第62回「バッテリースタンド」《ハシ坊と学ぼう!⑫》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
道の駅バッテリースタンド探す秋
みほ
夏井いつき先生より
実際には「道の駅」だったのだろうとは思いますが、作品として考えると、「道の駅」と限定しないほうが、読みが広がります。その五音をどう使うか。それが、この句の成否を左右します。
実際には「道の駅」だったのだろうとは思いますが、作品として考えると、「道の駅」と限定しないほうが、読みが広がります。その五音をどう使うか。それが、この句の成否を左右します。


谷若葉電波届かぬ一一九
木漏
夏井いつき先生より
数詞は漢数字にするのが定石ですが、この内容でしたら、敢えて「119」とするほうが、臨場感がでますね。そうなれば、人選です。
数詞は漢数字にするのが定石ですが、この内容でしたら、敢えて「119」とするほうが、臨場感がでますね。そうなれば、人選です。


寒し駅伝言板消えスマホ手に
文心美
夏井いつき先生より
「昔は駅に伝言板があり、約束の時間などに遅れる、早すぎて先に行ってる、など書いていましたが、今やスマホで連絡して事をなす時代。伝言板がなくなったのも少し寂しいなと思う気持ちです」と作者のコメント。
「寒し」が終止形なので、ここで意味が切れてしまいます。「駅」が寒いということならば、「寒き駅」あるいは「駅寒し」となります。中七下五は報告の言葉になっているので、「伝言板」があった場所に今はそれがないという映像を描くことをオススメします。
「昔は駅に伝言板があり、約束の時間などに遅れる、早すぎて先に行ってる、など書いていましたが、今やスマホで連絡して事をなす時代。伝言板がなくなったのも少し寂しいなと思う気持ちです」と作者のコメント。
「寒し」が終止形なので、ここで意味が切れてしまいます。「駅」が寒いということならば、「寒き駅」あるいは「駅寒し」となります。中七下五は報告の言葉になっているので、「伝言板」があった場所に今はそれがないという映像を描くことをオススメします。


間に合わぬ送信ひと押し月冴ゆる
西瓜頭
夏井いつき先生より
「掲出句は三段切れになるのでしょうか? 〈月冴ゆる送信ひと押し間に合わぬ〉と迷いました」と作者のコメント。
「間に合わぬ送信」とも意味がとれるのですが、三段切れを心配されているということは……「間に合わぬ」で意味が切れているのでしょうか。例えば、投句時間の〆切に「間に合わぬ」という感じだとしたら、その部分がやや説明的かもしれません。質問される場合は、どんなことを書きたかったのか。その内容を記して下さると、有難いです。
「掲出句は三段切れになるのでしょうか? 〈月冴ゆる送信ひと押し間に合わぬ〉と迷いました」と作者のコメント。
「間に合わぬ送信」とも意味がとれるのですが、三段切れを心配されているということは……「間に合わぬ」で意味が切れているのでしょうか。例えば、投句時間の〆切に「間に合わぬ」という感じだとしたら、その部分がやや説明的かもしれません。質問される場合は、どんなことを書きたかったのか。その内容を記して下さると、有難いです。


電子機器バッテリー切れと秋の雲
もっさん
夏井いつき先生より
「電子機器」と一括りにしてしまうと、具体的な映像が見えてきません。ここは、何かをしっかり書きましょう。


屠られど一花咲かせ牡丹鍋
霜川このみ
夏井いつき先生より
上五中七は、説明になっています。むしろ、「牡丹鍋」のどんな様子が「一花咲かせ」と感じられたのか。そこを描写してみましょう。
上五中七は、説明になっています。むしろ、「牡丹鍋」のどんな様子が「一花咲かせ」と感じられたのか。そこを描写してみましょう。


AIてふ命つなぐ冬ごもり
沖庭乃剛也
夏井いつき先生より
六・六・五、足して十七音の破調にしているのですね。ただ、この句の内容に照らし合わせると、中七の字足らずが悪目立ちします。この場合は、上五を六音の字余りにして、中七で「命をつなぐ」と調べを取り戻すのが妥当です。


分別など出来ぬ遺品山眠る
まどれ
夏井いつき先生より
「母が亡くなった時の遺品整理を詠んだものです」と作者のコメント。
「分別など/出来ぬ遺品/山眠る」 上五が六音なので、中七も六音にして、全部足すと十七音にしたのだろうと思われますが、このような場合は、むしろ上五「分別など」と六音の字余りを許容して、中七下五で「出来ぬ遺品や山眠る」と調べを取り戻すのが定石です。中七に「や」を足せば、人選です。
「母が亡くなった時の遺品整理を詠んだものです」と作者のコメント。
「分別など/出来ぬ遺品/山眠る」 上五が六音なので、中七も六音にして、全部足すと十七音にしたのだろうと思われますが、このような場合は、むしろ上五「分別など」と六音の字余りを許容して、中七下五で「出来ぬ遺品や山眠る」と調べを取り戻すのが定石です。中七に「や」を足せば、人選です。


気がつけば裏のお庭に木守柿
渡邉花
夏井いつき先生より
俳句では、「気がつけば」のような前提を書く必要はありません。気がついたから、「木守柿」の句を書いたことは分かりますのでね。
俳句では、「気がつけば」のような前提を書く必要はありません。気がついたから、「木守柿」の句を書いたことは分かりますのでね。


季語なし
輪になりて信号待ちの木陰かな
ゆいか
夏井いつき先生より
まずは、「信号待ち」という言葉で、場面が特定できましたね。次に考えるべきは、季語です。「木陰」は季語ではないので、夏ならば「緑陰」「夏木立」(他の季節ならば、街路樹を思わせる季語)を明確に入れてみましょう。最後のブラッシュアップが、「輪になりて」という状況をどう描写するか。解決すべきは、この二点です。
まずは、「信号待ち」という言葉で、場面が特定できましたね。次に考えるべきは、季語です。「木陰」は季語ではないので、夏ならば「緑陰」「夏木立」(他の季節ならば、街路樹を思わせる季語)を明確に入れてみましょう。最後のブラッシュアップが、「輪になりて」という状況をどう描写するか。解決すべきは、この二点です。


教室にホットカーラーハロウィン
くぅ
夏井いつき先生より
「上五の『に』は、『に』しかないときに使うと言われます。拙句は『教室の』でも成り立つのですが、本来ないはずのホットカーラーが教室にあることを表現したく、あえて『に』としています。このような考え方でよいのでしょうか?」と作者のコメント。
この句の「に」については、作者の意図どおりに使われていますが、全体を読んだ時、調べがぎゃくしゃくしている点には改良の余地があります。
「上五の『に』は、『に』しかないときに使うと言われます。拙句は『教室の』でも成り立つのですが、本来ないはずのホットカーラーが教室にあることを表現したく、あえて『に』としています。このような考え方でよいのでしょうか?」と作者のコメント。
この句の「に」については、作者の意図どおりに使われていますが、全体を読んだ時、調べがぎゃくしゃくしている点には改良の余地があります。



