第48回 俳句deしりとり〈序〉|「こう」④

始めに
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。


第48回の出題
兼題俳句
ぱくぱくとひかりに醒めゆけるきちかう 佐藤儒艮
兼題俳句の最後の二音「こう」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「こう」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
公正のゲラ気に入らず冬の雨
伊都
交戦的な兎三匹いる客間
ぷるうと
荒淫と変換されて目借時
千葉水路
文字入力の変換を間違えちゃった(?)という三句。《伊都》さんは「公正」は句意からして文字校正とかの「校正」なんじゃないかなあ。《ぷるうと》さんの「交戦的」も「好戦的」かと思われます。兎って結構喧嘩するみたいね。
《千葉水路》さん……は誤変換を逆手にとって句材にしております。うんうん、仕方ないよね。光陰とか工員とか行員とかいろいろあるもんね。(単語の解説からは目をそらしながら)


好戦的なヴォーカルレッスン冬薔薇
湯屋ゆうや


項羽の詩めいた瞳の受験生
染野まさこ


沆瀣の杯交はしたい君年忘れ
夜汽車
「沆瀣の杯(こうがいのはい)」とは、仙人の飲み物になるという露を盛ったさかずきのことだそうです。詩歌の世界では「君」の一文字で想い人を表すことができます。君と、仙人の飲み物で杯を交わしたいとは……、嫌いじゃないヨ、そういうの。季語によっては若者の一時の感情みたいな句になってしまうかもしれませんが、「年忘れ」の落ち着いた雰囲気がその読みの可能性を低減しています。長年連れ添った夫婦とかなのかもしれないねえ。


抗議することば貧弱なるコート
千夏乃ありあり


神戸より未だ瓦礫の気配冬
瀬文
「神戸」に「瓦礫」とくれば、思い出されるのは阪神・淡路大震災。阪神・淡路大震災から三十一年が過ぎました。当時小学生だった自分にも当時の記憶は色濃く残っております。連日ニュースで流れてくる映像が怖かったなあ……。大人になって、仕事で訪れた神戸は綺麗に復興した大都市に見えたけど、現地に住む人にとっては癒えきらない疵痕のようなものはあるのかもしれません。ラスト二音で投げだすように提示される「冬」という大きな季語が力を発揮しています。季語以外の十五音が大きければ大きいほど、比例するように「冬」も力強さを増していく、こんな相乗効果の出し方もあるんですねえ。


構図からいくか冬銀河は強い
胡麻栞


第50回の出題
蝙蝠のなる木明日は月曜日
塩田奈七子
サザエさん症候群なんて言葉もありますが、誰しも「明日は月曜日」って考えて気分の落ち込む経験の一度や二度はあるんじゃないでしょうか。「一度二度どころか毎週じゃい」って? それはそう。
《塩田奈七子》さんのえらいのは、後半フレーズの解釈を読者に任せ、作者自身の心持ちを過剰に言及しなかったこと。それでいて「蝙蝠」という季語の力を通して、読者に作者の心を読み解くヒントを与えてくれています。夏の長い夕刻、蝙蝠が何匹もぶらさがる木のシルエットはまさに蝙蝠を果実として実らせたかのようです。そのシルエットの不穏さ、生々しさ、夕暮れの赤黒い世界、少しずつ漂い始める夜の気配……。季語の現場を前半で提示するからこそ、後半が俗な言い回しに終わらず、リアルな感慨となって立ち上がります。ガンバレ、《塩田奈七子》さん。君に良いことありますように。
そして本コーナー、第50回をもって最終回となります。
最終回の出題はスペシャル仕様。
兼題句の最後の二音「うび」で始まり、「ん」で終わる句 といたします。
しりとりはやっぱり「ん」で終わらなくっちゃね。
みなさんの明日の句作が楽しいものでありますように! ごきげんよう!



