写真de俳句の結果発表

第67回「城下町の白壁」《ハシ坊と学ぼう!⑪》

ハシ坊 NEW

城下町の白壁

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

花衣姫となる娘ら古都に映え

三毛

夏井いつき先生より
着地部分の「~に映え」は、書かなくてもよい説明です。俳句における着地は大切です。
“ポイント”

空蝉の爪立て白壁を刺す

岳陽

夏井いつき先生より
目のつけどころ、良いですね。惜しいのは、着地部分。「空蝉の爪立て」と「白壁」で、その様子は描写できてますので、最後に「~を刺す」と書く必要はありません。むしろ、蛇足になっています。
“ポイント”

斑雪野や思い溢るるラストラン

秋月あさひ

夏井いつき先生より
「2026年3月31日に留萌本線が廃止されました」と作者のコメント。

「ラストラン」の一語があれば、「思い溢るる」は不要ですね。
“ポイント”

五加木摘む米沢の里山暮れぬ

渡海灯子

夏井いつき先生より
「米沢では、上杉鷹山公がウコギの垣根を奨励したことから、今でもその垣根の新芽を摘み食するという文化があります。他所の人からは、垣根をたべるんかい! と突っ込みが入りそうですが、質素倹約の鷹山公の教えを大切にしている城下町の食文化です」と作者のコメント。

なるほど、米沢とはそんなお城下なのですね。惜しいのは一点のみ。中七が「米沢の里」ですので、下五で「山~」がでてくるのが、ちょっと損。下五の着地次第では、まだ化ける素材です。
“ポイント”

口実は貌のうはずみ花菖蒲

草夕感じ

夏井いつき先生より
惹かれる句です。が、中七の「貌」は何なのだろう。読みを迷いました。
“参った”

記念樹の百日紅坐す五十年

ふく

夏井いつき先生より
「〈青空や百日紅の紅濃かりけり〉→〈百日紅日増しに紅を蓄えし〉の更なる推敲です。私の卒業時に植樹された百日紅が、毎年咲く様子を詠みました」と作者のコメント。

「坐す」という言葉をどうしてもいれたいのなら、以下の語順にすべきでしょう。

添削例
五十年坐す記念樹の百日紅
“良き”

春日向逆さ石垣姫路城

肴 枝豆

夏井いつき先生より
「春の穏やかな日に、姫路城の堀の水面が鏡のように穏やかでお城を映し出している。そんな情景を詠みました」と作者のコメント。

作者が意図した映像を描くのならば、季語は一考の余地があります。
“ポイント”

三尺寝の駱駝見てゐる華胥の夢

氷雪

夏井いつき先生より
第64回『砂漠のホテル』に投句した〈華胥の国より帰りたくない駱駝かな〉の季語をあれこれ考えて、こうなりました」と作者のコメント。

なるほど、こうなってくると、「三尺寝の駱駝」に対しては「~見てゐる」は不要です。「夢」は見るものですからね。
“ポイント”

水も羽生やすたとえば花菖蒲

馬場めばる

夏井いつき先生より
「兼題写真をじーっと見ていて、花菖蒲と水の距離感の近さに目が留まり、そこの関係性を句にできないかとさらに見つめていると、花菖蒲の形が羽のようだと感じました。そしてそれは、水が意志を持って、羽を持とうとした一つの結果のように思えましたので、そのまま句にしました」と作者のコメント。

発想は良いですね。「も」「たとえば」、これらの言葉が生かしきれているのか否か、再考してみましょう。
“ポイント”

水面とは空の底なり花菖蒲

真夏の雪だるま

夏井いつき先生より
「鏡面のように空を映した水面から花菖蒲が生えている美しさを切り取りたいと思い、空と池の境目は水面であり、水面とは空の底ではないか、空の底から花菖蒲が生えているのではないかと考え、詠みました」と作者のコメント。

水面は空の底であるという詩的認識はよいですね。「~とは」が少々理屈っぽいので、そこは一考の余地があります。
“ポイント”

我の見た緋鯉は渓流の奇跡

西山

夏井いつき先生より
「子供の頃、渓流で遊んでいた時に大きな錦鯉が泳ぐのを見ました。こんなに大きくなるまでよく生き延びたものだと、子供心に感心したことを思い出して詠みました」と作者のコメント。

見たからこの俳句になっているので、「我の見た」と書く必要はありません。むしろ、その「緋鯉」の大きさを描写しましょう。それができれば、「奇跡」と説明しなくても、読者にはその大きさが伝わります。
“ポイント”

平城京白壁みじかたんぽぽや

いちの

夏井いつき先生より
下五「~や」という着地は、バランスの取りにくい難しい型です。それぞれの単語に優先順位をつけて、どれか一つ外してから、語順を再考して下さい。
“ポイント”

京大根や表格子に弾痕

窓 美月

夏井いつき先生より
「京都の伏見に泊まった時、京野菜の美味しさに感動しました。中でも聖護院大根が美味しかったです。伏見観光では、鳥羽伏見の戦いの時の弾痕を見てきました」と作者のコメント。

「京大根や」と詠嘆している時空間と、「表格子に弾痕」を見ている時空間に距離があるので、読者はこの取り合わせに困惑します。まずは、「京野菜の美味しさに感動しました。中でも聖護院大根が美味しかった」という経験で一句。更に、「鳥羽伏見の戦いの時の弾痕を見て」で一句。それぞれを切り離して、俳句にしてみましょう。
“ポイント”

西南戦弾痕壁に南州忌

南の爺さま

夏井いつき先生より
「城壁に今も残っている弾痕、戦いの凄まじさと西郷の無念さを想います」と作者のコメント。

歴史に句材を求める時、事実をそのまま記述するに終わりがちです。以下二点について考えてみましょう。
①「壁に残った弾痕」を映像として描くのならば、季語は「南州忌」=西郷隆盛の亡くなった日、ではなく、西南戦争のあった地を想像させる季語を取り合わせる。
②「南州忌」を使いたいのならば、「西南戦弾痕壁」のように直接的なモノを取り合わせるのではなく、少し離したモノを取り合わせて、西南戦に思いをはせる。
“ポイント”

陽炎や雲に途絶えぬ石畳

軽時計

夏井いつき先生より
「雲に途絶え」てしまったのは「陽炎」ですか? はるかに続いている「石畳」が雲に途絶えた、と感じられた? 読みを迷います。 
“ポイント”

白壁に凜と向き合ふ花菖蒲

雀子

夏井いつき先生より
「白壁」と「花菖蒲」、この二つの何が、作者である貴方に「凜と向き合ふ」と感じさせたのでしょう。そこを自問自答していくところから、推敲は始まります。
“ポイント”

理科の先生は殿の末裔花は葉に

茅々

夏井いつき先生より
「三戸城は戦国時代に北東北を統治した南部氏の本拠地。中学校の理科の南部先生はお殿様だと言われていました。容姿端麗。穏やかですが、中々笑顔は見たことはありませんでした」と作者のコメント。

エピソードが面白いのはいうまでもありません。調べがもたついているのが勿体ないですね。「理科の」という情報を諦めると簡単に整ってはくるのですが、作者としては拘りがあるのかも。
“ポイント”

小さき蛇内子座前に迷ひ出づ

すそのあや

夏井いつき先生より
「兼題写真から、真っ先に内子が浮かびました。もう何年も前ですが、友人のSNSの投稿に、内子座の前に蛇がいて、友人も写っているのを見て、戦慄したのを思い出して詠みました」と作者のコメント。

素材は良いですね。語順を再考してみましょう。佳句になりそうな予感がします。
“ポイント”