写真de俳句の結果発表

第65回「バスからの眺め」《ハシ坊と学ぼう!⑥》

ハシ坊 NEW

バスからの眺め

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

富士を撫づる春日は解かるる父情

る・こんと

夏井いつき先生より
表現したいことはぼんやりとわかるのですが、これがベストな書き方とは言い難い。「富士」を撫でるのは「春日」ですよね。そこからの後半部分の句意が読み解きにくい。ひょっとすると、「撫づる」はなくても伝わるかもしれないし……。そのあたりも含めて、再考してみましょう。
“ポイント”

熊穴を出づ耳立体の園児バス

さ乙女龍チヨ

夏井いつき先生より
「バスからの眺めではなく、バスを見ている様子です。車体にイラストがあるだけでなく、前方に耳が取り付けられている園児バスを見ました。この季語ならば、園児バスの耳とは動物だろうと思ってもらえるのでは、と思いました」と作者のコメント。

うーむ……この季語だからこそ、「熊穴を出づ耳」(?)と思ってしまう読者も一定数でてくるはずです。例えば、「熊の耳ある園児バス」とでも書けば、まだ理解してもらい易くなるのではないかと。当然、別の季語を取り合わせる必要はでてきますが。
“ポイント”

山超ゆる波止場の春の大漁旗

広島 しずか80歳

夏井いつき先生より
「波止場の春の大漁旗」は勢いも色彩もあって、良いフレーズですね。上五「山超ゆる」の「山」とは何かの比喩ですか? 実際の山ですか? そのあたりがちょっとわかりにくい。
“参った”

夏休みポテチふくらむわけを書く

加納ざくろ

夏井いつき先生より
「小2の子供が夏休みに富士山に登りました。御多分に洩れず菓子袋が膨らんだことに感動。帰ってから、そのことを調べて日記(小2で習う漢字で)に書いたことを思い出しました」と作者のコメント。

この事実を体験すると、俳句にしたくなりますよね。ただ、この書き方だと富士登山の情報がないので、単に「ポテチ」が膨らんだとしか読み取れません。
“参った”

九十九折り林道抜ける春の山

丸山 晴耕

夏井いつき先生より
全ての情報が地理的なものになっているのは、ちょっと損です。
“参った”

夜行バス降りて肺腑へ満つ余寒

めぐみの樹

夏井いつき先生より
「満つ」で意味が切れる? 「へ」は適切な助詞か? そのあたりを自問自答してみましょう。
“ポイント”

阿らぬ子の道厳し雪の道

ルーミイ

夏井いつき先生より
「長女は老いた親に言いにくいことを言い、面倒な仕事を引き受けるのに、妹は楽しいところだけ持っていって、親の歓心を買ってずるいなあ、という思いを抱えることが最近ありました(嫌な話をしてすみません)。それで一種の悪態俳句です。しかし『厳し』とストレートに言うだけでは、俳句に昇華できていないと言うべきでしょうか」と作者のコメント。

私も長女ですので、とても良くわかる話です。こういう悪態は積極的に俳句にするべきです(笑)。自句に対して、「『厳し』とストレートに言うだけでは、俳句に昇華できていないと言うべきでしょうか」という指摘は実に的確。ここを少し推敲すると、悪態俳句として結球します。例えば……

添削例
阿らぬ子として雪の道をゆく
“ポイント”

扶養峰うらら千年後のあなたへ

笑田まき

夏井いつき先生より
「扶養峰」は「芙蓉峰」の変換ミスでしょうか? 「芙蓉峰」は富士山のこと。それならば、人選なのですが……。
“ポイント”

松毟鳥鳴く声近く青き富士

小川さゆみ

夏井いつき先生より
「近し」と中七で切らずに、「近く」としたのは、近いのは「松毟鳥(まつむしり)鳴く声」であり「青き富士」でもある……と読ませたかったからでしょうか。単純に、「近し」と切りたくなかったのかもしれません。が、一句としてはその辺りが、どっちつかずで落ち着かない感じが残ります。さあ、どうしよう?
“ポイント”

明るき夜異国にて開く絵扇

あまぐり

夏井いつき先生より
「異国にて開く絵扇」を上五中七にして、下五を一考してみましょう。
“ポイント”

春の山と次止まりますの点灯

日進のミトコンドリア

夏井いつき先生より
助詞「と」が必要なのか? 語順をこんなふうに変えるのは、意図に反しますか。

添削例
次止まりますの点灯春の山
“ポイント”

樹のいびき地のいびき薄のひかり

四條たんし

夏井いつき先生より
「もっといい終わりかたを模索してます」と作者のコメント。

「薄(すすき)」なのですね。「樹のいびき地のいびき」によって、何もかもが眠っている冬の光景を思ったので、「薄氷のひびき」かも(?)と思ったりしたのですが。秋の光景を描こうとしているのならば、「いびき」という表現は一考の余地があるかもしれません。
“ポイント”

ズームもせず流れる銀座花吹雪

つんちゃん

夏井いつき先生より
「流れる銀座花吹雪」というフレーズには惹かれます。「ズームもせず」は説明の言葉ですが……これは写真を撮っている?
“ポイント”

車窓より飛び去る山は春夕焼

原 唯之介

夏井いつき先生より
「山は」を、「山や」とすれば人選です。
“ポイント”

墨を磨る背筋伸びたる二日かな

央泉

夏井いつき先生より
「俳画を習っていて、毎年二日は事始めとして描いています。最初は〈冨士描かんと墨磨りたる二日かな〉としていました。が、二日の日は、改まった気分で墨を磨るのもいつもより神聖な感じがしましたので、推敲してこの句になりました」と作者のコメント。

「伸びたる」と説明しなくても、「二日」という季語を信じれば、読者には伝わります。初案の「冨士描かんと」の要素を入れると、さらに効果的です。

添削例
墨を磨る背筋二日の富士描かん
“ポイント”

雪晴や富士真正面から右へ

時乃 優雅

夏井いつき先生より
「『雪晴の』にしようか迷いましたが、『や』の方が雄大さがあるかなと思い『や』にしました。が、まだ迷っています。『の』にするとスピード感が出るような気がします」と作者のコメント。

スピード感を意識しているのならば、動きを先に提示して、それが「富士」であることを後で見せるやり方もあります。

添削例
真正面から右へ雪晴の富士
“ポイント”

影富士や無量の影の道半ば

俳句笑会

夏井いつき先生より
「夕日に映える雄大な影富士を目の当たりにし、その巨大な影が伸びていくさまに感嘆している情景と、その影の中に存在しているはずの、様々な想いを抱えて頂きを目指す多くの人達の影、圧倒的な自然の力と時の流れのもとでは、誰もが人生の旅路の道半ばにあると認めざるを得ない、という人生観を込めて詠みました。夏富士、赤富士と同様に、登山可能な夏の時期の富士山が影富士となる季節感で詠みました」と作者のコメント。

「影富士」という季語はなさそうです。意味としては、以下二つがありました。
① 湖水の水面などに映って見える富士山の姿。さかさ富士。
② 雲海の上に富士山の影が写し出されて見える現象。
作者コメントに「登山可能な夏の時期の富士山が影富士となる季節感」とあるので、②の意味でつかわれているのかと推測します。「影富士」の光景に人生を重ねるという意図は理解できますが、作品として考えると「雲海」という言葉を入れるほうが、読者に伝わりやすいものになるのではないかと思います。
“参った”