写真de俳句の結果発表

第65回「バスからの眺め」《ハシ坊と学ぼう!⑤》

ハシ坊 NEW

バスからの眺め

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

除雪車の音や夜行の窓未だ暗し

枸橘

夏井いつき先生より
「夜行バスで帰省する時の到着は夜明け前、同じ時間には除雪車くらいしか走っていない時間帯に、到着までもう少しあるけれど目が覚めてしまった様子を思い浮かべました。夜行バスで帰る時は、疲れて少し孤独な気持ちになります。自分がぽつんと取り残されているような感じも詠みこみたかったのですが、語選びでこれ以上のものが思いつきませんでした」と作者のコメント。

「未だ」と書きたいお気持ちは分かりますが、この一語を外すだけで、調べが整いますし、「除雪車」とあるので明方が近いのかなと想像もできます。「未だ」を外せば人選です。
“ポイント”

お元旦五センチほどの高さ・富士

ななかまど

夏井いつき先生より
「施設の最上階からビルの間にちょっぴり見えた富士山です」と作者のコメント。

「五センチほど」という気づきがよいですね。「五センチ」とあれば「高さ」は不要です。

添削例
お元日五センチほどの富士の山
“ポイント”

初雪や山々をそめる夕日かな

藤本敏隆(格致)

夏井いつき先生より
「や」「かな」と、切字が重なりました。対処方法は、『俳句添削事典』を参照してください。
“参った”

やがてちるきいろいはつぱひらひらと

ちかこ

夏井いつき先生より
「やがてちるきいろいはつぱ」を生かすならば、下五は「ひらひらと」は情報が重なるので得策ではありません。下五を一考してみましょう。
“参った”

雪萬家チェーン震ひて追ふ尾灯

都築減斎

夏井いつき先生より
「以前から、蕪村の『夜色楼台図』の世界観をいつか詠みたいと思っていました。たまたま、この一月の大雪の中、長野方面へ行ってきたのですが、高速道路含む途々の運転は、それはそれは“雪”でした。と、兼題写真のハイウェイを見て、コレだ! と思い詠みました。季語ではない『雪萬家』というイメージの強い漢詩と取り合わせて俳句は成立するのか? 悩みましたが、思い切って投句します」と作者のコメント。

漢詩を取り込むのがダメだというわけではありません。ただ、この句が描こうとしている「それはそれは“雪”でした」という実感が、絵空事にみえてしまうのは得策ではありません。せっかくの貴重な経験ですから、実感のある「雪」の季語を探してみましょう。
“参った”

琥珀なす石灰の街花盛り

斎藤マカロン

夏井いつき先生より
「マルタ島をバスで旅しました。石畳も建物も石灰岩でできていて、細い道には鉢植えの花が彩りを添えていました」と作者のコメント。

俳句で「花」というと桜を指す季語です。外国の光景で「鉢植えの花」ということですから、季語は一考の余地がありそうです。
“ポイント”

蜂の巣を跨ぎ弥生の土器探し

村崎水晶

夏井いつき先生より
「生い茂る木々を見て、子供の頃そんな場所へ父と土器を掘りに行ったことを思い出しました。土器のかけらを数個見つけた後、蜂に刺されてしまったことまで懐かしいです。『弥生』はもちろん土器の種類を言いたかったのですが、読み手には三月を想起させてしまうかなと心配です。でも、弥生式土器を探しに行ったことが強烈な思い出ですので、どうしても外せませんでした」と作者のコメント。

「弥生式土器」ならば、そのように書いたほうが誤解を生みませんね。「蜂の巣」を跨ぐという体験に独自性と真実味があります。

添削例
蜂の巣を跨いで弥生土器探す
“ポイント”

ぶーんとなまなこにに緑スカイライン

いっさい しらん

夏井いつき先生より
「スカイラインは山へと続く稜線、空との境界線というようなイメージです」と作者のコメント。

「ぶーんとな」で切れる? この「まなこにに」の「に」をどう読む? いろいろと読み解きにくく……。
“難しい”

バスガイド実技試験で山笑う

あきこ

夏井いつき先生より
助詞を少し変えると、人選になります。

添削例
バスガイドの実技試験や山笑う
“ポイント”

雲海に沸くや五合目行車中

如月ぎぎる

夏井いつき先生より
「雲海を初めて見たのは、飛行機ではなく富士山五合目行きのバスの窓からでした。その美しさに車内は沸き立ち、雲より高い場所にいることに感動したのを覚えています」と作者のコメント。

後半の措辞を「五合目なる車中」とでもすれば、人選です。
“ポイント”

富士山を笑わせてゐる明き空

日永田陽光

夏井いつき先生より
「山笑う」という季語をアレンジしているのだと思います。だとすれば、後半にもう一工夫欲しい。
“ポイント”

三十年のドーム静かに山開き

風早 杏

夏井いつき先生より
「『三十年(みそとせ)』と読みます。雲仙・普賢岳(ふげんだけ)の溶岩ドームは三十余年静かにしています。やっと条件付きで登山道も解放されるそうです。その喜びを詠みました」と作者のコメント。

この書き方だと、「ドーム」=溶岩ドームだとわかるのに、時間がかかります。築三十年のドーム?……から抜け出せなくなって、句意がわかりにくくなってしまうのです。季語も含めて再考してみましょう。
“ポイント”

山眠るかの日の広き父の背中

山川腎茶

夏井いつき先生より
下五は「父の背よ」と軽く詠嘆すれば、人選です。
“ポイント”

夫見舞ふ車窓に帰り花二輪

小倉あんこ

夏井いつき先生より
助詞「に」のみ、一考してみましょう。
“ポイント”

めくるめく結び葉沿ふて七曲り

沢田千賀子

夏井いつき先生より
「沿ふ」が「て」に接続する場合は、「沿ひて」となります。音便を発生させるケースもあります。
“参った”