写真de俳句の結果発表

第67回「城下町の白壁」《ハシ坊と学ぼう!⑦》

ハシ坊 NEW

城下町の白壁

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

ドビュッシーの蒔絵の鯉や大南風

風嶺陸

夏井いつき先生より
「フランスの作曲家ドビュッシーは、所持していた日本製の箱に描かれた鯉から着想を得て、ピアノ曲『金色の魚』を作曲したと聞きました。そのエピソードを思いながら、また今も残るその箱の写真を眺めつつ、句を詠みました」と作者のコメント。

面白い発想です。このエピソードを全て十七音に入れるのは、至難の業ですが、たぶん上五中七のフレーズを作って、下五に季語を取り合わせたのではないかと推測します。が、季語は大いに動きそうです。この句材は、しばし寝かせて、ご自身の俳筋力を鍛えてから、数年後に再度挑んでみてください。
“ポイント”

桜咲く白壁のみち優雅かな

豆餅

夏井いつき先生より
「名古屋には、徳川家の繁栄を残す白壁が多く残り、四間道(しけみち)の裏通りをイメージしました」と作者のコメント。

「優雅かな」は作者の感想です。どんな光景を見て、優雅だなあと感じたのか。自分の眼球に映った光景を描写してみましょう。
“ポイント”

目いっぱいぞ芽咲いたばかり風光る

伊達壽男(竜胆車)

夏井いつき先生より
「芽咲いた」という書き方に違和感があります。咲くのは花ですし、芽は「芽吹く」などと書きますね。
“ポイント”

五月空めぐる思い出友の顔

結城

夏井いつき先生より
「友人と歩く初夏の街を思いました」と作者のコメント。

「めぐる思い出」とざっくり書くのではなく、その時に「友」とどこを歩いていたのか、「友」はどんな表情だったのか等を描写しましょう。
“ポイント”

季重なり

花菖蒲静寂を過ぎる錦鯉

斎藤 マカロン

夏井いつき先生より
「花菖蒲」「錦鯉」どちらも季語ですね。
“参った”

白壁に際立つ花弁ハナミズキ

花弥 樹

夏井いつき先生より
「赤い花を咲かせるハナミズキの小さな花弁が、白い壁の上に浮立つ様子を思い浮かべました」と作者のコメント。

植物の名前は、特別な意図がない限りカタカナを避けるのが無難です。「花みずき」と表記したほうがたおやかですし、その季語があれば中七の情景は自然に浮かんできます。
“ポイント”

白湯を飲む今朝堀の街入彼岸

嗚呼 みこえ

夏井いつき先生より
「白湯を飲み、今日も一日が始まる。水の清らかな城下町。まだ寒さの残る今朝は入彼岸だな」と作者のコメント。

少し材料が多いです。自立語が「白湯」「飲む」「今朝」「堀」「街」「入彼岸」と六個もあります。それぞれの言葉に優先順位をつけて、材料を減らしてみましょう。基本的には、季語に加えて、あと一つか二つの材料にするのが、俳句としてはゆったりと書ける分量です。
“ポイント”

季重なり

白壁のヤモリ動かぬ夏の午後

社いずみ

夏井いつき先生より
「最近の酷暑は人間だけでなく、ヤモリも動けぬほどなのだろうな。助詞を『の』か『に』か、悩みました」と作者のコメント。

「ヤモリ」=「守宮」、「夏」それぞれ季語ですね。兼題写真が白壁だからといって、「白壁」に拘る必要もありませんよ。写真は、発想のジャンピングボードです。
“ポイント”

夏闇やヰタに添ふ言の逍遥

石塚壜太呂

夏井いつき先生より
「津和野出身の森鴎外の作品『ヰタ・セクスアリス』のヰタ(人生)。自身が語れる人生はどんな人生か、そんなヰタに添う言葉を探しながら夏闇の道を思索しながら歩くという意味と、思索の道(逍遥)を坪内逍遥に掛け、没理想論争を展開した鴎外と逍遥という文学的な関係性、また明治という時代や、作品『ヰタ・セクスアリス』のイメージにもつながる夏闇という二つ目の意味も含ませた句にしてみました」と作者のコメント。

