてみました」と作者のコメント。

意図は良いと思います。上五は「ミーニシ」? 四音ですが、ここは五音に整えたいですね。
“参った”

熊の出る都市に生まれて電気柵

如月頭花

夏井いつき先生より
上五中七は良いです。下五「電気柵」がそのままの着地になってしまいました。下五で変化球を投げられたら、人選は間違いなしです。
“ポイント”

秋の夜や既読忙しスマホ首

数哩

夏井いつき先生より
「ストレートネックと言われ、首が痛いのに、次から次とくるLINEを見ている自分を詠いました」と作者のコメント。

「秋の夜や/既読忙し/スマホ首」 斜め線の箇所に意味の切れ目がある三段切れです。
“ポイント”

秋晴や騒がし子ついに電池切れ

出羽泉まっくす

夏井いつき先生より
「騒がし」が「子」に掛かるのであれば、「騒がしき子」となりますね。そうなると、中七の調べが滞りますね。
“ポイント”

片陰やショベルカーの鼻の先

東ゆみの

夏井いつき先生より
「ショベルカーの鼻先だけでも日陰に置いて、休ませて充電させているようでした」と作者のコメント。

そういう意味を伝えたかったのですね。一読して、作者は「片陰」にいて、「ショベルカーの鼻の先」を見ている? ということかと思いました。「片陰に鼻先」とでもして、後半で「ショベルカー」を描写すれば、意味が伝わり易くなりそうです。
“ポイント”

「アンパンマンのマーチ」を子ら避難所に花辛夷

一寸雄町

夏井いつき先生より
「中七で切れます。東日本大震災直後、『アンパンマンのマーチ』は避難所の子どもたちを元気付けた曲で、繰り返しラジオから流れ、一緒に歌われ大人も励まされたそうです。 〈「アンパンマンのマーチ」を避難所にきく花辛夷〉と、どちらを投句するか迷いましたが、『子ら』を入れ中七の後に待つ、聴く、歌う、リクエストする等を、人それぞれに思い浮かべてもらうことにしました。中七を『避難所に子ら』とで迷いました」と作者のコメント。

句材がいいですね。「~を子ら」と書かなくても、曲名が「子ら」を想像させます。むしろ。「子ら」を外すことで、子供も大人も励まされるという感じが伝わるのではないでしょうか。
“ポイント”

バッテリースタンドや暗きに潜み春を待つ

老蘇Y

夏井いつき先生より
「や」と詠嘆すると、全体の言葉の質量のバランスが傾いてしまうので、「や」を外すと人選です。
“ポイント”

秋風や苦さの増した鼻麻酔

堂園 穂世

夏井いつき先生より
第60回〈秋風や友の退部と胃カメラと〉の推敲句です。『友の退部と胃カメラと』というフレーズの意図が、少々掴みにくいという指摘をいただきました。掲句は秋風と胃カメラで考えました。友の退部と胃カメラを並列に並べたのは、ママさんバレーをしていて、この日の朝、友人の退部LINEを読んで、人間ドックに出かけました。爽やかで冷たい秋風が頬に当たった時、思わず泣きそうになりながら歩いた記憶だったからです」と作者のコメント。

なるほど、コメント欄に書いてあるエピソードは、五句ぐらいになりそうですね。その中から、ここだけを切り取る。この句は、ちょうどよい分量になっていますね。中七「増した」ではなく、「残る」ぐらいにすると、「秋風や」という季語と詠嘆が生きてきます。
“ポイント”

スタンドを通り過ぎるや飛花落花

シナモンティー

夏井いつき先生より
「桜を見に家族ででかけましたが、AV車に乗り慣れないために充電スタンドを見過ごしてしまったということを詠みました」
と作者のコメント。

「通り過ぎる」は、ただ過ぎただけの意味ですから、コメントにあるように「見過ごす」とすれば、探していたことが伝わります。
“難しい”