【第2回 写真de俳句】《ハシ坊と学ぼう!②》

評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
人参や万年筆で文を書く
亀田かつおぶし
「人参」との取り合わせとして、「万年筆」は面白いと思います。「~で文を書く」の部分、要一考です。


落葉焚くセピア色したラブレター
信茶
「セピア色」はちょっとありがち。「落葉焚く」と「ラブレター」で十二分にセピア色っぽい世界が描けていますので。


段ボール橇遊んだ土手に枯草群れ
つづきののんき
「遊んだ」か「土手に」か、どちらかは不要でしょう。


テレビ電話越しのオーロラや荒き
背番号7
「無季になるんですかね?」との作者からの質問も。
「オーロラ」は、季語になってると思いますよ。歳時記によって差異がありますので、いくつかの歳時記を調べてみて下さい。むしろ、全体の調べがギクシャクしていることのほうが気になります。


天国に手紙届くや秋の蝶
夏埜さゆり女
「最近愛猫を亡くしたばかりで、天国の彼女へ思いを伝えられたらいいのに、と思います」と作者のコメント。
天国にいるのが「愛猫」だと分かるように工夫が欲しいです。


クリスマスカードを選ぶ至福かな
玉井令子
下五「至福かな」は要一考。上五中七のなかに、その思いは充分入ってます。


海辺のマラソンどこまでも青空
直
「『マラソン』は冬の季語かと思っていたら、季語ではないのですね。そういえば、金子兜太の爆心地のマラソンは夏の印象……どこまでも青空を使いたかったので、今回はあえて無季の句とします」と作者のコメント。


海辺のマラソンどこまでも冬青空
直
「一句目の無季の句、やっぱり『冬青空』に訂正します。字余りになりますが、マラソンの長い行程に合うかと思いなおしました。また、冬青空の方が空気がつんと澄んで気持ち良く感じられます。こんな投句の仕方でも良いのでしょうか?」との追加コメント。
訂正したことが分かるように書いて下されば、OKですよ。そして、貴方の判断に賛成します。


あわだちそう大国ゆれん郵便票
野山遊
アメリカの大統領選を「あわだちそう」で表現したのですね。ならば、
添削例
あわだちそう大国揺れる郵便票
と、普通に書いたほうが分かりやすいかと思います。


長き夜開票未だか激戦州
蒼求
「郵便ポストから、最近行われたアメリカ大統領選の郵便投票の開票に発想を飛ばしました。明暗を分けるカギを握っていた郵便投票の開票は昼夜を問わず何日も続き、特に激戦州での結果は国内外から注目され、私も、未だか未だかと夜も寝られないほど結果を待ちあぐねました」と作者のコメント。


長き夜や開票未だか激戦州
蒼求
「一句目の『長き夜開票未だか激戦州』の句を投稿してから、「長き夜」を「ながきよ」とし「や」で切って強調した方がよかったかもしれないと思いました。こういう形で投稿するのはルール違反であれば大変申し訳ありません。どうぞご叱咤ください。前句同様、昼夜を問わず何日も続いたアメリカ大統領選のカギを握る郵便投票の開票の結果、特に激戦州での結果を、未だか未だかと夜も寝られないほど待った経験を詠んだ句です」との追加コメントも。
「や」で強調するという判断は正しいですね。一句がピリッとします。切れ字の効果ですね。「未だか」と意味は同じですが、「未(いま)だ」としてもよいかと思います。


地終わり海始まる岬秋便り
あすなろ子
「以前、高倉健さんのエッセイに、ポルトガルのロカ岬から大切な方にはがきを出したエピソードがあって、印象的だったので句にしました」と作者のコメント。
全体の調べがもたついているのが気になります。「ロカ岬」と固有名詞を入れるという選択肢も含めて、推敲してみましょう。


絵葉書はパウル・クレーや暮の秋
海峯企鵝
絵葉書にパウル・クレーや春を待つ
海峯企鵝
「ナチスの迫害を受けて不遇の晩年を送ったパウル・クレーの絵葉書を選んで春の到来を待ちわびる気持ちを詠みました」と作者のコメント。
ならば、二句のよいところをとってこんな感じはどうでしょう。
添削例
絵葉書はパウル・クレーや春待つ日


戦死せり伯父の手紙や小夜時雨
巴里乃嬬
「母が亡くなり、実家の整理をしておりました。仏壇の引き出しより、父の兄(本家の長男)が父(次男)宛てに出した手紙が見つかりました。母の納骨の際、その手紙を一緒に納めました。伯父はサイパンで戦死し、遺髪はもとより、何も戻りませんでした。伯父は外地に赴く前に、日本のどこかからこんな赤いポストへ父への手紙を投函したはずです」と作者のコメント。
問題点は、「戦死せり/伯父の手紙や/小夜時雨」と斜め線のところで、意味が切れていることです。俳句では、これを「三段切れ」と呼びます。対処法はカンタン。どこか一カ所を繋げたらいいだけ。
添削例
戦死せる伯父の手紙や小夜時雨


鳳仙花板書の隙の手紙かな
陽光
「授業中に友達に回す手紙はスリリングだった。しかし、大人になった今は、先生に隠れてやったつもりの事は、実はほとんどバレていたんだと知った。急ぎでもない、休み時間に話せばいい事なんだけど、何故か授業中にまわってくる手紙は、特別な感じがした」と作者のコメント。
下五「かな」の詠嘆は、あまり利いていません。この二音をうまく使って、推敲しましょう。


一礼し投函する人冬の朝
陽光
投函と黙礼の人冬の朝
陽光
「『投函し一礼する人冬の朝』の作り直し。中八の解消と、冷たい空気の中、投函する人の緊張感を表現したい」と作者のコメント。
「人」がいるのかどうか、一考して下さい。


宵の雪サンタへポスト変身す
熊縫まゆベア
宵の雪サンタになりたいポストあり
熊縫まゆベア
「一句目の『宵の雪サンタへポスト変身す』を推敲しました。ポストの赤からサンタを、同じ届けるお仕事をしているのでポストもサンタになりたいのでは、と想像しました。それぞれの最後の『変身す』『あり』が、何か違う気がしますが、言葉が見つかりませんし、五七五に収まりません」と作者のコメント。
発想が可愛くて好きです。「宵」という時間にこだわりがあるのでしょうか。口語で書いてみるのもありかな。
添削例
雪の夜のサンタになりたいポストです


豊の秋ぐりとぐらの切手を甥に
城ヶ崎由岐子
「郵便を出す時は切手選びも楽しみの一つ。今は『ぐりとぐら』の切手がお気に入りです」と作者のコメント。
「ぐりとぐらの切手」と「秋」の取り合わせで、充分勝負できそうです。「豊の~」と「甥に」が絶対に必要かどうか、自問自答してみて下さい。


灯台は丸ポスト越え刈田越え
吉村よし生
兼題写真を見ている私たちには、なんとなく意味は分かるのですが、この字面だけを見せられた人は「灯台」が動き出しているのか? と困惑するのでは、ないでしょうか。


出産に恐縮至極と父の文
風早 杏
「実の娘への手紙なんですが……」と作者のコメント。
季語がないのですが、素材は面白いです。前書きで「出産見舞い」としておいて、出産の頃の季語を取り合わせる手もありそうです。


赤ポスト木の葉舞い込む曲がり角
花弘
「舞い込む」は、「ポスト」の口から中に入るという意味? それとも「曲がり角」に木の葉が舞っているという意味? どちらを伝えたいのか、自問自答してみましょう。