たった十七音に入れるには、句材が壮大すぎます。いつか、このような句材を詠み込める俳筋力を持てる日が来るかもしれませんが、まずは、身の回りのささやかな描写から練習を始めましょう。
“ポイント”

黒堀に空揺れやまず緋鯉かな

藤井士南樹

夏井いつき先生より
「に」という助詞、「かな」という切れ字が、作者の意図通りに使われているのか。少し疑問に感じました。
“ポイント”

白虎隊や城下の石垣苔の花

紫風

夏井いつき先生より
「子供の頃に読んだ白虎隊の物語は、自刃した少年たちと同じ年頃だったこともあり、深い悲しみとして心に残りました。高校生の頃に訪れた会津若松は、まだ鶴ヶ城も復元されておらず、観光施設も整っていませんでした。町そのものが落ち着いた旧城下町の印象で、古い石垣が苔むしていました」と作者のコメント。

〈白虎隊や/城下の石垣/苔の花〉それぞれ斜め線の部分に詠嘆や意味の切れ目があるため、三段切れになっています。「白虎隊」への思いから、自身が歩いた町の光景までを一句に入れるのは、無理があります。まずは、「高校生の頃に訪れた会津若松」の光景を描写するところから始めてみましょう。
“ポイント”

うららかやすし屋の根付きアジフライ

和田ひろし

夏井いつき先生より
「小田原を小旅行した時のことを詠みました。寿司屋に入ったところ、『根付きアジ』というブランドアジを使ったアジフライがあるということでした。『すし屋』とひらがな表記に、『アジフライ』とカタカナ表記にすることで、鮓や鰺の季語としての鮮度を下げたつもりです」と作者のコメント。

「鮓や鰺の季語としての鮮度を下げたつもり」との配慮は分かりますが、「すし屋」「アジフライ」と食べ物に関する言葉が二つ入ると、互いを殺しあいます。
“ポイント”

江戸の春ゆらりゆらりと隅田川

多聞

夏井いつき先生より
「都内で江戸情緒が最も感じられるのは浅草、両国、向島あたり。中でもシンボルで、昔も変わらないのは隅田川でしょう。対岸よりのんびりと眺めて、昔を想像して詠みました」と作者のコメント。

「江戸」「隅田川」と地名が二つ入るのは、少々損かと。どちらか一つにして、全体を整えてみましょう。
“ポイント”

白壁に影をとらわれ花菖蒲

森野みつき

夏井いつき先生より
「なんで覚えられないのでしょう? 花菖蒲・あやめ・杜若との違いを毎年調べています。それで兼題写真は花菖蒲ですよね? 組長は句が佳ければなんだっていいよと仰ると思いますが。『貼りつく影や』と迷いました。今の心情で決めました」と作者のコメント。

私も毎年のように「花菖蒲・あやめ・杜若」の違いを調べ、毎年のように「なんで覚えられないんだろう」と思っています。
さて、「貼りつく影や」との違いですが、こちらの場合は「や」で意味も切れますから、この影を人影と読まれる可能性が高くなります。それに対して、〈白壁に影をとらわれ花菖蒲〉の場合は意味が繋がっていますから、花菖蒲の影だと読めます。作者ご自身が表現したかったのはどちらでしょう。
“ポイント”

右の背にAの文字あり錦鯉

胡麻栞

夏井いつき先生より
上五中七「右の背にAの文字あり」は、着ているもののデザイン? 「錦鯉」にそんな模様が? どちらなのか、分かるように書きたいですね。
“ポイント”

おさかなのねているじかん春祭

小川晴よ

夏井いつき先生より
上五中七は面白いフレーズですが、季語は動きそうです。
“ポイント”