第62回「バッテリースタンド」《ハシ坊と学ぼう!⑨》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
チャージスポット凍蝶踏まれ粉の蒼
立石神流
夏井いつき先生より
「チャージスポットの前で、蝶が踏まれていたので、そのことを詠みました」と作者のコメント。
ちょっと情報が多いか。「粉」「蒼」をどこまで書くか。ここが推敲のポイントになりそうです。
「チャージスポットの前で、蝶が踏まれていたので、そのことを詠みました」と作者のコメント。
ちょっと情報が多いか。「粉」「蒼」をどこまで書くか。ここが推敲のポイントになりそうです。


たっぷりとお日さま集め干し柿は
恵翠
夏井いつき先生より
俳句としては成立していますが、類想句はかなりあります。この内容に、オリジナリティかリアリティを一匙加える。それが、句作の醍醐味というやつです。
俳句としては成立していますが、類想句はかなりあります。この内容に、オリジナリティかリアリティを一匙加える。それが、句作の醍醐味というやつです。


スマホ置き月追う静寂や四人床
ほーさく
夏井いつき先生より
「今入院している新宿の病院から眺める月が思いのほか美しく、久々に投句させていただきました」と作者のコメント。
入院もまた、吟行です。「スマホ置き」という情報まで入れると十七音が窮屈になります。「四人の病室の窓に月の動きを追う静寂」この内容こそが素敵な句材です。整えてみましょう。
「今入院している新宿の病院から眺める月が思いのほか美しく、久々に投句させていただきました」と作者のコメント。
入院もまた、吟行です。「スマホ置き」という情報まで入れると十七音が窮屈になります。「四人の病室の窓に月の動きを追う静寂」この内容こそが素敵な句材です。整えてみましょう。


鞦韆を漕ぐ靴底のあなた晴れ
伽葉子
夏井いつき先生より
「娘達と公園に行くと、沢山写真を撮ってしまうのでスマホの充電がすぐに減ってしまいます。ブランコが大好きな姉妹を正面から写した時に、靴底にピントがあってしまったのですが、その向こうに、青空と楽しそうに笑う顔が写っていました」と作者のコメント。
ブランコの靴底にピントがあってしまった。その事実が、とても面白い俳句のタネです。例えば、「ブランコ漕ぐ靴底」とすれば、残りの音数で「ピント」という情報を入れられるのではないでしょうか。
「娘達と公園に行くと、沢山写真を撮ってしまうのでスマホの充電がすぐに減ってしまいます。ブランコが大好きな姉妹を正面から写した時に、靴底にピントがあってしまったのですが、その向こうに、青空と楽しそうに笑う顔が写っていました」と作者のコメント。
ブランコの靴底にピントがあってしまった。その事実が、とても面白い俳句のタネです。例えば、「ブランコ漕ぐ靴底」とすれば、残りの音数で「ピント」という情報を入れられるのではないでしょうか。


ペットボトル食む末っ子と名月
壱時
夏井いつき先生より
「ペットボトル」に対して「食む」は、違和感があります。


ペンギンや飛べぬ空より冬の海
秀翁
夏井いつき先生より
「〈ペンギンや故郷何処雪の朝〉三段切れの推敲です。『ペンギンや』で詠んでみました」と作者のコメント。
三段切れは解消しましたね。ハードルを一つ越えました。あとは、表現のブラッシュアップでしょうか。「飛べぬ空より」の「より」は、比較でしょうか、動作の起点でしょうか。そのあたりが明確になれば、人選が近づきます。とはいえ、毎月の投句を続けていくうちに、俳句の筋肉は確実についてきます。今直ぐ推敲することを焦るよりは、一年後の自分ならば、この句をどう直すか。そう考えてみることも、有効なトレーニングです。
「〈ペンギンや故郷何処雪の朝〉三段切れの推敲です。『ペンギンや』で詠んでみました」と作者のコメント。
三段切れは解消しましたね。ハードルを一つ越えました。あとは、表現のブラッシュアップでしょうか。「飛べぬ空より」の「より」は、比較でしょうか、動作の起点でしょうか。そのあたりが明確になれば、人選が近づきます。とはいえ、毎月の投句を続けていくうちに、俳句の筋肉は確実についてきます。今直ぐ推敲することを焦るよりは、一年後の自分ならば、この句をどう直すか。そう考えてみることも、有効なトレーニングです。


すれ違う車のライト秋の宵
さち緖
夏井いつき先生より
同じ句が二句投句されていました。一回に二句しか投句できないので、勿体ないですね。送信ボタンを押す時に、再度確認して下さいね。


マンションのフリーレントや小春かな
和脩志
夏井いつき先生より
「や」「かな」が重なりました。切字が重なると、感動の焦点がブレるということで、嫌われます。どちらかを外しましょう。
「や」「かな」が重なりました。切字が重なると、感動の焦点がブレるということで、嫌われます。どちらかを外しましょう。


けたたましき鵯タッチパネルに立ち尽くす
古乃池 糸歩
夏井いつき先生より
「『鵯(ひよ)』と読んで下さい。今や無人、キャッシュレス、タッチパネルは当たり前。ついていけぬ高齢者は、機械の前でひとり立ち尽くすばかり。頭上の鵯の絶叫だけが聞こえます。下五『立ち尽くす』か『立ち尽くし』かに悩みました。こういった迷いはよくあります」と作者のコメント。
この場合でしたら、「立ち尽くす」と終止形で言い切ると、愕然とした印象が強くなりますし、「立ち尽くし」と意味が切れないままに終わらせると、困惑の表情を思わせるニュアンス。これらの選択は、どちらが良いという種類の判断ではなく、どちらの表現にしたいのかという作者自身の表現の問題になります。ついでにいうと、前半「けたたましき鵯」を「鵯けたたまし」とすると、効果がどう変わってくるか。考察してみましょう。
「『鵯(ひよ)』と読んで下さい。今や無人、キャッシュレス、タッチパネルは当たり前。ついていけぬ高齢者は、機械の前でひとり立ち尽くすばかり。頭上の鵯の絶叫だけが聞こえます。下五『立ち尽くす』か『立ち尽くし』かに悩みました。こういった迷いはよくあります」と作者のコメント。
この場合でしたら、「立ち尽くす」と終止形で言い切ると、愕然とした印象が強くなりますし、「立ち尽くし」と意味が切れないままに終わらせると、困惑の表情を思わせるニュアンス。これらの選択は、どちらが良いという種類の判断ではなく、どちらの表現にしたいのかという作者自身の表現の問題になります。ついでにいうと、前半「けたたましき鵯」を「鵯けたたまし」とすると、効果がどう変わってくるか。考察してみましょう。


充電器猫の近寄る寒さかな
紫子
夏井いつき先生より
「地上は寒くて、地下の曲がり角から、猫がすり寄って来そうな気配を感じたので、このような句になりました」と作者のコメント。
面白い視点です。が、この内容を書きたいのであれば、上五を字余りにしても「充電器に」とすれば、下五「かな」が受け止めてくれます。
「地上は寒くて、地下の曲がり角から、猫がすり寄って来そうな気配を感じたので、このような句になりました」と作者のコメント。
面白い視点です。が、この内容を書きたいのであれば、上五を字余りにしても「充電器に」とすれば、下五「かな」が受け止めてくれます。



