写真de俳句の結果発表

【第3回 写真de俳句】《ハシ坊と学ぼう!②》

第3回のお題「落ち葉・階段・猫」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

落書の猫三毛とせし柿落葉

城ヶ崎由岐子

夏井いつき先生より
「猫の落書きに柿落葉がひらり。まるで三毛猫のようになりました、という句です。意味が伝わるでしょうか……?」と作者のコメント。

うーむ、そういう意味を伝えたいのか……。ちょっと曖昧かなあ。「落書」の一語から、壁=垂直な面を思ってしまった人たちは、「柿落葉」は単純な取り合わせの季語だと受け止めてしまうでしょう。再考してみましょう。
“参った”

バンクシー真似て落書き冬林檎

天陽ゆう

バンクシーの赤い風船クリスマス

満る

バンクシー木枯らしに舞う赤風船

不二自然

夏井いつき先生より
「バンクシーの絵は落書きというより立派な芸術ですが、大きくは落書きの範疇に入るかと思いました。有名な『赤い風船に手を伸ばす少女』の印象的な赤い風船。この風船は希望の象徴であり反戦のメッセージが込められています。それが木枯らしに舞っている、ちょっと不安と希望が入り混じっている感じを詠みました」と不二自然さんのコメント。

「バンクシー」という言葉を入れた句は、今回沢山ありました。特に「赤い風船」や赤いモノを配した句が多かったな。参考にしてもらいたいのは、《⑦パパ》さんの作品。いずれ掲載されます。お楽しみに♪
“ポイント”

バンクシーの絵は落書きか雪眼鏡

すみれ

夏井いつき先生より
「見る人によってアートにも落書きにもなることが面白いと思うし、自分の目も物事の本質を見分けられるようになりたいと思いました」と作者のコメント。

この句になると、描写というよりは、問いかけ。「雪眼鏡」も季語というよりは、寓意となっているようにも読めます。
“難しい”

帰り待つ落書きに差す冬夕焼

千風もふ  (ちふもふ)

夏井いつき先生より
「子供の頃に祖母が買い物から帰ってくるのを、一人遊びながら待っていたのを思い出し作りました」と作者のコメント。

「差す」は不要です。俳句は十七音しかないので、たった二音の使い方が作品の成否を分けます。さあ、この二音をどう使うか。ここが勝負所です。
“激励”

「へのへの」で折れし枯れ枝暮れ早し

ツユマメ

夏井いつき先生より
「枯れ」と「暮れ早し」が、季節感として障ります。

添削例
「へのへの」で折れる棒きれ暮早し

こうしてくれると、間違いなく人選以上になってきます。
“良き”

足跡を残す裏道山茶花や

花弘

夏井いつき先生より
下五の「や」はとても難しいです。そして、そもそもこの「足跡」は自分のものですか、他人?それとも生き物? そこも含めて推敲してみましょう。
“参った”

木の葉掃く始業せっせと散る木の葉

谷山みつこ

夏井いつき先生より
「『落葉掃く始業せっせとまた落葉』の推敲です。この時期、勤務先の店の、駐車場の掃き掃除は街路樹の落葉との戦い。綺麗に掃いても数時間後には木の葉が舞ってます」と作者のコメント。

元の句のほうが、分かりやすいかと思います。さて、振り出しに戻りましたね。中七下五の描写を精査してみましょう。
“良き”

石段へ力尽きたる冬の蜂

ピアニシモ

夏井いつき先生より
「『石段に』や『石段の』では散文的になるかと思い、『石段へ』としました」と作者のコメント。

中七「尽きたる」は完了なので、力が今尽きたというニュアンス。となれば、方向を示す助詞「へ」ではなく、「に」になるでしょう。「石段へ」としたければ、

添削例
石段へ力尽きゆく冬の蜂

添削例
石段へ力尽きんと冬の蜂

こんな感じになるかなあ。さらに言うと、中七は写生ではなく、状況説明なので、ここを映像にできたら完璧です。「冬の蜂」の何かの様子が、この蜂は力が尽きそうだなと、思わせたのです。その映像を脳内でリプレイしてみましょう。
“ポイント”

黄落の石段駆け上がるペルシャ猫

ピアニシモ

夏井いつき先生より
「破調の字余りですが、リズム重視でお許し頂けるでしょうか? 長毛の優雅なペルシャ猫は黄落の石段にマッチしそうで」と作者のコメント。

好みの問題にもなりますが、「階」と書いて「かい」と読み、石段を意味する漢字もあります。
“良き”

くさめして猫を腕より放り投げ

春陽

夏井いつき先生より
ギャグ漫画みたいな一句。そこを狙っているのならばこのままでもいいんだけど、「~を腕より放り投げ」あたりの叙述が、ちょっと説明臭くも感じます。作者が何を狙っているかによって、目的地が変わるので、自問自答してみて下さい。
“難しい”

水涸れて水路の罅の散らばりぬ

古瀬まさあき

夏井いつき先生より
観察眼が優れています。ただ、作者ご自身も下五、迷っているに違いありません。もう一押しの描写力を望みたい。
“とてもいい”

冬林檎猫神様の踏絵かな

卯年のふみ

夏井いつき先生より
「写真から『猫神様の踏絵』というフレーズが出てきました。季語を悩みました。『冬蜂』や『寒椿』『日向ぼこ』など……」と作者のコメント。

「猫神様の踏絵」は確かに面白いフレーズです。「踏絵」は季語だけど、この場合は比喩ですから、気にすることはありません。が、「冬林檎」は明らかな選択ミス。さあ、歳時記をめくってみましょう。持久戦やね、いつか佳い季語に出会えます。
“難しい”

