写真de俳句の結果発表

第65回「バスからの眺め」《ハシ坊と学ぼう!⑨》

ハシ坊 NEW

バスからの眺め

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

五合目の菓子袋張り雲の海

藤本花をり

夏井いつき先生より
「修学旅行で富士山へ行った時の実体験を詠みました。未開封のスナック菓子の袋が、気圧の影響でパンパンになっている場面です」と作者のコメント。

これを描きたい気持ちには同感! ただ、十七音どこまで説明的にならずに映像が描けて、しかも季語が立つか? これはかなりのチャレンジングな句材。
“ポイント”

はとバスのオープントップから銀杏

いたっくうらら

夏井いつき先生より
「銀杏」が季語になるのは、「ぎんなん」と読んだ場合です。「いちょう」と読ませたい場合は「銀杏散る」とする必要があります。
“ポイント”

空高しとどかぬ峰や春霞

竜酔

夏井いつき先生より
「高し」の終止形で切れ、「~や」の詠嘆でも切れる三段切れです。解決方法は『俳句添削事典』を参照してください。
“参った”

夏富士の緋し五合目の石黒し

赤尾双葉

夏井いつき先生より
「兼題写真の富士山がほんのり赤みをおびていて、色を調べたら緋色がイメージにピッタリでした。五合目に車で行った時に、石が真っ黒でビックリしたのを思い出しました。時間軸としては山を登り終えてバスに乗っている時の様子です。窓からは富士山が見えるけど、拾ってきた(世界遺産となった今は拾ってきて良いのか分かりませんが)石を見て、感慨深くなっている様子を詠みました」と作者のコメント。

「緋し」「黒し」と韻を踏みたかったという意図はよくわかります。ただ、「緋し(あかし)」とすると、一音余るので、ここは前半を「夏富士の緋(ひ)や」とするほうが、全体の調べが締まります。これならば、人選。
“ポイント”

梅雨の旅船の描き富士記念写真

べにりんご

夏井いつき先生より
「北海道から富士山を見るバスツアーに参加しました。梅雨の時期と重なり、本当の富士山が車窓から見えたのはほんの一瞬でした。途中のフェリーの壁に素晴らしい富士山が描かれており、ツアー参加者みんなで楽しくリベンジ写真を撮りました」と作者のコメント。

「船の描き富士」は寸詰まりな表現。一句として、情報量が多すぎるので、こうなってしまうのでしょう。上五中七の句材で、一句。中七下五の句材で一句と、二句に仕立て直してみましょう。
“参った”

折れし先忽然と満つ残雪の山

平岡梅

夏井いつき先生より
「残雪の知床連山を見るのが好きですが、カーブの続く先にいきなり荘厳な山が見えて感動します。『満つ』は視界いっぱいにという意味なのですが、どうでしょうか」と作者のコメント。

「折れし先」という表現ですが、何かがポキリと折れたのか……と読めてしまいました。そこから作者の描きたい光景に戻るのに、少々時間がかかるものですから、「満つ」の意味にたどり着くのが困難になる読者もでてくるかと。
“ポイント”

深夜バス初雪コンビナートへと

紫黄

夏井いつき先生より
「静かなバス中、煌々としたコンビナートへと降る幻想的な雪をイメージしました」と作者のコメント。

表現しようとしている内容には惹かれます。「初」が必要なのか、「深」が必要なのか。この二点を考慮に入れつつ、語順を一考してみましょう。
“ポイント”

壺焼の匂い閉じ込めバス発車

楽和音

夏井いつき先生より
「閉じ込め」以外の表現をさぐってみましょう。人選に手がとどきそうですよ。
“ポイント”

六台のバス川をゆく石鹸玉

亘航希

夏井いつき先生より
「六台のバス川をゆく」は、川に沿った道を通っている(?)という意味なのか。「六台のバス」で意味が切れて、「川をゆく」のは石鹸玉(?)……なのだとすれば、石鹸玉に対してこの描写は適切なのか。読み手として色々迷います。
“ポイント”

雑魚寝して頂き近づく夏の星

コリちゃん

夏井いつき先生より
「雑魚寝して」いるのに、中七で「頂き近づく」とあると、時間軸がせわしなくて、読み手としては戸惑います。「雑魚寝」と「夏の星」、「頂き」が近づく「夏の星」という具合に、二句にしてみましょう。
“ポイント”

初桜餡を炊く香や小庫院

錆鉄こじゃみ

夏井いつき先生より
「初桜」で切れて、中七「~や」で切れる三段切れかと。三段切れについては『俳句添削事典』を参照してください。
“ポイント”

カタコトの真言唱へし遍路かな

松下眞す美

夏井いつき先生より
「ドイツで日本学を学ぶ若者が、お遍路に挑戦しようと来日。歩いて四国八十八ヶ所巡礼を成し遂げるテレビ番組をみて詠みました」と作者のコメント。

この内容でしたら、「かな」は効いていません。「かな」を外せば、こんな感じになります。

添削例
カタコトの真言唱へをる遍路
“ポイント”

多言語の五号目満車花の富士

沢山葵

夏井いつき先生より
「春に富士山へ出かけた時、観光バスは数珠繋ぎで、色んな言葉が飛び交っていました」と作者のコメント。

作者はこのバスに乗っているのでしょうか。外で、動いていくバスを見ている(数えている?)のでしょうか。そのあたりが、イマイチつかみにくい書き方になっています。
“ポイント”

ババは晴子へ窓外は春の野で

白猫のあくび

夏井いつき先生より
意図は分かるのですが、「春の野」という季語を主役にすると考えると、前半の「ババは晴子へ」のほうが悪目立ちしてしまいます。ここまで企める力があるのですから、言葉の質量についても一考されるとよいかと。
“ポイント”

ジーンズ論交はす青春四月かな

岸野ゆり

夏井いつき先生より
「かな」の詠嘆はあまり効いていません。「青春」という言葉が必要か否かも含めて、再考してみましょう。
“ポイント”

雪の岩木山リハビリの窓に飛び入り

あらまち一駒

夏井いつき先生より
「『岩木山』を『やま』と読んでいただきたいです。ハシ坊に取り上げられた句〈窓枠に頭を雪に津軽富士〉を『リハビリビリの窓』と書くと、その場がより具体的になります。参考に推敲しました」と作者のコメント。

「岩木山」を「やま」と読ませるよりは、不要な言葉を外すほうが建設的です。「~に飛び入り」したのは、何でしょう。雪の岩木山が見えるという意味だとすれば……この誤読を誘う言葉を外すだけで、一句にゆったりとした調べが生まれます。

添削例
リハビリの窓には雪の岩木山
“ポイント”

バスの窓流るるビルに風光る

本間 ふみふみ

夏井いつき先生より
「ビルや」とすれば、人選です。
“ポイント”

鉄橋から通報冬の川原に蹴る五人

モト翠子

夏井いつき先生より
「電車で鉄橋を渡っている時、川原に制服姿の子どもたちがいました。一人が蹴られていました」と作者のコメント。

後半の書き方では、五人が石でも蹴っている(?)と読めてしまいました。「一人が蹴られ」という状況は、描写したいところです。
“ポイント”

運河路の昏き瓦斯塔雪明り

竹庵

夏井いつき先生より
描こうとしている光景はよいですね。「瓦斯塔」は「塔」という建造物なのでしょうか。「瓦斯灯」の変換ミス? 運河に沿った道にガス灯がともっている光景ならば、こんな語順も考えられます。

添削例
瓦斯灯昏き運河や雪明かり
“ポイント”