写真de俳句の結果発表

第67回「城下町の白壁」《ハシ坊と学ぼう!⑫》

ハシ坊 NEW

城下町の白壁

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

花菖蒲白壁の街津和野旅

朝夕人

夏井いつき先生より
「花菖蒲/白壁の街/津和野旅」と、斜め線のところで意味がブツブツ切れているのが気になります。
“ポイント”

春の鳶白壁まばゆし青空よ

ちえ湖

夏井いつき先生より
「春の鳶/白壁まばゆし/青空よ」と、斜め線の部分で意味がブツブツ切れています。中七が八音になっているのも、気になります。
“ポイント”

白壁の瓦の隙間蔦若葉

はっしん

夏井いつき先生より
「奈良の今井町に行った時の風景をそのまま詠んでみました。白壁『や』『と』『の』にするか散々迷いましたが、白壁の瓦の隙間、見たままにしました」と作者のコメント。

「白壁や」にすると、三段切れになるので、これはアウト。「白壁と」にすると、白壁と瓦の隙間部分を凝視するような感じになるので、この三択では「の」が無難です。ただ、上五中七で「隙間」をクローズアップすることで、季語が生きるのかどうか。少々悩ましい。
“ポイント”

金沢へ孫巣立つ日の春光や

文心美

夏井いつき先生より
下五の着地に「や」を使うのは、バランスの取りにくい難しい型です。語順を再考してみましょう。
“ポイント”

甥っ子のチャリカゴに鯉跳ねて春

若林くくな

夏井いつき先生より
「小学生の頃の甥っ子は本当にやんちゃで、私たちを驚かすエピソードがたくさんあります。この句もその一つ。家族で公園に行ったとき、ママがちょっと目を離した隙に、池に入って鯉を捕まえ、自転車のカゴに入れて持ち帰ろうとしていたそうです。ママを喜ばせたかったと。当然烈火のごとく怒られ、池に戻したそうです」と作者のコメント。

エピソードが面白いですね。「甥っ子」まで書くと、それだけで音数がいっぱいになってしまうので、思い切ってそこを省くのも一手です。
“参った”

爪を切る音や月夜の蔵の街

朝宮馨

夏井いつき先生より
「爪を切る音」は、屋内の映像だろうと読めますので、後半「月夜の蔵の街」と光景が広がり過ぎるのが、気になります。
“ポイント”

白壁の眩しかりをる夏に入る

甲斐杓子

夏井いつき先生より
「白壁の白が日を跳ね返し、眩しすぎて手をかざすほどになって、ついこの前まで寒い寒い言ってたのに、夏になってきたのかと思ったことを詠んでみました」と作者のコメント。

「眩しかり」は形容詞の補助活用。この後は、助動詞がくるべきですが、「をる」(動詞「をり」の連体形)になっています。何か、別の助動詞にしても良いのですが、この場合でしたら、「白壁の眩し」と終止形で言い切って、余った音数で季語「夏に入る」が更に鮮やかになるような工夫をしてみることをオススメします。
“ポイント”

水温む千余の鯉の戻りをり

沖庭乃剛也

夏井いつき先生より
「飛騨古川町の瀬戸川では、冬季は流雪溝として利用される為、用水路に放流されている鯉たちは、冬の間近くの池に移されます。毎年四月四日頃に行われる【およそ千匹の鯉を瀬戸川に引っ越しさせる行事】は、白壁土蔵街を彩る春の風物詩となっています」と作者のコメント。

まさに春の風物詩ですね。下五「戻りをり」は、鯉が勝手に戻ってくる印象ですが、実際は「引っ越しさせる行事」なのですね。「戻る」ではなく、「戻す」ということが書けると、この行事の様子がありありと見えてくるのではないかと。佳句になりそうな予感がします。再考に期待。
“ポイント”

春灯行く起こし太鼓を遠く聞く

穂々々

夏井いつき先生より
「春灯」の町を歩いている? 「春灯」が動いている? そのあたりを明確に書けるとよいのですが。
“ポイント”

お堀めぐり薫風に乗りバターの香

さくさく菫

夏井いつき先生より
俳句は、季語とあと一つ要素があれば、十七音としてちょうど良い分量。例えば、「お堀めぐり」と「薫風」、「バターの香」と「薫風」という具合に、二句に分けて書いてみましょう。
“ポイント”

堀割の緋鯉カノンに綾を成し

直感勝負

夏井いつき先生より
「兼題写真を見て、五十年前に行った津和野の堀割の映像(緋鯉達の乱舞、様々な色が織りなす)が、フラッシュバックのように蘇ってきました」と作者のコメント。

下五「綾を成し」と書きたいお気持ちは分かるのですが、これは一種の感想です。俳句は描写ですよ。
“ポイント”

春の雲映す水路に鯉の口

まどれ

夏井いつき先生より
「水路に映る雲をつつく様に、鯉が口をパクパクしていました。透明度の高い水路でした」と作者のコメント。

「映す」の一語はなくても、映っているのだろうと読ませることは可能です。

添削例
鯉の口ぱくぱく水路に春の雲
“ポイント”

小田原やコスプレ集ひて春の陣

ゆいか

夏井いつき先生より
中七は極力七音にととのえるのが定石です。簡単な解決方法は、「コスプレ集ふ」とすることですが、下五が「春の陣」ですから「集ふ」が必要かどうかも含めて、再考してみましょう。
“ポイント”

一片の漂う雲や花菖蒲

生石子

夏井いつき先生より
「一片の雲や」とすれば、十分に漂っています。
“ポイント”

白壁や陽のほどけゆくあやめかな

静岩

夏井いつき先生より
「や」「かな」と切字が二つ入ると、感動の焦点がブレるということで嫌われます。
“ポイント”

海鼠壁撫でて和らぐ涅槃西

天弓

夏井いつき先生より
「春の陽に温められた海鼠壁(なまこかべ)を風がなでていくたび、温もりを含んだやさしい風になるような気がします」と作者のコメント。

季語「ねはんにし」は「涅槃西風」と書くべきでしょう。中七の「和らぐ」は、描写というよりは感想。中七は再考の余地があります。 
“ポイント”

春の風鉄筋きしみて鳴る現場

奥山水珠

夏井いつき先生より
中七下五は、「鉄筋軋み鳴る現場」とすれば、緊迫感がでます。上五は、もう少し強い感じにできるといいですね。
“ポイント”

天守なき野面積みへの花吹雪

三日余子

夏井いつき先生より
「先月、大河ドラマで注目されている奈良の大和郡山城に行きました。築城時、石垣の石を集めるのが大変だったと聞いており、これに桜が舞っているのに心を動かされて詠みました」と作者のコメント。

語順を逆にした方が効果的でしょう。ひとまずは、以下の二択を考えてみましょう。
①「花吹雪○○天守なき野面積み」として、二音を工夫する。
②季語を「落花」としてその激しさを、前半で描写する。
“ポイント”

短夜や三味線の音静まりぬ

紫子

夏井いつき先生より
「夏になると夜が短くなり、早く夜が明けてしまう残念な気持ちが、この句に表れているでしょうか?」と作者のコメント。

「三味線」ですから「音(おと)」と読ませるより、「三味線の音(ね)の」として下五に意味を繋げていくのが、この場合は得策でしょう。下五は更に描写のニュアンスを工夫できそうです。
“ポイント”