俳句deしりとりの結果発表

第49回 俳句deしりとり〈序〉|「すが」②

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俳句deしりとり〈序〉結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。俳句deしりとり〈序〉のお時間です。

出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。
“良き”

第49回の出題

兼題俳句

泉までならご一緒もできますが 平本魚水

兼題俳句の最後の二音「すが」の音で始まる俳句を作りましょう。

 


※「すが」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。

すがってみたりして火曜の春夕焼

藤井 春

すがるには邪魔なプライド寒椿

茂木 りん

るかに斜暉へ折重なる青蔦

ツナ好

るもの銀河の芯へ垂らすもの

四條たんし

すがる子の頬を伝ひし桜かな

ちょうさん

る子を幼稚園バス春の雲

骨のほーの

すがる手をふりほどかない白芙蓉

田中麦(水豚庵改め)

すがる手を軽く払はれ花の雨

赤味噌代

る手を払ひて母ははだれ野へ

白猫のあくび

る世のいろやかたちや桃の花

西野誓光

すがりたき共通テスト雪の傘

織璃無

すがりつき留守番やだと跣足の子

伊沢華純

すがりつくをんなの役や野外劇

窪田ゆふ

すがりつく胸にブローチカブトムシ

ちくちく慶

すがりつく小骨もろとも食む鰊

東田 一鮎

すがりつく子を引き退散する夜店

石田なるみ

すがりつく転倒防止の雪囲い

緋呂

りつくお宮にしっとり春の雨

糸桜

りつくこゑや裏戸の雪女

青野みやび

りつく吾子も懐かし巣立ち鳥

ぐ乱馬

りつく吾子振り払い初天神

沖庭乃剛也

りつく雪そのままに破婚せり

夏村波瑠

りつく母の二の腕春彼岸

おちがうな

り付く元夫振り切って氷雨

山口さと子

り付く古き便りと悴む手

老杉

り付く女のふりを春の闇

玄子

り付く石の赤子や寒がはり

加賀屋斗的

りつきガチャねだる吾子雪の駅

干猿

「縋る」も比較的多かったですねえ。「縋る」と「付く」が結びついて「縋り付く」という一つの動詞になった形を複合動詞と呼びます。《沖庭乃剛也》さんや《干猿》さんみたいな子どもが親にすがりついてる姿ならまだ可愛いもんだけど、女だとか元夫だとかが縋り付くとドラマチックな人生劇場感が満々であります。一方で《ちくちく慶》さんの「カブトムシ」とか《東田 一鮎》さんの「小骨」とか、引っかかるべくして引っかかっているだけの些末なものに対して「縋り付く」という大仰な表現を組み合わせて落差を生む、俳諧味ある句が出てきてるのも興味深い。
“良き”
 

すがるおとめは万葉のひとヒヤシンス

舟端たま

蜾蠃少女にはなれない小正月

夜汽車

すがれ追いイカの切り身に真綿つけ

飯島寛堂

すがれ追い蜂の子何処と山駆ける

いまい沙緻子

女性がなにかにすがっている発想は先ほどの縋り付くグループにも見られる通り。《舟端たま》さんの「すがるおとめ」もそういう発想……かと思いきや、調べてみたら全然違う意味だと!? 「すがるおとめ」とはジガバチのように腰が細い、美しい少女を意味する言葉のようです。漢字で書くと「蜾蠃少女」。読めんわ!! 《舟端たま》さんと《夜汽車》さん、よくこんな単語見つけてきたなあ……。

「蜾蠃(すがる)」はジガバチの古名、または蜂の異名とのことですが、《飯島寛堂》さんと《いまい沙緻子》さんの「すがれ追い」もこれに関連する言葉の模様。長野県の伊那地方に伝わる蜂の捕獲方法で、地中に埋まった地蜂の巣を探して採り、幼虫を食べたりするそうです。うーむ、さすが昆虫食の聖地長野県。歳時記にも秋の季語として掲載がありました。おもしろいねえ、日本文化って。
“良き”

