俳句deしりとりの結果発表

第48回 俳句deしりとり〈序〉|「こう」②

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俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第48回の出題

兼題俳句

ぱくぱくとひかりに醒めゆけるきちかう 佐藤儒艮

兼題俳句の最後の二音「こう」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「こう」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

番が暇でしあわせクリスマス

藤井 春

番に入れ歯の届く春来る

のなめ

番の花壇小春の砦とす

こがもくお

番の机に一輪水仙花

相州枕流

番の似顔絵コスモス見ておりぬ

翡翠工房

番の閉鎖し蔦の絡まりぬ

白石ルイ

番の迷子泣き止む春近し

ルージュ

番の隣年の瀬縁切稲荷

嗚呼 みこえ

園に初東雲や大都会

鷹見沢 幸

園のあぶらちやんなり初写真

二城ひかる

園の枯葉の掃除ボランティア

ちくちく慶

園の桜へ母は車椅子

ガジュマル新山

園の冬よ大人の謎解きよ

駒月彩霞

差点の東京タワー雪の夜

森野みつき

差点を浪めく吹雪や渋谷夜半

木香イバラ

差点バケツの花へ初日の出

志氣乃里己

差点行きつ戻りつ春浅し

牛乳符鈴

差点赤の解けて春動く

しまちゃん

交番、公園、交差点、町の風景として存在するグループ。《藤井 春》さんの句もそうだけど、交番や消防署といった場所は逆に平和に描きたくなるものです。交番グループでは《こがもくお》さんの立体感が好きだなあ。交番の花壇として、プランターを何段か階段状に積んでたりするんだろうか。「小春の砦」って把握が面白い。

公園グループでは《駒月彩霞》さんの現代的な描き方に共感を覚えます。「公園の冬よ」はともすれば寂しい光景を思い描きそうですが、「大人の謎解きよ」が良い意味で裏切ってくれました。最近はいろんな作品を題材にした都市型謎解きゲームとか増えたよね。

交差点グループでは《森野みつき》さん、《木香イバラ》さんの立体的な構造を活かした句が好印象。ある程度の広さと高さを内包した「交差点」だからこそ、自然と読者の視線を上向きに誘導する効果が期待できます。一方で、《志氣乃里己》さんの描き方もひとつのやり方。事故の献花かとも思いましたが、「バケツ」だから違うかなあ。交差点にあるお花屋さんとか? 水面へ焦点を絞る中七下五、最後に季語がきらりと光る語順が効果的です。

“とてもいい“

架下アメ横脇で秋刀魚焼

八一九

架下くぐった先の朝桜

朝野あん

架下は寒しスカイツリーの影

芝歩愛美

架下人も燕も巣を作り

閑陽

架下誰が落としたお年玉

松村うしろ

層ビルは人間の巣の断面図

舞矢愛

層ビル叩き駆ける春一番

枸橘

層ビル立つ武蔵野の底冷

山河美登里

所作業御慶は風にちぎらるる

細葉海蘭

より都市っぽい句材たち。高架下に屋台や飲み屋があったり、高層ビルがどーん! と建ってたり。《舞矢愛》さん、「人間の巣の断面図」って把握は皮肉が効いてて個人的には好きなんだけど、季語がなくなっちゃいましたねえ。《細葉海蘭》さんは上五の字余りでの情報の圧縮力が高くてえらい。「風にちぎらるる」が作業してる人の実感として空恐ろしい迫力であります。自分に向けて投げかけられた御慶か、あるいは高所作業の下で交わされる他人の会話か。
“良き”
 

砂また巻上げドクターヘリ離陸

石田なるみ

砂降るパンダ去る日の長き列

真秋

砂降る後の始末は風まかせ

北斗星

砂降る早期帰郷の目見昏し

若山 夏巳

塵万丈『大地』を読了す

レオノーレ・オオヤブ

「黄砂」が春の季語。個人的には花粉と同じかそれ以上に黄砂で体調悪くなってしまうので毎年辟易としておりますわ……。《レオノーレ・オオヤブ》さんの四字熟語「黄塵万丈」は、黄色の土埃が風に乗って空高く立ち上る様を意味します。『大地』って読んだことないんですけど、調べるとパール・バックの著書と出てきました。19世紀後半から20世紀初頭の中国を舞台にした大河ドラマとのこと。中国が舞台なら「黄塵万丈」との取り合わせも納得ですねえ。
“良き”

