写真de俳句の結果発表

第67回「城下町の白壁」《ハシ坊と学ぼう!⑥》

ハシ坊 NEW

城下町の白壁

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

灯台の昼夜は無言ふきのとう

柑青夕理

夏井いつき先生より
「灯台は夜は頼もしく、昼も存在感を示す。ふきのとうを見つけると嬉しい。存在感が強く、そこにいる。」と作者のコメント。

上五中七のフレーズは良いと思います。季語がベストなのかどうか、悩ましいところです。
“ポイント”

鯉となり流れし覚え初夏の川

丸山美樹

夏井いつき先生より
「兼題写真を見て高山を思いました。そして、ひとになる前、こんな町中のきれいな小川に泳いでいた鯉だったらなぁ、と思いました。この頃少しひとであるのが嫌だと思うことがあります」と作者のコメント。

「鯉となり流れし覚え」とは、鯉になって流れることを覚えた(?)という意味でしょうか。そのあたりの読み解きを迷いました。むしろ、作者コメントの「この頃少しひとであるのが嫌だ」という思いの部分に、詩を感じました。
“ポイント”

漆喰を口端にドヤる錦鯉

織璃無

夏井いつき先生より
「城を長きに渡り保つために重要な漆喰。それでも経年劣化でたまに剥がれたりする。それが鯉の口に入ったとしたら……と妄想して作りました。お菓子のカスみたいに、口の端っこに白くこびりついたものがついている様子を想像したらおかしくなってきます」と作者のコメント。

妄想を俳句にするのがダメなわけではありません。が、妄想をリアルに表現するには、相当な俳筋力が必要です。まずは、ご自分の体験・見た光景などを描写するところから、地道な筋トレを始めましょう。
“ポイント”

鶯の啼くを忍びて蝶軽し

織璃無

夏井いつき先生より
「『鶯』と『蝶』、どちらも春の季語です。ただここで描写したいのは、鶯板の上を歩いている人が蝶の舞っている様子です。鶯を直接描いているわけではないので問題ないのかなと判断しました。そして、鶯板のことと伝わるかを懸念して『忍びて』と入れました。本当は『しのびて』と、『偲ぶ』と『忍ぶ』を重ねられればと思いましたが、詰め込み過ぎ + そもそも鶯を伝えなければと漢字にしました。諸々の判断が吉と出ていますでしょうか」と作者のコメント。

少なくともこの書き方で、鶯張りの廊下(?)だとは読めません。「鶯板の上を歩いている人が蝶の舞っている様子」というのは、人を蝶に比喩しているのでしょうか? そのあたりも、ちょっと読み切れません。
“ポイント”

鯉の泡優し「かんざらし」の涼し

佐々木棗

夏井いつき先生より
「『寒晒』は冬の季語ですが、白玉を湧水で冷やし、蜜に浮かべた『かんざらし』は水の都・島原伝統のスイーツです。季重なりにはならないだろうと思いましたが、どうでしょうか。また、有名な特産品ではないと思うので、句として説明不足か? などと迷いました……」と作者のコメント。

後半「『かんざらし』の涼し」の部分が描きたい主たる思いなのかなと推測。だとすれば、前半「鯉の泡優し」とは切り分けて、作り直すことをオススメします。
“参った”

季語なし

父を待つ遅き歩みの桜蕊

リコリス

夏井いつき先生より
「桜蕊」は、「桜蘂降る」と書いて季語となるのです。
“ポイント”

百日紅の擦れ新た子のしたり顔

ガジュマル新山

夏井いつき先生より
第56回並〈お転婆な姉の靴跡?百日紅〉第62回ハシ坊〈お転婆の靴跡高し百日紅〉第64回ハシ坊〈百日紅に斑お転婆の靴跡〉の、再々々推敲です。『誰の靴跡かを描く必要はありません。百日紅についた靴の跡を描けば、読者は「おてんばな子かも」と想像してくれるのです』と先生にコメント頂きました。幹に新しい擦れ跡があり、側には子供が自慢げにこっちを見ている。『お転婆な子かも』は表現できていると思うのですが……」と作者のコメント。

うーむ……「百日紅」は花のことですから、「百日紅の擦れ」では幹が見えてきません。ここは「幹」の一語は外せません。更に、「子」という言葉を使わなくても、子どもかも(?)と想像してもらえるだけで、俳句としては十分なのです。

添削例
百日紅の幹に靴跡高々と
“ポイント”

阿と吽と水面の空を食む緋鯉

きざお

夏井いつき先生より
「鯉がやるパクパクが、『あ、うん』のように見えました」と作者のコメント。

語順が逆でしょう。動詞も「呑む」のほうがそれらしいかな。

添削例
緋鯉らの水面の空を呑む阿吽
“ポイント”

亀鳴くやテニス壁打ちの橋脚

鮭乙

夏井いつき先生より
もう一句の投句〈黴浸潤の壁刮ぐや居間茫洋〉も、句材に個性があって面白いですね。この句については、「テニス壁打ちの橋脚」というフレーズに対して、「亀鳴く」は朦朧とした夕暮れの印象ですから、取り合わせに違和感があります。
“ポイント”

風が来て酒杯に降りた花をのむ

すけたけ

夏井いつき先生より
「何も言わずに突然に逝ってしまった。桜の季節になると二人で、人の来ない樹の下で座っていた。その樹の下に今年も一人で追想の時を過ごした。風が来た。樹を揺らして花が舞い降りた。手許の紙コップにも一片、浮かんでいる。風になった妻が来てくれたのだ。神秘が信じられるようになりました」と作者のコメント。

なるほど、そういう思いを伝えたいのであれば、上五を「妻来しか」とするのも一案です。

添削例
妻来しか酒杯に降りし花をのむ
“ポイント”

花菖蒲水辺にならび咲きにけり

宮古綟摺

夏井いつき先生より
「花菖蒲」とあれば、基本的には咲いている状態になります。ゆえに「咲きにけり」は不要です。
“ポイント”

大南風狼のごと白き犬

千葉水路

夏井いつき先生より
語順を替えるとカッコよくなります。

添削例
狼のごとき白犬大南風
“ポイント”

実南天みしり蔵だけ残ってゐ

縦ヨーコ

夏井いつき先生より
「ゐ」という歴史的仮名遣いを使っていますから、促音「っ」は大きな「つ」と表記します。ここを直せば、人選です。
“ポイント”

木蓮や城下の壁の白さかな

静悦

夏井いつき先生より
「や」「かな」切れ字が重なりました。感動の焦点がブレるということで、嫌われます。どちらかを外して、整えてみましょう。
“ポイント”

島原の初夏籠城は遠い過去

マサラチャイ

夏井いつき先生より
「島原」「籠城」とあれば、歴史上の出来事であろうことは想像できます。「~は遠い過去」は要一考です。
“ポイント”

鳴るたびに染まる白壁遠花火

無才句

夏井いつき先生より
「〈白壁や鳴るたび染まる遠花火〉と、どちらにしようか迷います。順番が難しいです」と作者のコメント。

そもそも「遠花火」の距離を考えると、眼前の「白壁」が染まるのか? もしそうだとしても、「染まる」はありがちな凡人ワード。諸々再考してみましょう。
“ポイント”