写真de俳句の結果発表

第64回「砂漠のホテル」《ハシ坊と学ぼう!⑩》

ハシ坊 NEW

砂漠のホテル

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

ラクダこぶみたいなお城つくる春

丸井たまこ

夏井いつき先生より
上五を「ラクダの瘤」とすれば、人選です。
“ポイント”

春暁や目覚めは淡き駱駝鈴

ちょうさん

夏井いつき先生より
句材がよいですね。下五「駱駝鈴」がちょっと寸詰まり。語順を一考してみましょう。
“参った”

寒泉や即物的な雲浮かべ

草夕感じ

夏井いつき先生より
書こうとしている内容には共感します。下五の動詞「浮かべ」は一考の余地があります。
“参った”

麦実り医師は碑となるアフガンに

ときちゃん

夏井いつき先生より
ペシャワール会の中村哲医師のことを詠んだのだろうと思います。が、中七下五は彼の人生をなぞる説明になってしまっています。まずは、季語を主役として描くところから、コツコツと俳筋力をつけていきましょう。いつか、中村医師への素晴らしい追悼句が書ける日もくるでしょう。
“参った”

テント出で仰ぐすばるや火炎崖

肴 枝豆

夏井いつき先生より
「『すばる』と『昴』で少し悩みましたが、『火炎崖』との対比を考え、あえてひらがな表記にしました」と作者のコメント。

「出で仰ぐ」という動詞の繋がりが、やや説明臭い。その後に「すばる」が出てくるので、「仰ぐ」がどこまで必要なのかは一考したいですね。その結果で、「すばる」の表記を再考してみましょう。
“ポイント”

ヒジャブ買う女にぎやか初御空

加里かり子

夏井いつき先生より
「市場で、色とりどりのヒジャブ(頭に被るスカーフ)を買うイスラム教徒の女たち。男女が隔たれる世界で(礼拝も別々)、女たちはしとやかに逞しく生きなければいけません」と作者のコメント。

上五中七の描写はよいのですが、季語がベストかどうか。
“ポイント”

春宵の咲きっぱなしの隅田川

奈良井

夏井いつき先生より
「今回のお題は全く何のアイデアも思い浮かばなかったので、、並選→人選になるように自己添削をしています。海外ネタに滅法弱い! とっても雰囲気のある素敵な写真なのに悔しいなぁ〜。 第56回『百日紅の名所』《並》⑤ 〈春宵の咲きっぱなしの楼閣へ〉」と作者のコメント。

「咲きっぱなし」は、桜なのかなと読む人の割合が高いでしょう。作者としては、比喩的な意味を持たせているのでしょうか?
“ポイント”

春や大阪元祖最新日本一

海色のの

夏井いつき先生より
「毎月〆切前の週末に投稿するのですが、先月は仕事が忙しすぎて1週間勘違い。さて投句と思ったら過ぎてました(涙)。月遅れですが、こんなの俳句になるでしょうか? と質問したかった句を1つ入れさせてください。新世界をGoogle mapのストリートビューで歩いてみたら、『元祖』『最新』『日本一』が全て入っている看板があって、大阪らしいなと思って作った句です。大阪、新世界の賑やかな感じが伝わっていたら嬉しいのですが」と作者のコメント。

「こんなの俳句になるでしょうか?」と問われるならば、俳句になってはおります。ただ、詩の純度はそれほど高くない……というべきか。大阪愛には満ちてますが(笑)。
“難しい”

フロントに仮面アートや寒旱

空素(カラス)

夏井いつき先生より
「録画しておいた映画『マスカレード・ホテル』を観て、想像しました。季語は渇ききった砂漠のホテルに最適と思い、取り合わせたつもりです。『仮面アート』は一般的でないホテルを表現したつもりです」と作者のコメント。

助詞「に」が気になります。更に、「仮面アート」と引っくくらずに、一つの仮面をもう少し描写できるとよいのですが。
“ポイント”