殺の推理小説星月夜

オカメのキイ

コーデリア・グレイへ栞冬の蝶

碧西里

慢と偏見寒燈にスピン

看做しみず

小説ネタあれこれ。事件の香りがしますねえ。「コーデリア・グレイ」はP.D.ジェイムズによる探偵小説だそうです。1972年出版の『女には向かない職業』の主人公で、女性探偵の先駆けとして有名なのだとか。十七音のなかで細かく説明するのではなく「へ栞」とだけで本を題材にしてると伝える、情報の取捨選択が的確です。《看做しみず》さんも「スピン」が同様の効果を発揮します。本の背表紙の上についてる紐のことですね。栞紐ってやつ。「高慢と偏見」は18~19世紀の小説家ジェイン・オースティンによる恋愛小説。かつて夏目漱石が「写実の泰斗なり」って絶賛してる作品だと大学時代に習ったんだよなあ、懐かしい。ちなみに映像化された作品も多数あります。2005年のキーラ・ナイトレイ主演バージョン『プライドと偏見』は配信サービスなどでも観やすいのでおすすめ。ロマンス欠乏症に陥ってる人はぜひ!
“良き”

コーランの文字の行進雪の街

むらのたんぽぽ

イスラム教の聖典である「コーラン」。「文字の行進」の解釈には少し迷います。デモなどでコーランの一節が書かれた看板などを掲げて行進しているのか、あるいは並んだ文字の形がまるで行進しているように見える、という見立ての句なのか。日本人には見慣れない文字の形を句材にする例は他の言語でもあるので、後者の読みもできるかと思いましたが、季語の置き方を考えれば前者の読みが妥当でしょうか。現在の世界情勢も踏まえての一句なのかもしれませんねえ……。
“ポイント”

辞苑「こう」の項引き剥く蜜柑

日月見 大

辞苑ぬるぬる捲る初春かな

梅田三五

辞苑めくる夜長のぬめり感

草深みずほ

辞苑めくる吟行指も凍つ

蝦夷の珪化木

辞苑季語を愛でるや龍太忌

輝虎

辞苑はたいて寄せて大掃除

骨のほーの

辞苑今や昔の冬景色

砂月みれい

辞苑大人の辞書よ昭和の日

コミマル

我が家は辞書が好き。だって歳時記とか日本国語大辞典ってめくってると楽しいんだもん! 質の良い紙をめくる時独特のぬるっとした感じ、いいよね……いい……。そんな上質な存在だったからこそ《コミマル》さんの「大人の辞書よ」って感覚もよくわかりまする。

“とてもいい“

校のスカートの丈寒椿

わたこと

校の頃のよに雑炊すする

慈庵風

校の三つ併合星新た

玉響雷子

校時代の友古希祝い冬

メグ

校生ぺろりと2食秋深し

しせき

三の春三高の夢が散る

ナッツティー

舎には耐震工事春疾風

希凛咲女

章の印字の擦れや卒業式

潮湖島

長の挨拶果てぬ昼寝覚

沖庭乃剛也

長の長き説法春眠し

白スニ

長の話短し春の雪

けーい〇

長は王貞治似風薫る

俊恵ほぼ爺

長も教頭もハゲ冬帽子

まっちゃこ

庭の隅へ落ちてく冬銀河

のりこうし

庭の隅や仔猫がかくれんぼ

松虫姫の村人

庭の準備運動残る花

すそのあや

庭の色の手袋ひとつきり

葦屋蛙城

庭の跳ねる土音秋高し

あべ

庭やしぐるる声に紺の袖

清水ぽっぽ

内の持久走てふ冬の鬱

木村弩凡

務課のカウンター千代紙の雛

小川さゆみ

門の撤去は明日春の虹

窪田ゆふ

門へギリに駆け込み息白し

一井かおり

学校に関するあれこれ。校長の話とか、急いで駆け込んだりとか、学校あるあるに思わずにやり。学校という多くの人が共通体験を持ち、想像しやすい舞台であるからこそ、細部にこだわった描写が物を言います。《潮湖島》さんの「校章」という小さい物へ焦点を絞った丁寧な描写、《葦屋蛙城》さんの校庭で土色になってしまった手袋の孤独、《小川さゆみ》さんのさりげない校務課の心遣いなどなど。決して学校では主役になることのないモノを描くことでリアリティを持たせています。その点、《のりこうし》さんの <校庭の隅へ落ちてく冬銀河>や、《あべ》さんの〈校庭の跳ねる土音秋高し〉も表現しようとしてる詩の輪郭は感じ取れるんだけど、微妙に情報が足りず、作者の思い描いた通りの光景を読者が受信しきれないのがもったいないポイントといえるでしょう。
“良き”
 

衣も女御も花びら餅をもう一つ

かなかな

「更衣……」まで読んで「更衣室」を連想しましたが、うまく変化球投げてきましたねえ! 「更衣(こうい)」と「女御(にょうご)」、いずれも女官の呼称ですな。源氏物語などで目にするやつ。「花びら餅をもう一つ」が穏やかな新年のひとときを思わせて和みますわ。
“良き”

coldの発音記号チューリップ

うましか(志村肇)

kould]が伝わらなくて寒昴

めいめい

英語の発音ネタ。まるで示し合わせたかのように表記と発音記号でそれぞれ投句があるとは! 寒昴の下で何回も[kould]のつもりで言い直してるのを想像すると気の毒だけど可笑しい……。寒いんだからはよわかってくれや!! と叫びたくなりそう~(笑)。

《③に続く》
“良き”