すがる虫張り込むデカの足元に

輝虎

すがる虫鳴く味噌蔵に真昼の灯

彩汀

すがれ虫雨戸詰まらす喧嘩後

佐々木棗

すがれ虫窓の桟から救いけり

八一九

すがれ虫徹夜に効かぬ顔認証

末永真唯

「すがる虫」に「すがれ虫」、こっちは耳慣れた季語ですね。晩秋の季語「残る虫」の傍題として掲載されていることが多いです。鳴き声も弱々しく数も少なくなった哀れさが季語の本意ですから、描かれている光景も地味なものが多いですね。《彩汀》さんの句、独特の湿度や匂いを感じさせる「味噌蔵」のロケーション設定が上手いなあ。《末永真唯》さんの現代的な疲弊具合の描き方も個人的には好き。人相変わるくらいげっそりしちゃう時、あるよね。休みましょう。『紅の豚』でも「睡眠不足はいい仕事の敵だ」って言ってるし。
“良き”

れたる傾国の人白木蓮

千葉水路

「すがれ」を漢字で書くとこうなります。草木や花が盛りを過ぎてしおれたり、人のからだや気持ちが盛りを過ぎて衰えることを意味します。傾国の美女なんて言葉もありますが、かつての「傾国の人」もいまや尽れてしまい……年月というものは無情でありますなあ。とはいえ「白木蓮」によって、悲観に偏らない良い距離感を生んでいます。厚みのある大輪の花は気品と矜持を感じさせる良い取り合わせ。
“ポイント”

 

姿絵に賑わう耕書堂や春

竹田むべ

姿絵の女抜け出す朧かな

かなかな

姿絵やぽつぺんずつと吹き鳴らす

早霧ふう

姿絵の遊女のやうに蚊遣の火

横山雑煮

「姿絵」は文字通り、人の姿を写し描いた絵のこと。江戸時代の浮世絵には美人画や役者絵も多数描かれましたが、今回句材となっているのはそういう「姿絵」なのでしょう。落語だか昔ばなしでもあるよね、絵姿女房とか掛け軸に描かれた女の幽霊と酒盛りする話とか。《早霧ふう》さんの句は絵に描かれた季語だと考えると季語の持つ力が弱くなっちゃうから、ぽっぺんを吹く姿絵を想起しつつ、作者自身がぽっぺんを吹き鳴らしていると読みたいところ。《早霧ふう》さんといい《横山雑煮》さんといい、姿絵のイメージを現実の人間の行動や描写と結びつけてるの、上手いなあ。しなをつくる細かな所作が「姿絵」によって自動的に補完され、読み手の脳に再生されていきます。
“良き”

原公都の夢梅が咲く

すけたけ

原道真の抱きたる飛梅

どこにでもいる田中

原道真ゆかりの梅はもう飛ばぬ

つんちゃん

原道真公や梅の宿

しみずこころ

原道真見たか梅ヶ枝餅

渋井キセ乃

原公梅が枝餅に春の夢

昇椿

原道真不遇春炬燵

豆くじら

原道真稲落雷を受ける方

けーい〇

原伝授手習鑑初稽古

東京堕天使

菅原公こと菅原道真。太宰府へ左遷された菅原道真は生涯梅を愛したことで有名です。句にもたくさん梅が登場しておりますねえ。太宰府の名物、梅ヶ枝餅も並んでおります。《けーい〇》さんの「落雷」は菅原道真の怨霊による祟りといわれる清涼殿落雷事件。左遷されたあとも物語の種になるんだからすごい話だよなあ。《東京堕天使》さんの「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」はそんな道真の史譚・伝説・民間信仰などを取り混ぜて題材にした浄瑠璃で、浄瑠璃三大傑作と呼ばれ、歌舞伎でも上演されております。人気の演目ともなれば一層「初稽古」にも気合いが入ることでありましょう。
“ポイント”

