写真de俳句の結果発表

第64回「砂漠のホテル」《ハシ坊と学ぼう!⑦》

ハシ坊 NEW

砂漠のホテル

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

鞍に敷く毛布ごわごわ地球照

舟端たま

夏井いつき先生より
「毛皮を纏った王女が、銀の鞍に揺られ旅する物語をイメージしたのですが、その言葉を措辞にできませんでした。似合わないことはしなくてもいいかしら。ごわごわでも過酷な砂漠で身を守ってくれます、たぶん」と作者のコメント。

上五中七のリアリティはよいです。下五「地球照」という着地がベストかどうか、悩ましい。
“ポイント”

ざりざりと砂の溽暑のまとわりつき

くるぽー

夏井いつき先生より
「『砂の女』を思い出しました」と作者のコメント。

上五中七の表現で、十分に「まとわりつき」ております。
“参った”

初凪の合図駱駝の瞬きよ

ときちゅら

夏井いつき先生より
「今日は元旦。駱駝が長い睫毛でゆっくり瞬きしたら、風が止むとか。ファンタジー俳句が最近のマイブームです(笑)。悪しからず」と作者のコメント。

「駱駝の瞬き」が何かの「合図」であるという発想は面白いです。季語「初凪」ではないほうが、リアリティが獲得できそうです。ファンタジーがファンタジーとして感動を呼ぶのは、細部のリアリティがそこに描かれているからではないかと。
“参った”

砂漠来て名残りの空よ独り身よ

おかだ卯月

夏井いつき先生より
句材はよいのですが、構成には一考の余地があります。「来て」が必要かどうかも含めて、再考してみましょう。
“参った”

隊商の駱駝に宝月の濃し

はなぶさあきら

夏井いつき先生より
「隊商が影を引きながら砂漠を進みます。駱駝に積んだ宝が月の明るい月影にキラリと光ります」と作者のコメント。

「宝」という表現が少々大雑把。「駱駝」に何が載せられているのかを書けば、上五「隊商の」は不要になるかもしれません。
“ポイント”

初凪や一湾占むる有磯海

とも女

夏井いつき先生より
「十七才まで育った故郷の有磯海(ありそうみ)の冬は、暗く寂しいのを思い出します」と作者のコメント。

作者の思いに共感します。中七「一湾占むる」と無難にまとめるのではなく、その心象風景を描写して欲しい。それができれば、「暗く寂しい」海だったのだなあとの共感がさらに深くなります。
“ポイント”

ホテルから見る月の砂漠夢幻

トリケイ

夏井いつき先生より
どんな光景が眼球に映ったから、「夢幻」と感じたのか。そこを描写するのが俳句です。
“ポイント”

厄くるナーランダ三蔵三浪す

千里

夏井いつき先生より
「ガイド氏曰く、『インド・ナーランダ大学は5世紀から12世紀まで存在した世界最古の大学です。仏教学、天文学、数学などの教育研究が行われ、玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)も留学しました』。想像するにサンスクリット語が最大の壁になったと思われ、辞書もない時代、どのようにしてこの難関を乗り越えたのか、この頃の伝記を読みたくなりました。インド文化の奥深さを知る遺跡でありました」と作者のコメント。

「厄くる」は変換ミスでしょうか。更に、この手の句材は、三蔵法師の人生の一部をなぞった書き方をしてしまうと、表現としての独自性が確保しにくくなります。まるで、その場にいたかのような、細部の映像を描く。それが、この手の句材の克服方法です。
“難しい”

冬の旅オアシス求め二つコブ

みーこ39

夏井いつき先生より
「二つコブ」という書き方は、少々乱暴です。中七が必要なのかどうかも含めて、再考してみましょう。
“ポイント”

茶色なるシャワーか細き熱砂の地

志無尽おたか

夏井いつき先生より
「中国の楼蘭(ろうらん)での体験です。砂漠の中、息をすると砂が口に入るくらいの風でした。砂まみれの身体を洗おうとしても、シャワーからは砂のまじった水がちょろちょろ出るだけでした」と作者のコメント。

なるほど、「茶色なるシャワーか」はそういう状況なのですね。「砂のまじった水がちょろちょろ出るだけ」という映像が描写できるとベストなのですが。実体験ならではの句材を、いつか結球させるべく、俳筋力をつけてまいりましょう。
“難しい”

アフガンに水路めぐらし麦の波

朝野あん

夏井いつき先生より
句材や言葉選びはよいです。上五の助詞「に」、中七「めぐらし」と切れのない形になっている点などが損。語順も含めて一考してみましょう。
“ポイント”

着ぶくれて砂漠の「エンドレス·レイン」

がらぱごす

夏井いつき先生より
「真冬の日本に居て、サウジアラビアの遺跡でのYOSHIKIの演奏をテレビで聴いていました」と作者のコメント。

やや情報過多。「真冬の日本に居て」とは読み解き難い。
“参った”

熱砂へと駱駝の太き背を跨ぎ

白秋千

夏井いつき先生より
「駱駝の太い背を体験したことを、長城ではなく砂漠を行く感じで詠みました。投句二句とも駱駝の背の句になってしまいましたが、40年経った今も、体験が強烈だったので、詠みました」と作者のコメント。

駱駝に乗ったのですよね? 「背を跨ぎ」の部分の描写の精度をあげたいところです。
“参った”

御下りや駱駝舎の戸は開かぬまま

かなかな

夏井いつき先生より
意欲的な取り合わせではありますが、季語は動きそうです。
“参った”

月涼し砂漠の宿や旅の果て

たけや まいち

夏井いつき先生より
〈月涼し/砂漠の宿や/旅の果て〉と三段切れです。どちらかを一カ所繋げるのが定石ではありますが、この内容でしたら、言葉の取捨選択も含めて一考してみましょう。
“参った”

星流る駱駝まつ毛に発信器

窪田ゆふ

夏井いつき先生より
「駱駝を調べると、まつ毛がふさふさだと知りました。写真を見たらハンパな量ではない。これだけあれば何か隠せそう。よくスパイが隠してるやつだったらかっこいいなと思い、『発信器』で詠んでみました。砂漠で星が流れるたびにピピピと反応。星と駱駝は、実は交信できるのではないかと想像しました」と作者のコメント。

この発想を生かすとすれば、その内容に見合った思い切ったリズム・調べが必要かもしれません。語順も含めて一考してみましょう。
“参った”

椰子繁る砂漠のホテル実千両

西茉生

夏井いつき先生より
「椰子」と「実千両」、二つの植物を入れるのは、それだけでお互いを殺し合います。ここは一考ですね。
“参った”

炎天の砂漠の昼に麻辣湯

牛乳符鈴

夏井いつき先生より
「意外な組み合わせに挑戦したく、麻辣湯を入れました」と作者のコメント。

その意欲は分かります。が、中七の「に」は要一考。そもそも「~の昼に」も必要かどうか……再考してみましょう。
“参った”