写真de俳句の結果発表

第67回「城下町の白壁」《ハシ坊と学ぼう!⑤》

ハシ坊 NEW

城下町の白壁

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

昇る空なくててんでに雨の緋鯉

海色のの

夏井いつき先生より   評価    人 
「昨年(2025年)の金沢の句会ライブの日。少し早くついたので尾山神社を散歩したときに作った句を推敲しました。雨の日の鯉はほとんど動かなくて、てんでの方向を向いたまま、諦めているようにも、じっと力を蓄えているようにも見えました。〈尾に力蓄へてゐる雨の緋鯉〉と迷いました」と作者のコメント。
 
「昇る空」の句も出来ています。人選レベルです。ただ、「尾に力」と比較すると、前者の方は鯉のぼりは空を泳いでいるけれど……という理屈がかすかに入っています。どちらかに軍配を上げるとすれば、私は後者を選びます。ただ、どちらも下五が字余りになっている点は、まだ工夫の余地があります。急がず、ゆっくりと俳筋力をつけていけば、来年の今頃には、更なる推敲案が浮かんでいるかも。
“ポイント”

一椀の清水供ふる地蔵堂

二城ひかる

夏井いつき先生より   評価    人 
「最初は〈湧水を供ふる初夏の地蔵堂〉にしていたのですが、歳時記で調べると、『湧水』は載ってないけれど『清水』は載っているのを確認し、季語『清水』で推敲しました。『清水』とあれば、季節・情景・空気感が伝わるし、節約できた音数で細部の描写ができるので『一椀の』を入れることにしました。季語はすごいですね! もっと歳時記に親しみたいです」と作者のコメント。

この出来ですから、勿論「人選」の句なのですが、作者の考えた推敲の過程が、とても模範的で、会員の皆さんの参考になればと思って紹介します。
季語「清水」があれば、
①季節・情景・空気感が伝わる。
②節約できた音数で細部の描写ができる。
この手順をバッチリ学んでくれましたね。ほんとに、季語の力って凄いのです。私が「有季定型」を基本的な立ち位置にしているのは、季語という言葉が実に面白いからなのです。
“ポイント”

季語なし

不来方の碑にすき間なく桜蕊

東ゆみの

夏井いつき先生より
「故郷の不来方城には啄木の碑があり、桜蕊がたくさん散っていました」と作者のコメント。

「桜蘂降る」として季語になります。
“ポイント”

老教師ロープウェイを憂う春

蓮天

夏井いつき先生より
「高校生の時、現国の臨時教諭として高齢の男性が教材を風呂敷に包んで来られました。『この前の戦争では』と、昨日のことのように語る先生でした。山頂の岩国城に架かるロープウェイに憤慨しておられ、『岩国の文化人は皆大反対しました』という言葉が忘れられず、桜の季節になると思い出します。〈城の春ロープウェイは反対派〉を再考しました」と作者のコメント。

この書き方だと、ロープウェイに乗ることを「憂う」のかなと読めてしまいます。
“ポイント”

墨俣や川面にこぼるる桜かな

ぽち

一夜城や見下ろす桜かな

ぽち

夏井いつき先生より
二句ともに「や」「かな」が重なりました。「や」「かな」と切字が重なると、感動の焦点がブレるということで嫌われます。どちらかを外して、整え直しましょう。音数の多寡や調べも気になります。
“参った”

城壁の弾痕のあと蓮見ひらく

きみこ

城壁の弾痕のと蓮ひらく

きみこ

夏井いつき先生より
「一句目が変換間違いで『蓮見』になっていたので、二句目に訂正の句を投稿します。『蓮見ひらく』の句は選考対象外でお願いします」と作者のコメント。

訂正後の投句も、微妙に文字が足りていません。送信ボタンを押す前に、見直すことを習慣づけましょう。「城壁の弾痕」とあれば、「あと」であることは分かります。残りの音数で、季語「蓮」を描写してみましょう。
“ポイント”

白壁に手繋ぐ影や花菖蒲

大本 武

夏井いつき先生より   評価    並 
「退職し、妻と訪れた津和野の心静かなひとときを思い出しました。兼題写真を妻に見せ、『これで一句作らないと』という私に妻は一言『思い出を詠めば』と。目からうろこでした。これは妻のおかげで出来た句です。僭越ながら、夏井先生の評価より妻の評価が気になります」と作者のコメント。

奥様のアドバイス、素晴らしいですね。兼題写真はあくまでも、発想のジャンピングボード。要は、そこから思い出せる実体験を見つけ出していただければよいのです。
この句は、ひとまず並選レベルは確保しています。結果発表を見て頂けると分かりますが、「白壁」×「花菖蒲」の句は相当数あり、中七だけの工夫で人選にたどり着くのは、なかなか至難の業です。「白壁に手繋ぐ影」が大切にしたいフレーズであれば、思い切って季語を変えてみるのも一手です。
“ポイント”

悠然とお城の堀の錦鯉

鈴木 リク

夏井いつき先生より   評価    並 
「津和野にて、さほど広くないお堀で大きな鯉がたくさんゆったりと泳いでいました」と作者のコメント。
 
この書き方で、並選レベルは確保できているのですが、これを人選に引き上げるとすれば、上五の工夫の余地があります。中七下五「お城の堀の錦鯉」とあれば、その鯉が「悠然」と泳ぐさまはある程度想像できます。この上五をどうもっていくかによって、人選に手は届くのです。
“ポイント”

雷雨来てならぬものはと八重が云う

かたじん

夏井いつき先生より
『八重の桜』の八重さんの言葉でしょうか。季語はもう一工夫できそうです。
“ポイント”

笹舟を追ふて還らぬ涅槃西風

はしま

夏井いつき先生より
「追ふ」が「て」に接続する時は、連用形になるので「追ひ」となります。あるいは、音便を発生させることもできます。音便については、YouTube『夏井いつき俳句チャンネル』【音便シリーズ】を参照して下さい。
“ポイント”

自転車に鯉ひるがへり夏来たる

サマッケニコ

夏井いつき先生より
中七の語順を替えると人選です。

添削例
自転車にひるがへる鯉夏来たる
“ポイント”

ランナー群春白壁の狭間ぬけ

北川茜月

夏井いつき先生より
語順を一考してみましょう。
“ポイント”

津和野路や石蕗の花揺れマリヤ堂

里ピイ

夏井いつき先生より
音数を調整して、調べを整えましょう。
“ポイント”

春光や眩しき白き城の壁

文月詩架

夏井いつき先生より
「眩しき」が必要かどうか、再考してみましょう。
“ポイント”

城下町や鯨骨群集めく端午の日

枸橘

夏井いつき先生より
「白壁は海の貝殻などから作ると聞いて、はるか太古にはその貝も深海で鯨骨群集に抱かれていたのかもしれない、そうだったらロマンがあるなと考えました。語が硬すぎるのと字余りが整えきれず、『鯨骨群集』という語が捨てがたくて、調整がしきれなかった自覚があります」と作者のコメント。

こういう言葉に挑んでみたいというのも、良き挑戦です。ただ、この書き方ではなかなか伝わりにくい。コツコツと俳筋力を鍛えて、数年後に再度挑んでみましょう。
“ポイント”