写真de俳句の結果発表

第64回「砂漠のホテル」《ハシ坊と学ぼう!⑨》

ハシ坊 NEW

砂漠のホテル

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

一茶己やフタコブラクダ乗るだろか

恵翠

夏井いつき先生より
「一茶が砂漠を旅したら、フタコブラクダに乗っただろうかと思い、作りました」と作者のコメント。

忌日の「忌」ですよね。変換ミスかな。「一茶」と「フタコブラクダ」の取り合わせは面白いのですが、「乗るだろか」と展開するのは、音数的に勿体ないです。
“ポイント”

灼け砂の死海重みの無き命

舞矢愛

夏井いつき先生より
「死海に入った時の自分の体が、ポップコーンのように軽くなってしまったような感覚と、その日にエルサレムで起こったバス爆発の死者の命の重さを考えて詠んでみました」と作者のコメント。

一句の着地を、直接「命」と言ってしまわずに、「重みの無き命」を思わせる描写にすることができれば、人選以上が確約できそうです。
“参った”

星降るや砂丘を駱駝の足跡

にわのこでまり

夏井いつき先生より
内容に見合った調べを工夫してみましょう。
“参った”

背中の砂冷たし月の光温し

鈴木そら

夏井いつき先生より
「五七五にもなっておらず、十七音にもなっておりません。こういう句は問題外なのでしょうか」と作者のコメント。

作者の意図する「内容」に対して、「調べ」は連動するものです。「背中の砂冷たし」と十音でここまで言い放った時と、「背の砂は冷たし」九音にした時と、何が違うか。後者は「背の砂は」で上五の五音ができますので、調べに安定感が生まれます。後半も「月の光温し」という九音に対して、「月光の温し」と八音にした場合を比較すると、〈背中の砂冷たし月の光温し〉は十九音ですが、〈背の砂の冷たし月光の温し〉は足して十七音の破調になります。内容はほぼ同じですが、調べが違うと、一句の印象も違ってきます。作者ご自身の表現のために、どの調べを必要しているのか。そこを考えるのが、創作です。
“参った”

春霞砂丘の山は遠きけり

清桜人

夏井いつき先生より
「遠きけり」という使い方に問題があります。「遠し」の終止形、あるいは「砂丘」か「山」の体言止めで終わるか。語順を一考してみましょう。
“ポイント”

八千八声千夜一夜の駱駝に蚊

清水縞午

夏井いつき先生より
「遊びすぎかもしれないけれど、こんな言葉遊びも楽しいと思っています。上五中七で群れと旅の雰囲気が出ればと、映像をもたないものの『千夜一夜』を使いました」と作者のコメント。

言葉遊びがだめだとは思いませんし、「千夜一夜」という言葉を持ち込むことにも問題はありません。しかも、「駱駝」と「蚊」と、二つの生き物を一句の中に描くというミッションも、挑み甲斐のあるものです。ただ、「八千八声(はっせんやこえ)」は、時鳥がしきりに鳴く時の声をいう言葉です。三つ目の生き物が出てくるのは、「駱駝」にとっても「蚊」にとっても、損なのではないかと。
“ポイント”

オアシスに蕪村の句集ハンモック

中島タカシ

夏井いつき先生より
「蕪村の句集」と「ハンモック」の取り合わせは面白いです。上五は、兼題写真から離れたほうが、作品としての純度があがります。
“ポイント”

若水やキャラバン腰をおろしけり

村先ときの介

夏井いつき先生より
「や」「けり」と切れ字が重なりました。感動の焦点がブレるとして、嫌われます。どちらかを外してみましょう。
“難しい”

ずらり鯛焼常客は跡取りへ

満生あをね

夏井いつき先生より
第61回『鯛焼屋の行列』《ハシ坊と学ぼう!⑮》にて、拙句〈ずらり鯛焼跡取りは馴染み客〉へコメントをありがとうございました。テレビ番組での、惚れ込んだ味を守る為に、廃業寸前のお店を継いだ元常連さんの姿に驚き詠んだものですが、言葉の配置が難しく、苦戦しました。今回も多少意味はわかりやすくなったかな……とは思いますが、説明で精一杯な感じがします。せっかくのありがたいご指摘、今回もゆっくり考えていきたいと思います」と作者のコメント。

何がどうしてこうなった……という事の顛末を書くには、俳句は短すぎます。「ずらり」と並んでいる様子を諦めれば、〈常連が跡を取りたる鯛焼き屋〉ギリギリこんな感じにはできます。季語は動くといえば、動いてしまうけど……。
“ポイント”

初星や二瘤駱駝の貴賓席

入道まりこ

夏井いつき先生より
「中八になってしまうため色々考えたのですが、このまま投句することにしました。『の』を外すと三段切れになり、『瘤の谷間の』とすると、駱駝に乗っていることがわからないのでは、と考えたからです。必ず中七は守る必要がありますか?」と作者のコメント。

「二瘤」という情報を入れたければ、こうなりますね。「駱駝の背」ぐらいの情報でよければ、字余りを回避することはできます。ここからは、作者自身の選択ですね。
“難しい”

砂あらし過ぎて静まる水の宿

ラクダーマン

夏井いつき先生より
「水の宿」とは、水辺の宿? 湖や池を比喩した言葉?
“ポイント”

寒し夜や砂漠に光り探し行く

妙啓

夏井いつき先生より
「寒し」が「夜」に掛かるのであれば、「寒き」と連体形にする必要があります。
“参った”

砂漠化かミニスカートで雪国へ

一ノ瀬右彩

夏井いつき先生より
「田舎では見ることのないミニスカートの旅行者。砂漠化だろうか?」と作者のコメント。

「砂漠化か」という上五の意味を、私の語彙能力では理解しがたく……。
“参った”

冬浪や砂丘さびしく湿りけり

右端ぎゅうたん

夏井いつき先生より
「や」「けり」の重なりを意図的にやっているのか、うっかりなのか。その点を自問自答して下さい。この書き方ではないと、ご自身の表現したいニュアンスが書けないということでしたら、このままいきましょう。
“参った”

雪晴や砂漠のごとき谷の宿

素牛

夏井いつき先生より
「雪晴」と「谷の宿」のあいだにある「砂漠のごとき」という比喩をどう読み解けばよいのか、少々迷います。
“参った”

冬布団オアシスなのは健康です

こはる

夏井いつき先生より
「お布団でずっとぬくぬくしたいけど、そう思えるのは健康だからだよなあ」と作者のコメント。

「冬布団」=「オアシス」を、怠惰の象徴と受けとめる読者も一定数いるのではないかと。
“参った”

陽炎や膝折る駱駝またがりぬ

風花舞

夏井いつき先生より
駱駝に跨がるのであれば、「駱駝に」とするべきですが、中八になってしまいますね。さあ、どうする?
“参った”

船浮かぶ陽炎見やる駱駝の背

夏村波瑠

夏井いつき先生より
「船浮かぶ」は、陽炎の中に? 湖に? そのあたりを明確にしてみましょう。
“参った”