俳句ラボの結果発表

第2回 俳句ラボ テーマ×季語で一句|鍵 ×メロン②

俳句ラボ NEW

俳句ラボへようこそ

皆さんようこそ、俳句ラボへ。
各回に提示されるテーマと季語の発想をかけ算して俳句を生み出す研究所です。
組み合わせからどんな化学反応が起こるかは、あなた次第。
さぁ、実験を始めましょう。

第2回のお題

 
テーマ
×
季語
メロン
 

輝ける「メロン」のフラスコ

 

のなき昼やメロンは滴りて

ちょうさん

メロン喰らう一人暮らしの初日の夜

伊達紫檀

「メロン」という季語の本意のひとつはみずみずしさ。滴るほどの甘い果汁をすすりつつ食べるメロンほど美味なものはありません。まずは存分にメロンを堪能してる二名に輝ける「メロン」のフラスコの称号を贈ります。

《ちょうさん》さんは八音+九音の句跨りの型。「鍵のなき昼や」は読みに一瞬迷いますが、後半の「メロンは滴りて」の充足感と釣り合いをとるなら、鍵をかけずに過ごす昼、といった意味で解釈しました。仮に、鍵をなくしちゃって困った昼時、みたいな意味だとメロンのなにが、なぜ滴っているのか、謎の分量が増えすぎちゃいますからね。

《伊達紫檀》さんは一人暮らしの自由を満喫してる姿に大いに共感! 実家を出た学生あるいは新社会人か、単身赴任の人の姿か。今までは絶対に一人占めなんてできなかったメロンを丸々一玉喰らう! 前にした者を恍惚とさせる、まっぷたつに切ったメロンの断面が想像されて、実に美味しそう。

ポイント

束をくわえメロンを解放す

森野みつき

なんで鍵束をくわえているのか? お行儀の良い人には「?」かもしれませんねえ。ワタシャがさつな人間なのでわかりますぜ、ガハハ。高級なメロン、だいじなだいじなメロン。落とさないようしっかり両手で抱えているのです。手に鍵なんて持ってる場合じゃないんですよ。手がふさがってるなら口に鍵束くわえてでもとりあえず運べばいいんです。置いたメロンが転がって落ちないような、安全な場所。そこまで運んで、ようやくそっとメロンを解放するのです。そっと手を放す手つきや、置いたあとも一瞬安定しているかを確かめる息遣いのようなものが「解放す」の余韻から伝わってリアル。

良き

メロン園さぞかし美味し鉄の

老蘇Y

輝ける「鍵」のフラスコで紹介した二句〈ひえびえとメロン畑の南京錠    くさもち〉〈メロン熟る南京錠の鈍き金    夏村波瑠〉と比較したいのはこちらの句。どの句もメロンを守っている鍵の存在を描いているのですが、なぜ老蘇Yさんの句だけ鍵でなくメロンのジャンルに分類されているのか?

それは句の重心がどこにあるのかの差なのです。

三句を比較すると、《老蘇Y》さんが特徴的なのは中七「さぞかし美味し」という主観。これによって鍵の姿に焦点を合わせた《くさもち》さん・《夏村波瑠》さんとの差別化がされているのです。しかも「美味かろう」みたいな推量ではなく「美味し」と終止形で言い切っているのが強い確信、あるいは味をすでに知っている、といった事情を察させます。それなら農園の人間か(?)とも思うのですが、「鉄の鍵」という着地がその予想にも疑問を投げかけます。そっけない「鉄」の質感、わざわざ材質を確認するかのような下五の展開は、まるでメロン泥棒が壊せる鍵かを確認している姿のように思えるのは僕の邪推だろうか……? 封鎖された視線の先にある宝の山のような「メロン園」がじっとりと心を惹きつけてやみません。夏の熟れた空気の中にメロンの甘い香りが混じりあっているならなおのこと。

“難しい”

参謀に持って行かせるメロンです

高橋寅次

俳諧味のある口語俳句。「です」って淡々と終わられても……と苦笑いしつつ、妙に魅力があるんだよなあ。その原因になっているのが「参謀」って人物設定。参謀に「持って行かせる」なんて言えるのはその上の人間、ボスしかいないでしょうよ。ボス直々に行くよりも参謀の方がバランス感覚を持って交渉できるタイプの人なんだろうなあ。そういう人が慕うタイプのボスはボスで魅力的な人なんだろうけど、適材適所ってやつですね。きっと等級やら包装やら丁寧に気遣われた「メロン」が用意されるのでしょう。高級さや礼節を示す場面で重宝されるのもメロンという季語の持つ要素の一つでありますなあ。

良き

メロン」の試験管

鍵穴を直した夫よメロン召せ

牛乳符鈴

鍵穴にオイル私にマスクメロン

宙海(そおら)

合鍵やメロンはかぶりつくものだ

うーみん

通夜明けの宅配ボックスのメロン

苔間きい

ひきこもる部屋に過熟のメロンの香

えみり

鍵っ子へぱつんぱつんのメロン買う

五七五 八一九

種未だ門外不出なるメロン

秋月あさひ

メロン買おう鍵をポストに返したら

小鳥遊

メロン買おうロッカーの鍵返したら

蜘蛛野澄香

桐箱の箱入り娘めくメロン

鹿達熊夜

何度目のドロケイ学童のメロン

咲葉

十五歳メロン厚めにドアの前

大森 きなこ

縁側にメロンの甘さ墓じまい

尾長玲佳

施錠よしメロンの網目なでる夜

藤富うに

鍵解きてみっしりメロン香の厚く

めがね一船

唾つけといたからな最後のメロン

一哩

宝箱の鍵は包丁メロン切る

けーい〇

鍵屋待つ箱入りメロン提げたまま

東田 一鮎

受付へ託すメロンや隔離棟

深山むらさき

シャトレーヌしやらんメロンを一掬ひ

木ぼこやしき

鍵穴をほじくるやうに吸ふメロン

むらのたんぽぽ

ひとくちの秘密とメロン飲みこめば

ほうちゃん

鍵隠しメロンに注ぐブランデー

どこにでもいる田中

鍵かけたメロン二人で食べちゃおう

陽光樹

鍵がないメロンがやけに水っぽい

ノセミコ

来た!と小さく叫ぶメロンの宅配便

海月のあさ

かぎ編みのごとくメロンの皮あつし

ときちゅら

懐柔や風呂敷包みからメロン

横山雑煮

マスクメロン和解の小さき鍵として

池田義昭

爛熟の気配や置き配のメロン

細葉海蘭

《③に続く》