第49回 俳句deしりとり〈序〉|「すが」④

始めに
出題の句からしりとりの要領で俳句をつくる尻二字しりとり、はじまりはじまり。


第49回の出題
兼題俳句
泉までならご一緒もできますが 平本魚水
兼題俳句の最後の二音「すが」の音で始まる俳句を作りましょう。
※「すが」という音から始まれば、平仮名・片仮名・漢字など、表記は問いません。
姿煮のキンメ甘ったるいゆやけ
葛西のぶ子
姿煮の皮は鍋蓋金目鯛
んっちゃん
姿煮のメバル大きく初出勤
桃華
姿煮や鍋島皿の桜鯛
小川都雪
姿煮の鯛よ術後の老体よ
ルージュ
姿煮の鰯の首置く朱の絵皿
繁茂おじ
姿煮や寒鯉の眼の甘きこと
鍋焼きうどん
姿煮に押し寄せる箸や春岬
一人男
姿煮の白き目玉や福寿草
天六寿(てんむす)
姿煮はフカヒレあんに浮く冬日
舞矢愛
姿煮と呼べば小女子すんと伸び
白沢ポピー


すが漏や音なく伝う壁の染み
平岡梅
すが漏りのあと縁側の隅の隅
北川茜月
すが漏りや書院欄間の龍の髭
織部なつめ
すが漏るや外泊許可の母と寝て
キャロット えり


すがっこの透明空き缶の茶色
三日月なな子
素甕に水かたちを得たる氷かな
木いちご
すが漏の「すが」はこんなところにも。「すがっこ」は氷や氷柱を意味する方言のようです。これも地方独特の季語といえるのかもしれませんねえ。「すがっこ」で名句をたくさん生み出せば傍題に採用する歳時記が増えるかも!?
「空き缶」と「素甕」、大きさも質感も全然違うフィールドに張った氷だからこそ、表す単語の違いにも必然性を感じます。仮に《三日月なな子》さんの句が「氷の透明」だったら愛嬌や童心のようなものが失われちゃうし、《木いちご》さんの句が「すがっこ」になってたら「素甕」の重厚感や格調とミスマッチな気がする。


塩川(スガー)明るしジンベイザメの大欠伸
真夏の雪だるま
沖縄のレジャー情報をみてみるとジンベイザメと写真撮れますみたいな記事も出てくるけど、スガーの近くで見れたりするんだろうか。溌剌とした「明るし」に対して、ジンベイザメののんきな「大欠伸」が好対照。


洲が河に呑まるる秋の遠まわり
那乃コタス


巣鴨は春歩くマダムら華やぎて
大久保一水
巣鴨ぶらぶら草餅をぶら下げて
三浦海栗
巣鴨かな丑紅買ふてマルジ寄る
わたこと
巣鴨ツアーに三人のギャル春の雷
伊藤 恵美
巣鴨でね買ったの赤い冬帽子
一井かおり
巣鴨にて地蔵に詣づ冬帽子
みなごん
巣鴨駅は四の付く日や春燈
内藤羊皐
巣鴨参りの赤き靴下冬温し
うきりん
巣鴨かの鮫の切れ端臭い戦後
沼野大統領
巣鴨処刑場十三号鉄扉冬の海
西村小市


巣鴉にワイヤハンガーくれてやる
⑦パパ
巣が落ちた卵が割れた鴉嗚呼
かときち
巣構えや引越便の紙おむつ
虎有子
巣隠れの嘴広鸛のよく動く
二城ひかる
巣隠ノコノバショタゴンスベカラズ
中島 紺
巣隠やそっと追われる地域猫
山姥和
巣隠や関西電気保安協
トウ甘藻
巣隠や社の上の狭き空
はしま
巣隠れて縹の浜の松林
風早 杏
巣隠れてフェルメールの絵なお無音
乃咲カヌレ
《山姥和》さん、《トウ甘藻》さん、《はしま》さんが「巣隠や」で切れを作って周囲の光景へと展開する手堅い作りになっている一方、《風早 杏》さんと《乃咲カヌレ》さんの「巣隠れて」とゆるい接続で中七へとつなげる形も味わいがあります。《風早 杏》さんは動画撮影のカメラがゆっくりと横へスライドするようなイメージ。鳥の巣を動画の開始地点にして、縹色の海や浜と防風林の光景へとスライドしていく、現実的な光景を描いてます。
片や、《乃咲カヌレ》さんは「て」の接続の効果が解説しにくいタイプの句。鳥の巣があるような屋外と、フェルメールの絵が飾られているであろう屋内との物理的なギャップに戸惑う……んだけど、「フェルメール」との不思議な距離感に悩みつつも惹かれております。なにかフェルメールの絵に鳥や木々を描いたものがあって、目の前の光景とそれが重なったりしたのかなあ。あんまり美術詳しくないマンなんだ、ごめん。フェルメールも『真珠の耳飾りの少女』と『牛乳を注ぐ女』くらいしか知らないんだ、すまない。


* *
しりとりを名乗っているくせに、全兼題が数珠つなぎになれないんですよね。出題と投句締め切りのタイミングの関係で。
第1回で選んだ兼題句から考えるのは第3回の句だし、第2回の兼題句から考えるのは第4回の句だったんです。奇数回は奇数回同士が、偶数回は偶数回同士がしりとりを形成はしてるんですが、いわば独立した2つの線路がそれぞれの道を走っていて交わらない状態だったんですね。
偶数回組は最終回となる第50回へと着地して気持ちよくエンディングを迎えられるのに、こっちの奇数回組は行き場のない亡霊のようになっちゃうのかなあ、とオドラデクを心配するカフカの気持ちになっていたのです……が! しりとりの神様は我々を見捨てなかった!!
ということで、最終の第50回の出題へとつながる句はこちら。
眇める春の朝二度寝の日曜日
白発中三連単
おお、日曜日!! 第48回から第50回へとつながる兼題句〈蝙蝠のなる木明日は月曜日 塩田奈七子〉と同じしり二字ではありませんか!!(曜日なんだからそりゃそうだ)
《白発中三連単》さんはまさかそこまで計算してこの句を作っていたのか……? 「眇める(すがめる)」表情にリアルな春の朝の実感がありますなあ。日が高くなってるのみて、時計みて、まだ10時じゃん、ってなって二度寝するの。ビバ、日曜日!!
そんなわけで最終回となる第50回、「うび」で始まり「ん」で終わる句へと続きます。
みなさんの明日の句作が楽しいものでありますように! ごきげんよう!