総理【令和】発表夏はじめ

スマイリィ

さんの「令和」掲げし四月かな

のなめ

さんの「令和」日比谷の聖五月

吉野川

さんの掲げる令和万愚節

阿部八富利

大臣祭りカンコー惑ふ名無し絵馬

ズッキーニン

さんと共に蛙の目借時

さおきち

さんの故郷は今日も雪だって

千代 之人

義偉引退真金町に雪

太田 陽翠

さんは解放された老後かな

団塊のユキコ

議員どうぞごゆっくり冬茜

とも女

氏引くらし吾は忙し味噌仕込む

黒江海風

こちらは現代の人物。菅元総理が政界引退を表明されたのが2026年1月の出来事。みなさんの記憶に新しいのも手伝ってか労いのご挨拶句が届いております。令和の元号を発表したのも菅元総理でしたねえ、もはや懐かしい。

“とてもいい“

スガくんの彼女の菫水を遣る

青に桃々

スガさんのトスをください春あした

染野まさこ

スガちゃん」の三人いるや進級す

松虫姫の村人

すがの」か「かんの」か読みに悩んで入学式

留辺蘂子

すがじやなくかんよさざんくわさざんくわよ

島田雪灯

須賀くんのセンスがさすが種選

あみま

須賀さんは今日までだつて寒の雨

鷹見沢 幸

人名の句いろいろ。こちらは菅元総理のように特定の人物を表す名前ではなく、不特定多数のスガさんを題材にしております。「すが」と「かん」とか、漢字の読みに複数の可能性があるお名前って読む時迷うよねえ。《島田雪灯》さんの全部ひらがな&歴史的仮名遣いの「さざんくわ」リフレインがたおやかで好き。カ行の音の多用も韻文としての魅力を高めてくれております。《あみま》さんの句も変な味わいがあって好きだなあ。種選のセンスってどういうところで発揮されるものなんだろう。
“良き”
 

井きんまた煤逃の婿殿を

湯屋ゆうや

井きん主水へ放る唐辛子

若狭草

井きん婿殿探す春嵐

京あられ

原文太には及ばぬがあたたけし

植木彩由

原文太級の夕立にあたふた

清松藍

野完封花冷の東京

雨野理多

人名シリーズ・有名人いろいろ編。「菅井きん」と「菅原文太」の俳優さんコンビ、前者が人物の行動が描かれてるのに対し、後者は時候や天文の季語と並ぶ形で描かれてるのが興味深いですなあ。《雨野理多》さんの「菅野」は「完封」から察するに野球かな? あんまり野球には詳しくないんだけど、完封って一人の投手が最後まで相手チームに得点を与えないことだっけ? めでたさに寄りすぎてない「花冷」が良い季語のチョイスであります。
“良き”

スガシカオと新聞紙とお菓子ガス

砂糖香

スガシカオ夜空ノムコウマデ春来

藍創千悠子

スガシカオ夜空ノムコウ菫スミレ

沢拓庵

スガシカオプロとはなんぞや春の波

大本千恵子

スガシカオ音量上げて初出勤

はま木蓮

スガシカオ時雨の駅のワイヤレス

むい美縁

スガシカオ鹿にも年明け還暦だし

蛙目

スガシカオ聴く冬の日の永きこと

おりざ

スガシカオ聴く別れ切り出す冬夜

藤富うに

スガシガオ爪弾く冬の空の向こう

紫黄

スガシカオ壁の向こうに鴉の巣

老蘇Y

スガシカオ流るる夜やヒヤシンス

不二自然

スガシカオ漏れる窓辺のヒヤシンス

小川さゆみ

《砂糖香》さんの句、なんか変な組み合わせだなあ……としばらく眺めてたけど、回文かこれ!! さすがに季語までは入らなかったようだけどがんばりましたねえ。

しかしまあ懐かしいな。スガシカオ、昔ハマって聴いてたのよ。SMAPの「夜空ノムコウ」への作詞提供で一気に有名になったような記憶がある。《おりざ》さんとか《紫黄》さんとかなんとなく「cloudy」っぽいよね。ちなみにぼくが一番好きな曲は「AFFAIR」です。暗いよね。そこがいいんよ。寓意めいたミュージックビデオもね、いいんよ。

《③に続く》
“良き”