写真de俳句の結果発表

第62回「バッテリースタンド」《ハシ坊と学ぼう!⑩》

ハシ坊 NEW

バッテリースタンド

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

紅葉舞う満タン待つや道の駅

ラクダーマン

夏井いつき先生より
「紅葉舞う」で意味は切れるのだろうと思います。となれば、「~や」の詠嘆でも切れるので、三段切れになります。解消法は幾つかありますが、例えば語順を替えるのも一手。「舞う」という動詞を使わず、「紅葉の道の駅」とワンフレーズにすれば、簡単に解消します。

添削例
満タンを待つや紅葉の道の駅
“ポイント”

短日やバッテリースタンド空き無し

犬山侘助

夏井いつき先生より
「中七を八音にしてしまいました。秋の終わり、早く夜になり、いつもより空きのないスタンド。そんなふうに思えるのは、忙しく年末を迎えるためでしょうか」と作者のコメント。

やはり、字余りは上五で処理し、中七下五で調べを取り戻すのが定石です。トライしてみて下さい。
“ポイント”

充電や光に聞こゆ秋の虫

ちょうさん

夏井いつき先生より
「光に聞こゆ」の終止形で意味が切れるのならば、三段切れになってしまいます。「聞こゆ」は、ヤ行下二段活用なので、「秋の虫」に掛かるのならば「聞こゆる」と連体形にする必要があります。
“ポイント”

図書館の本へ潜みし赤い羽根

和はん

夏井いつき先生より
「図書館で借りた本に、前の人が挟んだ赤い羽根が残っていましたが、貸出の際にも気づかれずに潜んでいたんだなと思ったことを詠みました」と作者のコメント。

佳い句材ですね。気になるのは、「本へ」の「へ」という助詞。そして「潜み」という動詞がベストか否か。人選は目の前ですね。
“ポイント”

長子告ぐる予備バッテリー今朝の冬

春木

夏井いつき先生より
「父さん、姉さん、俺も昨夜遂に父親になったよ」と作者のコメント。

「長子告ぐる」はそういう意味なんですね。この書き方だと、「長子」が「予備バッテリー」は持ってるよと言った? あるいは、持ってますかと念押ししてくれた? みたいな意味かなと。赤ちゃんが産まれた、ということならば、それが伝わるような書き方にする必要があります。再考してみましょう。
“ポイント”

冬ざれやスタンド閉鎖時止まり

たけ

夏井いつき先生より
「先週利用したガソリンスタンドが、(何も知らなかったのですが)前を通ると閉鎖されていました。一瞬戸惑いました」と作者のコメント。

下五「時止まり」は、作者の感想です。俳句は、感想ではなく描写。その「スタンド閉鎖」されている様子を映像として描写してみましょう。今すぐ、その描写ができなくても、続けていくうちに俳句の筋肉がついてきます。描写できる日は必ずきます。
“ポイント”

飛び込みのソーラーパネル春疾風

すそのあや

夏井いつき先生より
「家の固定電話に、しょっちゅう何かしらの勧誘電話があります。不動産やらエコキュートやら。兼題写真の充電から蓄電→ソーラーパネルに飛びました。今時、訪問営業なんてないかもしれませんが、飛び込み営業を詠んでみました。上五『飛び込み』だと、水泳と誤解されるでしょうか?」と作者のコメント。

「飛び込みのソーラーパネル」という書き方は、少々乱暴です。「ソーラーパネル」が音数をとる単語なので、なかなか難しいのですが、営業の人物が見えてきにくい点に問題がありそうです。
“ポイント”

四度の滝ずどん電池切れ補聴器

あんこ

夏井いつき先生より
「四度の滝」とは、四度目に訪れたという意味? 「ずどん」は滝の音? 色々と分かりにくいです。
“ポイント”

息凍りバッテリー上がり悪足掻き

朝夕人

夏井いつき先生より
「寒さでバッテリーが上がり、どうにかならないかと駆けずり回った経験があります。そこで、『上がり』と『足掻き』で韻を踏んでみようと工夫してみました」と作者のコメント。

韻を踏んだといういう意図は理解しましたが、そもそも上五中七の状況があれば、下五「悪足掻き」は不要な説明です。その五音をどう使うか。そこが、俳句における勝負のしどころなのです。
“難しい”

柚子香こそ魔法の鏡に写メしたい

小川 茜園

夏井いつき先生より
「柚子香」と「鏡」の取り合わせには、惹かれます。が、全体が散文の語順で書かれていること、「写メしたい」は作者の感想になっていること。この二点に改善の余地があります。
“良き”