写真de俳句の結果発表

【第1回 写真de俳句】《天》

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

第1回写真de俳句 天
飼育小屋まで朝霧をさ迷えり  ふるてい

〈始めに〉で解説した発想方法を例にとると、B→C→Dの方向で想像を広げています。

 A  写真を見ていない人の脳内に、写真と全く同じ光景を再生させる。
 B  切り取られた写真の外を想像する。[どんな光景が広がっているのか。どんな人がいるのか。どんなモノがあるか、等]
 C  写真の光景の時間軸を動かしてみる[夜になればどうなるか。朝になればどうなるか、等]
 D  自分が写真の中にいたら、どんな行動をとるだろう。

このベンチの周りには何があるのだろう。「飼育小屋」があるかもしれない。この写真が未明の頃であれば「朝霧」に包まれるのではないか。そこにいる自分は「飼育小屋」に行くのにも方向を失ってしまうのではないか……という具合に、脳内からリアルな体験を引き出しているのです。

「飼育小屋」で飼われているのは、小鳥でしょうか、兎でしょうか。庭のどのあたりに「飼育小屋」があるかは知っているのに、今朝の「朝霧」は殊に深いのです。「霧」に包まれると、いつもの風景が全く違ったものに見えます。異界を「さ迷」っているかのような不思議な感覚に囚われるのです。

やりようによっては、「~まで~を」という叙述は散文的になりますし、下五「さ迷えり」も大げさな表現に感じられるのですが、それらの言葉が微妙なバランスを取りつつ、季語「朝霧」の深さ、手触り、作者の心理などを伝えます。作者自身の「朝霧」の体験がリアリティをもった表現として結球しているのです。

「朝霧」が晴れた庭には、写真のベンチがいつものようにあり、「飼育小屋」も日常通りの明るさに包まれます。「朝霧」のあの時間はまるで虚構の世界であったかのように、作者の心に静かにたたまれていくのでしょう。

“夏井いつき”