古釘の描く無限や冬日向

武井かま猫

かまいたち猫が狐となる刹那

武井かま猫

夏井いつき先生より
【一句目】「階段にサインのように描かれた落書き。子供の頃、地面に好きなものを好きなだけ描いていたのを思い出しました」
【二句目】「『かまいたち』と『狐』が季重なりになってしまいましたが、この落書きがどうにも狐か猫に見えてしまいました」と作者のコメント。

どちらの句も狙っているところが悪いわけではありません。が、「無限」「刹那」という抽象名詞に甘えています。ここが苦しい胸突き八丁。ここを抜けられると、次の青空が見えるのですよ♪
“とてもいい”

猫の上ふわりと落ち葉目で追って

大本千恵子

猫の目は落ち葉になるまで見届けて

大本千恵子

夏井いつき先生より
「落ち葉が集まるとふわふわで子供が遊んでいたり、猫の上に蒲団、のようだ。落書きの猫はずっとそこにいて、葉ができて色が変わって落ちるまでを見届けているのだな」と作者のコメント。

どちらの句も、生きている猫なのか、死んだ猫なのか、落書きの猫なのか、読み手はとても迷います。写真を見ていない人になったつもりで、自分の句の文字面を再確認してみましょう。
“激励”

猫が誘う桜落葉のラビリンス

眠 睡花

散紅葉ねこがいざなうラビリンス

眠 睡花

夏井いつき先生より
【一句目】「初めは『落葉ふみ』としていたのですが、『誘う』と重なると思って『桜落葉』にしました」
【二句目】「さらに訂正してみました」と作者のコメント。

それぞれ「誘う」「いざなう」の動詞は、どうしても必要ですか。
“激励”

鎌鼬ドラマのやうに待ち伏せる

江藤すをん

鎌鼬ドラマのやうに待ち伏せす

江藤すをん

夏井いつき先生より
【二句目】「一句目の『待ち伏せる』は俳句的には『伏せす』が正しいのかと悩みました」と作者のコメント。

口語で書きたいのなら「待ち伏せる」、文語にしたいのなら「待ち伏せす」です。俳句的に云々ではなく、内容によってどちらの文体を選ぶかも、表現意図の一部です。▶︎YouTube『夏井いつき俳句チャンネル』【文体と表記】で解説していますので、参考にして下さい。
“ポイント”

落書きの猫目印に芋煮会

木染湧水

夏井いつき先生より
「落書きの猫」が「目印」というシチュエーションは楽しいのですが、それが「芋煮会」となると、どういうこと? と思ってしまう。どうしても「芋煮会」じゃないとダメ?(笑)
“難しい”

終活の夕暮れ一息綿虫飛ぶ

歩一

夏井いつき先生より
「書類、本の整理に追われる終活の日暮れ、庭で一息つけば、前をよぎる綿虫に出会う」と作者のコメント。

「綿虫」に対して「飛ぶ」が必要かどうか。語順を変えると良さそうです。

添削例
終活の一息ゆふぐれの綿虫
“ポイント”

空つ風宮境内のおにごっこ

びんごおもて

着ぶくれの童や階段のグリコ

びんごおもて

夏井いつき先生より
「どちらも実体験で、子供会のボランティアで神社の掃除後のひととき」と作者のコメント。

「境内」とあれば「宮」はなくても想像できます。「階段のグリコ」ならば「童」と書かなくても、ほとんどの読者が子どもを思います。
“良き”

石段は不揃い冬に鰯雲

けーい〇

夏井いつき先生より
「季重なりに助詞の『に』とかなり実験的な事をしています。成功していればいいのですが……」と作者のコメント。

成功しているとは言い難い。この「に」は説明的。素直に「の」ではダメですか。その意図は?
“難しい”

階段憎し鶏すきの重き具材

秋野商人

夏井いつき先生より
「コロナで外食も控えており、毎日買い物をしているが、鍋の日は荷物が重くなってしまう。階段は辛いけど鍋を食べたい気持ちが勝つ」と作者のコメント。

「鶏すき」を季語としているのですね。「憎し」「重き」と書かずに、それを思わせることも可能。

添削例
鶏すきの具材よ長き階段よ
“ポイント”

足とられ冬猫笑う遊歩道

美翠

夏井いつき先生より
「冬猫」という季語の使い方はちょっと強引。いや、「足とられ冬」で切れるのかも? 以上のことをヒントに推敲してみましょう。ひょっとすると「遊歩道」の五音、あるいは「遊歩」の三音が不要になるかも。
“難しい”

ろう石で描くスイミー冬もみじ

日記

夏井いつき先生より
「スイミー」は物語の小さな魚ですね。ならば、季語は動きそうです。
“良き”

霧深し異国を歩むがの石段

紙風船

夏井いつき先生より
「霧深しの『し』は『し』で良いのか? 『き』にするべきか悩みました。『歩むがの』の『がの』は『ごと』と、どちらにすべきか迷いました」と作者のコメント。

中七は比喩なのですね。「霧深し」と「石段」の実景が分断されているので、分かりにくいのだろうと思われます。

添削例
霧深き石段異国歩むかに

「霧深き石段/異国歩むかに」斜め線のところに意味の切れ目がある、句またがりの型です。
“難しい”

時雨たり蝋石の猫涙顔

信壽

夏井いつき先生より
「アパートの占有路面に子供が蝋石で猫の絵を描いていました。とっても可愛らしかったのですが、急に雨が降ってきました。雨水に猫の絵は流されて涙顔になりました」と作者のコメント。

伝えたい内容は分かるのですが、「時雨れたので、蝋石が描いた猫が涙顔になりました」という散文の一行を削って、五七五に入れたタイプの句です。

添削例
蝋石の猫の涙や○○○○○

この後の季語を考えてみて下さい。
“ポイント”