写真de俳句の結果発表

第62回「バッテリースタンド」《ハシ坊と学ぼう!⑧》

ハシ坊

バッテリースタンド

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

酷使されスマホ熱出す年の瀬や

ろくろう

夏井いつき先生より
「スマホ熱出す」とあれば、「酷使」したに違いないことは想像できます。上五の五音分をどう使うか。そこから推敲をはじめてみましょう。
“参った”

冬ざれや電気水なし余震あり

西茉生

夏井いつき先生より
「いつでもあると思っているものが、突然なくなった時のうろたえと絶望感、さらに余震の怖さも加わった。充電もできなかった、3.11の震災後のことを詠みました」と作者のコメント。

その思いを書くことは、自身の心にとっても大切な行為だと思います。俳句のそのものについてアドバイスするならば、〈冬ざれや/電気水なし/余震あり〉斜め線のところに意味の切れ目がある三段切れになっています。語順を替えると、問題は解決しますよ。

添削例
電気・水なし冬ざれの余震あり
 
“ポイント”
 
 

バッテリースタンドの蜂の巣めくや明治節

トヨとミケ

夏井いつき先生より
「バッテリースタンド」が「蜂の巣」みたいだという気付きが良いです。「明治節」との取り合わせも、意欲的ではありますが、全体を読んだ時に、材料過多の印象が残り、調べも少々窮屈。「明治節」を諦めて、もう少しシンプルな季語でおさめるのも一手ではないでしょうか。
“ポイント”

大見出しドジャース勝利天高し

きらら

夏井いつき先生より
「分別ごみの新聞の文字から新聞につながり、大リーグのドジャースの勝利がどのスポーツ新聞の一面にも載った嬉しさと誇らしさを詠みました」と作者のコメント。

お気持ちは分かりますし、私もすっかり俄ドジャースファンになりました。そんな人が多かったのだと思います。この秋には、似たような類句をたくさん目にしました。
“ポイント”

充電の点滅あをく聖夜かな

亘航希

夏井いつき先生より
中七を「あおき」とすれば、人選です。
“ポイント”

断捨離の身過ぎ爽やか百寿かな

まさし

夏井いつき先生より
中七「爽やか」で調べが切れてしまうので、下五「かな」の詠嘆が浮いてしまいます。ここは、中七と下五を繋ぐのが得策です。

添削例
断捨離の身過ぎ爽やかなる百寿
“ポイント”

電池切れの我マフラー抱き行く

向日葵子

夏井いつき先生より
「『われマフラーいだき』と読んでください」と作者のコメント。

書きたい内容に共感します。「我」の一語を入れないほうが、さらに実感の強い句になりそうです。人選は目の前ですね。
“ポイント”

自販機の電力買ふて歳の暮

藤田ほむこ

夏井いつき先生より
「買ふ」に助詞「て」がつく時は、連用形になりますので、「買ひて」となります。音便を発生させる場合もあります。音便については、YouTube『夏井いつき俳句チャンネル』【音便シリーズ】を参照して下さい。
“ポイント”

やっと咲き急いて散りし金木犀

こころ美人

夏井いつき先生より
「今年(2025年)の金木犀は咲かないのかと思っていたら、やっと咲きすぐ散った。散り急ぎでしょ、あんた!」と作者のコメント。

言いたいことはストレートに伝わりますが、「金木犀」以外の花の季語にも当てはまってしまいます。金木犀ならではの表現を一語でよいので、工夫してみましょう。
“難しい”

蜂の巣に心を満たすモバイル波

永順

夏井いつき先生より
「季語を入れなくてはと、無理に探してしまいます。充電の並びを蜂の巣に見立てて、バッテリーと心に充電を、と思います」と作者のコメント。

何かを「蜂の巣」に見立てると、季語としての鮮度は落ちます。それを理解した上での見立てだとしても、中七「心を満たす」は、作者の感想。俳句は、感想でなく、描写だと考えて下さい。
“良き”