俳句ラボの結果発表

第3回 俳句ラボ テーマ×季語で一句|皿 ×金魚②

俳句ラボ NEW

俳句ラボへようこそ

皆さんようこそ、俳句ラボへ。
各回に提示されるテーマと季語の発想をかけ算して俳句を生み出す研究所です。
組み合わせからどんな化学反応が起こるかは、あなた次第。
さぁ、実験を始めましょう。

第3回のお題

 
テーマ
×
季語
金魚
 

輝ける「金魚」のフラスコ

 

ひかりいま金魚の鰭に割るる音

岸来夢

金魚の鰭に焦点を絞った一物仕立て。「ひかり」という抽象語を嫌う人もいるかもしれませんが、個人的には「金魚」という生物の動きを捉える言葉としては十分機能していると考えます。一物仕立ては対象への興味と観察眼があって初めて成功する型です。金魚の鰭は、竹の節に似た骨組と、その間を張る薄い膜でできています。「金魚の鰭に割るる音」はこの膜の部分をじっと観察した結果生まれた言葉なんじゃないかなあ。実際には音が聞こえるわけではないんだけど、目の前で金魚の鰭が翻った一瞬、さっきとは違ったひかり具合で見えた鰭の形、それを作者の詩性は「音」に変換して受け取ったのでしょう。

……と、褒めてきたんだけど、「皿」というテーマの扱いは希薄といえば希薄。まあ、大きなお皿に水を湛えて飼ってると考えればギリOKか?

良き

割る音や鉢を三周する金魚

ぜのふるうと

慌てふためく金魚の姿がかわいい。金魚を飼った記憶がもはや遠い昔で定かではないんだけど、いつきさん家のメダカたちは大きな音がすると逃げ惑うから、金魚たちもアワアワするのかな? 「三周」という具体的な数詞にリアリティがありますねえ。音数を数えると字余りなんだけど、かといって五七五の韻律に合わせるために「皿割るや」としてしまうと、割るという行為に焦点が当たってしまい、金魚を三周させる原因となった「音」の印象が弱くなってしまいます。自分の表現したい内容に合わせた、意図的な字余りだと考えたいですね。

ポイント

屋敷暗くふくらむ金魚かな

葦屋蛙城

屋敷金魚は知らぬ己が瘤

よはく

屋敷数えきれないほど金魚

沢 唯果

「金魚」と「皿屋敷」の取り合わせがちょこちょこあったので代表三句。有名な皿屋敷の怪談からの発想なんだろうけど、どれも金魚との取り合わせに絶妙な怖さがあって響きますねえ。《葦屋蛙城》さんと《よはく》さんは、瘤をはじめに金魚の姿かたちがふくらんでいくような不気味さだけど、《沢 唯果》さんは金魚の集団全体が膨張していくかのようで、ここにも数量で語る迫力ってものがあります。

“難しい”

河童忌のカフェの和蘭陀獅子頭

竹田むべ

カフェなら皿もあるでしょうし、金魚だって飼ってるかもねえ。「和蘭陀獅子頭」は金魚の傍題。個別の品種の名で、頭に大きな瘤を持っているのが特徴です。芥川龍之介の忌日である「河童忌」も季語ですが、忌日の季語は季重なりを許容しやすいのに加え、インパクトの強い「和蘭陀獅子頭」の映像を結びの言葉に持ってきているのも、金魚を主たる季語として据えるバランシングといえるでしょう。「河童忌」「カフェ」「獅子頭(ししがしら)」とカ音での韻にも詩を発生させるための心遣いが行き届いています。

良き

指輪外す浅きところを金魚金魚

常磐はぜ

若干読みに迷う句ではあるのですが「浅きところを金魚金魚」に描写を頑張ろうとしている意思を感じ取り、金魚のフラスコに選びました。「金魚金魚」のリフレインは複数の金魚がかわるがわる翻る様を想像させます。気になっているのは「浅きところ」。金魚鉢や水槽の水面付近を行き交っていると考えるか、より大きい、小さな造り池みたいなものを想像しても良いものか。後者だとしたら料亭とか気の利いた蕎麦屋みたいな場所でしょうかね。……しかしながら、中七下五の光景が変わってくると、「指輪外す」の読みも連動して変わっていきます。前者なら家でリラックスして指輪を外してるのか、と自然に納得できますが、後者だとなぜわざわざ外で指輪を? って思いもなきにしもあらず。離婚協議とかかなあ……。

ポイント

金魚」の試験管

金魚へと降らす餌追うでめとでめ

暮待あつんこ

欠け丼に琉金丸く転覆す

佐々木棗

浅き水によじれてゆるる金魚かな

藤富うに

カレー皿ほどに金魚の育ちをり

千葉水路

ランチする喫茶や金魚茜色

海雪

雨上がりぽいに逆らう金魚の尾

横田行雲

放たれて琉金の尾のたおやかさ

心の美月

水晶のさざれに浄化する金魚

留辺蘂子

鬼の子が手皿で遊ぶ金魚の田

京あられ

豆皿に描くよ私の金魚たち

城ヶ崎文椛

水替えの皿に金魚のなまめきて

ぷるうと

大皿に金魚百匹犇めけり

山川腎茶

紙皿へ移し金魚のお葬式

にゃん

金魚二匹のポイの撓みを椀にあけ

玉響雷子

目が皿になるやオランダ獅子頭

日進のミトコンドリア

皿饂飩絶品金魚二尾巨大

山姥和

琉金やパレットに溶く夜のいろ

骨のほーの

神饌や水漬く金魚の鰭ひらら

舟端たま

金魚ゆらり辰砂に炎のなごり

青野みやび

皿を買い金魚ゆらゆら見て帰る

砂月みれい

膝の皿撫でて金魚に餌を散らす

水須ぽっぽ

金魚にも個性あるとは皿洗ふ

壱時

深皿の金魚の影や青白き

一井かおり

ミッフィーの皿へ金魚の掬いすぎ

真夏の雪だるま

金魚浮く痴呆の母の投げる皿

ちょくる

豆皿に掬ふ金魚の思色

源早苗

金魚掬ふ大地に膝の皿付けて

蜘蛛野澄香

羽衣てふ金魚は柿右衛門の赤

二城ひかる

《③に続く》