写真de俳句の結果発表

第65回「バスからの眺め」《ハシ坊と学ぼう!⑪》

ハシ坊 NEW

バスからの眺め

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

冴返る富士の姿に心打つ

ちくちく慶

夏井いつき先生より
「~に心打つ」は不要な言葉です。心を打たれたという心情を語るのではなく、その富士の様子を描写しましょう。それが叶えば、その句を読んだ人の心を打つのです。
“ポイント”

街中を眺めてわかる寒さかな

ゴルパパ

夏井いつき先生より
「わかる」は不要です。ここにどんな一語が入るかによって、一句における詩の純度は大きく変わってきます。
“ポイント”

冬あかね切りとる富士の淡き影

氷雪

夏井いつき先生より
「冬あかね」と「富士の淡き影」の描写はよいですね。「切りとる」が説明の言葉になっています。ここが、完全に描写の言葉になると、完成です。
“参った”

園児等の白菊バスガイドの黙

Steve

夏井いつき先生より
どういう状況なのでしょう。園児たちはバスに乗ってる? 降りてる? そのあたりが、ちょっと分かりにくいかな。園児が白菊を墓(?)や本堂(?)に供えているのだとすれば、それだけで十分俳句になります。「バスガイドの黙」とは切り分けて、二句にするとちょうど良い分量になりそうです。
“ポイント”

火の鳥のごと明石海峡大夕焼

こりゆばんばん

夏井いつき先生より
「兵庫の娘の家からの帰り道。真っ赤な夕焼けに雲が染まって、ほんとに火の鳥が飛んでいるかのようでした」と作者のコメント。

「火の鳥」のようだったのは「大夕焼」の光景ですね。「明石海峡」という固有名詞の位置に一考の余地があります。場合によっては「明石の大夕焼」ぐらいにする必要があるかも。
“参った”

車窓より富士時雨るるシャンゼリゼへ

浮き寝鳥

夏井いつき先生より
「古希祝いでパリへ移動する時に、富士を見ました」と作者のコメント。

中七から下五にかけて、展開が急すぎます。更に、「車窓」というと車の窓ですから、「機窓」とするべきかと。
“ポイント”

叢雨や4号走る王蟲の赤

小鳥遊こはく

夏井いつき先生より
「バイパス4号線を走っていると、曲がりくねった道を走る車の列が、アニメのナウシカに出てくる王蟲に見えてきました。急に雨が降ってくると、本当に赤いテールランプだけが見える様子を詠んでみました」と作者のコメント。

やろうとしていることは意欲的です。季語の選択も含めて、「王蟲の赤」がテールランプだと分かるように、もう一工夫が欲しいところです。
“難しい”

凍る山ドクターヘリの旋回音

千霞

夏井いつき先生より
上五を「山凍る」とすれば、人選です。
“ポイント”

魂尽きしむくろ安らぐ樹海冷へ

山田季聴

夏井いつき先生より
この内容でしたら、「樹海冷ゆ」から始めるべきでしょう。上五中七の内容の重複も一考の余地があります。
“ポイント”

のつぺりと這ふ石段や山眠る

弥栄弐庫

夏井いつき先生より
「のつぺりと這ふ」という書き方で、作者の意図がそのまま伝わるのかどうか、ちょっと不安。今、何回目かのハリー・ポッターを読んでいるところなので、「のつぺりと這ふ」が大きな蛇の動きにみえてしまいました。
“良き”

冬天やほったらかしの湯と富士と

雀子

夏井いつき先生より
「山梨に『ほったらかし温泉』という日帰り露天風呂があります。甲府盆地と富士山の絶景が見られます」と作者のコメント。

「ほったらかし温泉」というのがあるのですね。その名前は面白い。季語も含めて、それが名前だと分かるように書けたらベストなのですが……。
“ポイント”

香煙や後方に富士浅き冬

たけ

夏井いつき先生より
「香煙や」の詠嘆で強く切れて、「後方に富士」で意味が切れて、「浅き冬」と着地する、三段切れになっています。どこか一カ所繋げるか、語順そのものを一考するか。
“良き”

車窓より地を染めわたる曼珠沙華

ぽち

夏井いつき先生より
中七「地を染めわたる」という措辞は、再考の余地があります。さまざまな赤い花が咲く様子に関して、「染めわたる」という言い回しはよく使われます。
“ポイント”

外廊の点描休む秋の富士

早霧ふう

夏井いつき先生より
「中学2年まで、富士の見える町にいました。雪を頂く富士が好きです。美術で、水彩、遠近法で校舎を描きました。外廊下でイーゼル使用。廊下の切れる右側に富士。立ちん坊の息抜きは富士鑑賞。少しずつ描いて満足いく絵が描けました」と作者のコメント。

息抜きであることを伝えたかったのは分かりますが、「休む」の動詞が不要です。人選は目の前ですよ。
“ポイント”

準急の視界五秒の寒の富士

二城ひかる

夏井いつき先生より
「東京でも富士山が見える場所は多くあります。通勤電車からも、特に寒い時期には鮮明に見えます。準急電車に乗っていると、建物に遮られていた視界が開けて、富士山が見えて、目で追いながら過ぎていく、実体験を詠みました。『車窓』と書かなくても情景がわかっていただけると嬉しいです」と作者のコメント。

「『車窓』と書かなくても情景がわかっていただけると」という意図を明確にするのならば、中七「~五秒の」ではなく、「~五秒を」とすれば、人選です。
“ポイント”

春深し画家のコロッケ定食来

山城道霞

夏井いつき先生より
画家が作ってるコロッケ定食なのか、画家のために饗されているコロッケ定食なのか。そこが分かりにくいです。
“難しい”

電子百垓個ひとつも見えず冬銀河

ヒロヒ

夏井いつき先生より
第62回『バッテリースタンド』《並》⑥〈電子百垓個ひとつも見えず冬〉を推敲しました。並選理由を考察した結果、①『電子百垓個』は、お題写真が無いと分かりにくいから。②この句の場合、十七音に拘るより、上五を余らせて中七下五でリズムを取り戻す方が厚みを増すから。という二点が思い当たりました。そこで、①は許してもらうことにして、『電子百垓個』と『冬銀河』の二物衝撃でリトライいたします」と作者のコメント。

「電子百垓個」と「冬銀河」の取り合わせ、いいですね。ここまでくると、中七が説明的な叙述なのでとても惜しい。いよいよ、最後のブラッシュアップです。
“ポイント”

脈打てるランプの列や富士登山

樋ノ口一翁

夏井いつき先生より
「夏の夜の富士山は、御来光目当ての登山客で大渋滞です。ヘッドランプの列が登山道をくっきりと浮かび上がらせ、列が少し進むときに脈動するように見える様子を詠みました」と作者のコメント。

描こうとしている光景はよいですね。「ランプ」と「ヘッドランプ」では、見えてくる映像が違うので、そこが悩ましい。
“難しい”

ある年の八十八夜や雨の富士

さよ彦

夏井いつき先生より
単語が多すぎるのが、残念。全部入れたいというお気持ちは分かりますが、十七音しかない俳句においては、とても大切な判断になります。「ある年の」と限定しなくても、「八十八夜」「雨」「富士」だけでも、十分俳句になるだけの要素があります。
“ポイント”