写真de俳句の結果発表

第65回「バスからの眺め」《ハシ坊と学ぼう!⑩》

ハシ坊 NEW

バスからの眺め

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

海臨む丘いちめんの水仙花

ふぃーかふぃか

夏井いつき先生より
「海からの風を受けながら、水仙が斜面いっぱいに咲き誇っていた様子を見て詠みました」と作者のコメント。

この句自体はできているのですが、「水仙」としては似たような場所に群生しているケースが多いものですから、似たような句は存在します。ここから、どうやって独自性と真実味を入れていくのか。そこが、勝負のしどころです。
“ポイント”

富士山の窓に離婚や雛納め

立石神流

夏井いつき先生より
「三月三日に夫と離婚し、窓から富士山が見えたので、詠みました」と作者のコメント。

「富士山」と「離婚」、「離婚」と「雛」、それぞれの取り合わせは面白いと思います。それらを全てを入れ込むのなかなか難しい。私なら、二つに切り分けて、一句一句にするかな。
“ポイント”

癌末期解脱の朝の冬青空

天六寿(てんむす)

夏井いつき先生より
「知人が正月明けに癌で他界しました。余命宣告を受けても、体力をつけるため早朝に散歩をしていました。ある時、夜明け前の景色が美しいと穏やかに話すのを聞いて、その心境に至るまで様々な葛藤があっただろうに、全てを受け入れたのだと思いました。季語は『解脱』とニュアンスが近いかなと思いましたが、また『冬の空』か『冬青空』かで迷いましたが、上五中七が重いので季語も比重が少し重い『冬青空』にしました」と作者のコメント。

下五の季語は「冬の空」よりは「冬青空」のほうが美しいですし、作者の表現したい内容にも似あっています。改善の余地があるとすれば、「解脱」という言葉でしょうか。むしろ、この人物の表情を描写することで、「まるで解脱したみたいなお顔だなあ」と読者に読み取らせるのが、俳句の技法というものです。
“参った”

頂上へ節分の御朱印いざ

横須賀うらが

夏井いつき先生より
「御朱印」のあとに、「御朱印よ」「御朱印や」という具合に、一音だけ詠嘆の言葉を入れると、調べも気持ちよくなりますし、「いざ」という着地にも弾みがつきます。
“ポイント”

白息の黒髪翳め巫女の拝

うくちゃんま

夏井いつき先生より
少し材料が多いです。自立語を一つ減らすと、一句が少しゆったりします。
“参った”

啓蟄や若葉マークのこぼるる荷

麦野 光

夏井いつき先生より
「若葉マーク」をつけた車の荷台(?)から、荷物がこぼれているのでしょうか。 あるいは、「若葉マーク」は、仕事に慣れない人物の比喩でしょうか。そのへんの読みを迷いました。
“ポイント”

並走のドローン噴霧青田ゆれ

はま木蓮

夏井いつき先生より
描こうとしている光景は良いです。語順を一考してみましょう。例えば、「青田揺る」と上五を作ってから、何によって揺れているのかがわかるように描写してみるのも、一手です。
“ポイント”

太郎次や子規も左千夫も漱石も

水鏡新

夏井いつき先生より
マニアックな新年の季語に対して、人名を重ねるという思い切った句。ちょっと意図が勝ちすぎたかなあ……。
“ポイント”

元旦の陽に翳し見る皺手かな

みやもとや

夏井いつき先生より
「元日の朝、マンションの窓から初日の出が。今年も健康で過ごせますようにと手を合わすのですが、後期高齢者の我が手は流石に皺だらけだなと思ったのを句にしました。初めは下五を『老いの皺手』としたのですが、『皺の手』で老いが分かると思い、投句のようにしました。ただ、『かな』が効いているのかどうか不安です」と作者のコメント。

「かな」という詠嘆の問題もありますが、「皺手」という言葉がやや寸詰まりな印象。「見る」は基本的には不要な動詞ですから、そこを外すと、もう少しゆったりと描くことができます。

添削例
元旦の陽に翳したる皺の手よ
“ポイント”

薄氷のヘアピンカーブ時止まる

閑陽

夏井いつき先生より
下五「時止まる」というありがちな言葉に甘えず、ここの表現を工夫してみましょう。ここが、一句の肝となる部分です。
“ポイント”

ふりむけば風花舞ひて白き富士

長谷部憲二

夏井いつき先生より
「『風花』に『舞う』はベタ過ぎかと思いましたが……」と作者のコメント。

おっしゃる通りで、「風花」と書いた瞬間にもう舞っています。例えば「振り向けば風花」だけで、鮮やかに舞ってますものね。「舞ひて」の三音、場合によっては「白き」も含めての六音のよりよい使い方を考えてみましょう。
“ポイント”

万緑や墓地までのバス五分乗る

こきん

夏井いつき先生より
句材がよいですね。この内容でしたら、五七五のリズムをを逸脱してもよいので、語順を一考してみましょう。
“ポイント”

春めくや吾妻小富士も「雪うさぎ」

素牛

夏井いつき先生より
「二月の初旬頃になると、福島市の西に聳える吾妻連峰の一部である吾妻小富士の山肌に、うさぎの形をした残雪が現れます。私達はそれを『雪うさぎ』又は『種まきうさぎ』と言っています。農家の人々は『そろそろ種まきの季節だ』と言って、田んぼや畑の作業に精を出します」と作者のコメント。

このような情景もまた「雪形」という季語になっています。ですから、「雪形はうさぎ」と書けば、「春めく」という季語を使う必要もありません。全体を一考してみましょう。
“ポイント”

おひつからまた大盛りの富士の春

となりの天然水

夏井いつき先生より
「山中湖の近くに会社の保養所があり、子供達が小さかった頃から何度も遊びに行きました。管理人さんの作る食事がとても美味しいので、富士山が見える食堂でいただく朝ごはんで、ぜひ一句作りたいと思いました。盛り込みたい要素はたくさんありましたが、余計な情報を削る! と自分に言い聞かせて仕上げました。また、遊びに行くのは初夏以降ですが、春のほうがモリモリ食べる感じに似合うと思い、春にしました」と作者のコメント。

「余計な情報を削る」のは、俳句にとってとても大事なことです。「おひつ」からの「大盛り」と「富士」+「春」に絞ったのは、良い判断です。あとは、助詞の微妙な調整かな。

添削例
おひつからまたも大盛り富士は春
“ポイント”

富士山を飲み込み雪雲迫りけり

岳陽

夏井いつき先生より
微調整すれば人選です。

添削例
富士を飲み込み雪雲の迫りけり
“ポイント”

枯野道結露で左肩濡らし

大月ちとせ

夏井いつき先生より
「枯野道」と場所を書くよりは、「枯野ゆく」と動きを書いてみましょう。さらに、語順を少し替えると、ぐっと良くなります。

添削例
枯野ゆく結露に濡らす左肩
“ポイント”