写真de俳句の結果発表

第65回「バスからの眺め」《ハシ坊と学ぼう!④》

ハシ坊 NEW

バスからの眺め

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

酔い止めに頼る初旅夜行バス

ガジュマル新山

夏井いつき先生より
「子供の頃は乗物酔いをしていたので、景色などとても見られませんでした。バスに乗る時は酔い止めの薬を持っていました。運転するようになってからはあまり酔いませんが、他人の運転の時は怪しい時があります。初めは〈酔い止めを御守にいざスキーバス〉としたのですが、酔い止めを御守に入れると思われるのでは、また、『スキーバス』もスキーツアーのバスとなり、季語の鮮度が薄くなるのかなと思い、『夜行バス』にしました」と作者のコメント。

「頼る」も「御守り」も、酔い止めの薬に対して言わずもがなの説明です。「スキーバス」は「スキーツアーのバス」を省略した形なのだろうと分かりますし、そのバスの中も「スキー」という季語の一部だと理解できます。例えばこんなふうにすると、俳句として形になってきます。

添削例
酔い止めの錠剤白しスキーバス
“ポイント”

奥祖谷に乗客吾のみ山眠る

ふじっこ

夏井いつき先生より
上五「に」は要一考の助詞の使い方です。更に、この内容でしたら、語順も含めて考え直すのがベストかも。
“ポイント”

稲妻や結露の静か深夜バス

狐狸乃

夏井いつき先生より
「新宿から博多までの深夜バスに乗車したことがあります。日本最長で14時間超えの移動時間でした。車内は湿気がすごくて、窓が結露でいっぱいでした」と作者のコメント。

中七を「結露しづかに」とすれば、人選です。
“参った”

寒の入り朝日に染まる富士の山

あかつき

夏井いつき先生より
「朝日」や夕日に対して「染まる」は、かなり使い古されている表現だと思って下さい。「朝日に富士」と書くだけで、染まっている状況は分かります。
“参った”

ガタンゴトン薄目に揺蕩う春の海

とら

夏井いつき先生より
後半は語順が逆かな。「春の海たゆたう」
“参った”

東京湾クルーズ靡く春ショール

彩季子

夏井いつき先生より
「靡(なび)く」と書かずに、靡く映像を伝えられるとベストなのですが。
“ポイント”

春山の次発のバスは休み明け

佐柳 里咲

夏井いつき先生より
「GW初日に里山を歩き、ようやくゴールのバス停に到着! 時刻表を確認すると、土日祝は運休と書いてあり顔面蒼白に。別の路線のバス停まで泣く子を励まし、日没と競争しながら歩いた思い出です」と作者のコメント。

コメントを読んで状況が理解できました。「次発のバス」は「休み明け」にならないと……という意味が、この書き方では伝わりにくいかと。
“良き”

鉄塔を縫つて初音のハイウェイ

木村弩凡

夏井いつき先生より
「縫つて」という表現は、一考の価値があります。
“ポイント”

左義長の火の粉明るき従姉妹逝く

明日ぱらこ

夏井いつき先生より
「1月、従姉妹(60)の突然の訃報に驚きました。本当に明るく丈夫な人だっただけに急死と聞いて耳を疑いました。小さい頃はよく遊んでもらった姉のような存在。葬儀の途中、妹のKちゃんがあまりにも泣き崩れているのを見て、思わず抱きしめました。一瞬で子どもの頃に戻ったようでなんとも切なかったです」と作者のコメント。

「明るき」は「従姉妹」にかかるのだということが、作者コメントを読んで分かりました。が、「明るき従姉妹」と説明するよりは、「明るし」と言い切ったほうが、句の姿としては確かなものになります。季語を「明るし」と言い切ることで、そこに悲しみが募ってくるのではないかと。
“難しい”

フレームに入り切らない春隣

魔女

夏井いつき先生より
「富士山は美しすぎる、大きすぎる」と作者のコメント。

富士ならば、一語は入れたいですね。
“ポイント”

実家への車窓にふわり初雪や

尾長玲佳

夏井いつき先生より
下五の「や」は難しい型です。語順を一考してみましょう。
“ポイント”

咳をして樹海に降りる一人客

河埜スミヰ

夏井いつき先生より
最後のブラッシュアップは、語順です。
“ポイント”

父逝くも山は笑ひて我を迎へる

石田なるみ

夏井いつき先生より
「も」は散文的になりがちな要注意の助詞。ここは「や」と詠嘆すべきでしょう。詠嘆することで、「も」と書きたい作者の気持ちは、読者も受け止めてくれます。

添削例
父逝くや山は笑ひて吾を迎へ
“ポイント”

茜富士芒の波を七騎浮く

隼 光一

夏井いつき先生より
「この句は、山中湖付近の芒野を7台のバイクでツーリング中、バイク(鉄馬)と斥候の武士がリンクし、走行風で芒が揺れ、前車が見え隠れする情景を詠みました。何かとうるさがられるバイクですが、車窓からこんな風に見ていただけたら嬉しいです」と作者のコメント。

何を表現したいのかは理解しました。夕焼けの富士、芒原、そこを行く七騎。「七騎」ですから、読者は当然馬を思いますね。バイク(鉄馬)の光景をここに重ねるのは難しいので、歴史の世界を描くのか、現在のバイクを描くのか、ここはどちらかに決める必要があります。となった時に、「芒の波」だから「浮く」と書きたいお気持は分かりますが、七騎が溺れているのか……と受けとめる読者も何割かいるはず。この動詞の選択は、一考の価値がありそうです。
“ポイント”

梅雨空や五組だけ若いバスガイド

マサラチャイ

夏井いつき先生より
語順と季語を再考したら、面白い句になりそうです。
“ポイント”