第48回 俳句deしりとり〈序〉|「こう」③

始めに
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。


第48回の出題
兼題俳句
ぱくぱくとひかりに醒めゆけるきちかう 佐藤儒艮
兼題俳句の最後の二音「こう」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「こう」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
後悔の冬夜に爪弾くAマイナー
社いずみ
後悔の便箋街はクリスマス
東田 一鮎
後悔はいくつあるだろ年の暮れ
星瞳花
後悔は胸のカトレア竦む足
岡田きなこ
後悔は無き我が人生万愚節
片山千恵子
後継者なんかいねぇよ夜鳴蕎麦
藍創千悠子
後継者探して薄の二、三本
髙田祥聖
後の字から始まるグループはなんだか句の内容も後ろ向き。《片山千恵子》さんは「後悔は無き」といいつつ「万愚節」との取り合わせが結果的に皮肉な味わいに。《藍創千悠子》さんと《髙田祥聖》さんの「後継者」も今の世相らしい句材でございますわねぇ……。後継者はおらず、目の前には薄が二、三本揺れるばかり。侘しい。


工作の名人五歳春炬燵
うに子
工事音穿つサイゴン去年今年
植木彩由
工廠の骨組み露は終戦日
弥栄弐庫
《弥栄弐庫》さんの「工廠(こうしょう)」は、旧陸海軍に所属し、軍需品を製造・修理した工場のことです。戦後の荒廃具合を表すために「露」「終戦日」の季重なりをしたかったのだろうという気持ちを汲みます。工廠って言っていいかわからないけど、瀬戸内海に浮かぶ大久野島にはこんな感じの場所が残っていた記憶がありますね。かつては毒ガス工場があった島……というと恐ろしげですが、今は通称・うさぎの島で知られる観光地。マジ楽しいので動物好きにはおすすめです。


光輪が見えて凍てる夜暖さがす
竜酔
光輪の神々しきや皇后誕生日
昇椿
光線砲発射父の日の庭に
宇野翔月
光線はスペシウムでしょ昭和の日
太之方もり子


甲賀忍者の気配背に枯野道
ひろ笑い
甲賀流忍法童貞聖マリア無原罪の御孕りの祝日
みづちみわ


降誕会乾く間もなき仏かな
杉本年虹
降誕祭アンフォゲタブルの美声
日進のミトコンドリア
降誕祭肩車して掛ける星
七瀬ゆきこ
降誕祭讃美歌うたう土鳩はバス
くちなしの香
降誕祭壮麗ハンドベルの音
京あられ
降誕祭天王星を所望の子
百夏
公現祭の灯よ疾く流れゆく雲よ
泉楽人


格子戸を出てここからはサンタクロース
藤富うに
格子戸の奥の中庭春の苔
せんのめぐみ
格子戸の奥に毛氈雛祭り
卯之町空
格子戸より黒文字の香や秋日和
香亜沙
格子戸に触れて馥郁冬の梅
山羊座の千賀子
格子戸にいつかのしるし端午の日
天風さと
格子戸の軽き音かな赤蜻蛉
暮待あつんこ
「格子戸」といわれると和風建築のイメージ……なんだけど、《藤富うに》さんはなぜサンタクロース?? まあ、ある意味和風洋風の切り替えがハッキリしてるってことなんだろうか……。《せんのめぐみ》さん以下、ザ・日本! ていうかザ・京都! って感じの句が並んでいるのがいい雰囲気ですねえ。京都旅行したくなります。《暮待あつんこ》さんは風景だけでなく、動きと聴覚を織り込んできたのがさらにグッド。中七の「かな」がしっとりと音を収めてくれています。


香水に咽せて座席を譲りけり
中島 紺
香水の空瓶ずらり歳重ね
沙魚 とと
香水の国花とりどりオペラ座ロビー
謙久
香水の電車は飽和臨界点
横山雑煮
香水やピアスを外す一人の夜
竹田むべ
香水や違ふ地図もち街をゆく
丸山美樹
香水や寝息の祖母のむくむ脚
大和出ユウスケ
香水瓶傘寿の母の唯一の
坂本 乙女
香水を祈る代はりに撒いてをく
嶋村らぴ
香水を置物として過ぎた春
若狭草
香水振る好意7対悪意3
伊藤映雪
香水やをんなに覚めて夜が匂ふ
広島じょーかーず
降参です言います香水の真相
江口朔太郎


紅梅のひとつ飛び出し天を指す
蕃茄
紅梅の隣家へ転居ご挨拶
織部なつめ
紅梅の蕾探すや偕楽園
チョコ婆
紅梅や学校行かぬ選択肢
澤美ゆふか
紅梅や地酒を選ぶ道の駅
坂野ひでこ
紅梅や日和見の蕊全方位
敏太呂
紅梅や非運なれども古希迎ふ
東風 径
紅梅をたどり坂道一歩ずつ
咲葉
好文木みどりの鳥のまる眼鏡
山姥和


甲烏賊や死して瞼ひらきけり
霜川このみ
甲羅煮の罪はとろとろ解けゆく
ときちゅら
甲羅煮やひかりかき混ぜたる切子
家守らびすけ
小女子の天ぷら抹茶塩ぱらり
水須ぽっぽ
小女子やピチピチピチと樽に満
老蘇Y


鴻雁来賓す宮司の外す船型錠
唯野音景楽
《④に続く》



