写真de俳句の結果発表

第65回「バスからの眺め」《ハシ坊と学ぼう!⑦》

ハシ坊 NEW

バスからの眺め

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

夕暮れて富士に笠雲吉兆か

かおりんご

夏井いつき先生より
「夕暮れて」と書かなくても、「夕富士」とすれば音数の節約になります。語順も含めて再考してみましょう。
“ポイント”

椰子の葉の光れる空に雪の富士

まさと澄海

夏井いつき先生より
「旅行のおりの伊豆の朝の景色を詠んだものです。風景を俳句にするのは意外に難しく、情景をそのまま映すのではなく自分なりの描写を表現しなくてはと思うのですが、ありきたりの表現になりがちで苦手です」と作者のコメント。

「椰子」と「雪の富士」という取り合わせは、意外性もあります。この二つが一句に存在するということは、遠近感を表現すれば違和感なく鑑賞することができそうですね。やり方はいろいろありますが、原句の言葉をできるだけ使うとすれば、こんな感じにもできます。

添削例
椰子の葉のかなたに雪の富士光る
“ポイント”

車酔い覚めてようやく笑う山

とり

夏井いつき先生より
「季語『山笑う』を『笑う山』にしても良いのでしょうか?」と作者のコメント。

ひょっとすると歳時記の例句の中に、「笑う山」という使い方をしているものがあったのかもしれませんが、基本的には「山笑う」という使い方を推奨します。
“参った”

啓蟄や遅延のバスで上京す

神木美砂

夏井いつき先生より
中七「で」は散文的な使い方になっています。対処法はいろいろありますが、原句にもっとも忠実にやるのならば、こんな方法もあります。

添削例
啓蟄の遅延のバスや上京す
“ポイント”

バスタ発つ車窓に映る枯野かな

清波

夏井いつき先生より
「新宿発の高速バスで箱根に旅行した時の、仙石原周辺や薄の群生地がすばらしかったことが思い出されます」と作者のコメント。

「バスタ」=新宿のバスターミナルと発った「車窓」だなと思って読んでいると、後半で「車窓に映る枯野」と展開するので、読者はその時間軸の短さに、置いてけぼりにされてしまいます。「車窓に」とあれば「映る」も不要ですから、全体の構成を考え直してみましょう。
“参った”

パスワード合わずフロントガラス凍つ

典典

夏井いつき先生より
なんの「パスワード」なのでしょう? 作者は車内にいる? 車外にいる?
“ポイント”

五号目の社へ会釈冬登山

千鳥城

夏井いつき先生より
「五号目」は「五合目」の変換ミスでしょうか。「五合目」ならば人選です。
“ポイント”

トンネルに吸はれ冬三日月は華奢

帝菜

夏井いつき先生より
「トンネルに吸はれ」から始まるので、作者自身がトンネルの中を通過しているのに、なぜ「冬三日月」と思ってしまう読者が多いのではないかと。さてどうする?
“ポイント”

朝食に春の琵琶湖と近江富士

縦縞の烏瓜

夏井いつき先生より
「日の出が遅い今ならではの、朝食タイムの楽しみです。太陽が昇り始めるころ、輝く琵琶湖が見えます。『や』『と』『に』など、選ぶ一文字の難しさを感じました」と作者のコメント。

そうですね、この句の最後のブラッシュアップは、上五の助詞の選択です。「に」よりは、「や」あるいは「は」の二択をお勧めします。
“ポイント”

目窓を車窓につけて春の富士

武井保一

夏井いつき先生より
「『目窓(もくそう)』と読みます。東海道新幹線に乗るときは富士山が見えるE席を指定し、富士山が見えるころになると、窓に側頭部をつけるようにして前方の富士山を探します。『目窓』は窓につける頭の位置にあるツボで、名前が面白いので句に取り入れました」と作者のコメント。

なるほど。「目窓(もくそう)」を知らない人も、ある程度の見当がつくような仕掛けを入れると、理解されやすくなるかも。「車窓に」とあれば「つけて」と説明しなくても、映像は伝わりますので、余った音数で何ができるか考えてみましょう。
“ポイント”

初富士や窓に丸かす乗車券

無弦奏

夏井いつき先生より
「丸かす」? の意味が汲み取りがたく……。
“ポイント”

屋上に転職決めて白き息

さえこ

夏井いつき先生より
「ずっと迷っていた転職を、ふと決めた時の屋上の白い月と白い息を思い出しました」と作者のコメント。

人生の大きなエピソードですね。どちらに焦点をあてるのが効果的か、少し悩んでみましょう。〈転職を決め屋上の月白し〉〈転職を決め屋上の息白し〉
“ポイント”

春の山内耳の遊ぶバスのしんがり

山河穂香

夏井いつき先生より
「バスの最後列に座って春山の景色に親しんでいる。蛇行の多い山道。ままならぬ三半規管」と作者のコメント。

句材は良いですね。「バスのしんがり」という書き方だと、何台か連なっているバスの最後の一台と読まれる可能性のほうが高いです。
“ポイント”

出口見上げるや汗引く羽黒山

桜上比呂

夏井いつき先生より
第8回〈汗引いて見上げる出口羽黒山〉を推敲しました」と作者のコメント。

この「出口」は何の出口ですか?
“ポイント”

ベッド抜け外出許可の春セーター

髙橋みりぃ

夏井いつき先生より
「外出許可の春セーター」というフレーズは良いですね。「ベッド抜け」と説明しなくても、想像できますので、上五を「○○○○や」と季語ではない言葉を詠嘆してみましょう。人選は目の前ですよ。
“ポイント”

バスガイド声あどけなく山笑ふ

青翠

夏井いつき先生より
上五字余りになりますが、「バスガイドの」と繋いで、中七を「~あどけなし」と終止形にすれば、一句が整います。
“ポイント”

富士山消えた鯛焼きを分ける間に

秋佳月

夏井いつき先生より
「富士山は」として、後半の助詞「を」を取ると人選です。
“参った”