陽炎やロビーのキリム濃く淡く

源早苗

夏井いつき先生より
「キリム(トルコ・イランなど中近東の伝統的な平織りの織物)が好きです。砂漠のホテルのロビーに色々なキリムが敷かれたり、クッションカバーとして重なっている景を詠みました」と作者のコメント。

ロビーに敷かれているキリムに対して、屋外の「陽炎」を取り合わせる点に、ささやかな違和感を覚えました。
“難しい”

まだ長いシケモク見っけ夜の雪

軽時計

夏井いつき先生より
「まだ長いシケモク」とあれば、「見っけ」は不要です。この三音を使って、「夜の雪」の方を描写してみましょう。
“ポイント”

ゾベイダと奴隷のパドドゥ藤村忌

弥栄弐庫

夏井いつき先生より
季語がベストかどうか、悩ましいところです。
“参った”

駱駝見し麒麟となりぬ春の夢

与次郎

夏井いつき先生より
「水も飲まずに旅をする駱駝ですが、草原を駆けるキリンが羨ましいと思っているかもしれません。駱駝はそんな夢を見てるかも、という空想です」と作者のコメント。

作者の書きたい内容と、書かれている文字面のあいだに溝がありそうです。作者コメントの中に、推敲のヒントがありそうですよ。
“参った”

濡れたままロビーを駈ける愛の日だ

春木

夏井いつき先生より
「アフリカの二月。プールから部屋まで二人で走りました」と作者のコメント。

句材は面白いのですが、俳句だけでは雨で濡れているのか、別の理由で濡れているのか、なぜロビーなのか。その辺りが読み解き難いのが残念。「愛の日」という季語が果たしてベストかどうかも含めて、再考してみましょう。
“参った”

おでん待つ星の音なふ砂時計

早霧ふう

夏井いつき先生より
「〈おでん待つ星砂の鳴る砂時計〉としたかったです。『鳴る』という古語はなく、中七からこの措辞に。昔、出張で行った鳥取で十分計の砂丘の砂時計を購入。お世話になった方に進呈したら、料理に使ってくださっているとのことでした。実直な方。煮えるのを待つ時間に、別の素敵なことをされていると想像し、星砂の砂時計を思いつきました」と作者のコメント。

ほのぼのとしたエピソードです。ただ「おでん」が季語としてベストかどうか。そこが、気になります。
“参った”

オアシスの駱駝よ人よ風光る

鳥鳴里乃

夏井いつき先生より
「『駱駝』って季語ですか? AIは両方答えるし、自分の持っている歳時記には載ってはいないので、季語ではないと判断しましたが、確証が持てないので……」と作者のコメント。

「駱駝」は季語ではありません。判断つきかねたのは、「オアシス」に「駱駝」がいるような地域、国において「風光る」という季語がどんなふうに実感できるのだろうと……迷いました。
“参った”

熱砂の風コーヒーマシン使えずに

琥幹

夏井いつき先生より
「『砂漠のホテル』という題だけ聞いて、頭に浮かんだのは映画『バグダッド・カフェ』です。主題曲『コーリングユー』の不思議な透明感の歌から聞き取れるコーヒーマシーンという文句。訳を調べると、修理を待つコーヒーマシンとありました。実際に映画でも、さびれたモーターインのカフェのマシンは壊れていて、そこにやってくるドイツ人の女性と……ストーリーは展開して、最後はとても優しい気持ちになる映画です」と作者のコメント。

「熱砂の風」と「コーヒーマシン」の取り合わせは、惹かれます。ただ「使えずに」は説明臭い下五。映画や小説に触発されて俳句を作るのもまた、一つの句材ですが、映画や小説の場面や情景をそのまま切り取るだけでは、作品として自立できているとは言いにくいものがあります。
“参った”

疲れ知らず?熱砂行くラクダさん

文心美

夏井いつき先生より
「砂漠もラクダも映像でしか見たことがありませんが、ただでさえ暑い中、ラクダさんは人や荷物を載せて偉いなと思っていました」と作者のコメント。

「疲れ知らず」は説明の言葉になります。熱砂をゆく駱駝を描写することで、読者にそれを読み取らせる。それが、俳句の骨法です。
“参った”