写真de俳句の結果発表

【第3回 写真de俳句】《ハシ坊と学ぼう!③》

第3回のお題「落ち葉・階段・猫」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

神渡し大蛇のような木の根踏み

ありあり

神渡し大蛇のごとく木の根おり

ありあり

夏井いつき先生より
「二句目は、一句目『神渡し大蛇のような木の根踏み』と迷ったものです。山中でひとりきりの時に、神秘的な風が吹きました。心地よいようで恐ろしいような。五パターンぐらいできて、最後まで迷いました。推敲はとても難しいです」と作者のコメント。

推敲は、自分自身との対話です。自分はどんなニュアンスを表現したいのか。それを自分に問うて、その表現したかった内容に言葉を寄せていくのです。「山中でひとりきりの時に、神秘的な風が吹きました。心地よいようで恐ろしいような」という部分が、あなたの表現したい内容ですね。ならば、

添削例
神渡し大蛇のごとき木の根踏む

「ような」よりは「ごとき」のほうが力強く感じます。下五「踏み」と切れのない形にするよりは、「踏む」と自分の足の感覚をしっかりと述べたほうが、季語が生きると思いますが、作者本人の感覚は「(恐る恐る)踏み」なのかもしれません。
“ポイント”

冬の石段一段ごとに「がたつ小僧」

小川都

夏井いつき先生より
「信州松本地方では、いたずらする子を『がたっ小僧』と言います。"ごた"小僧とも言いますが、こちらのほうが愛情がこもっています。寒い冬、外で遊ぶには、石段は日当たりが良く暖かいです。いたずら小僧達が、石段の一段一段を自分の陣地として、落書きなどして遊んでいる様子をよみました」と作者のコメント。

方言を使った句は、それなりの持ち味が生まれます。問題なのは、その地方の人でないと意味が分からないということ。俳句では、前書き、あるいは後書きとして、言葉の意味を書き添えたりします。
この句の推敲のヒントは、上五中七がややもたついていること。「がたつ小僧」の位置を変えたほうが良いかと思います。私なら「がたつ小僧」から始めるな。
“参った”

午後五時の夕やけこやけ栗ごはん

もぐ

夏井いつき先生より
「夕やけ」は夏の季語、「栗ごはん」は秋の季語。もし、「午後五時の夕ゆけこやけ」がチャイムの音楽なら、それが分かるように書いてみましょう。そもそも「午後五時」が本当に必要かどうかから、考えてみて下さい。
“ポイント”

冬日和吸った畑を浴びる猫

みー

夏井いつき先生より
「吸った」「浴びる」どちらの動詞も必要ですか。
“難しい”

八手花落書き猫の消ゆ復路

衷子

夏井いつき先生より
「消ゆ」は終止形なので、ここで意味が切れますが、それでいいですか。
“良き”

ずつしりと日は暮れんとす冬館

はれまふよう

夏井いつき先生より
「冬の日没、洋館に西日が当たり建物や樹々の長い影ができています。寒々とした厳かな日の入りを迎えています」と作者のコメント。

このままでも形にはなっています。悩ましいのは、語順です。

添削例
冬館ずつしりと日は暮れんとす

たかが語順を替えただけですが、何が変化するのか。そこを分析してみましょう。
“参った”

凩やマリアの像にひざまつき

文女

夏井いつき先生より
「凩(こがらし)を感じる写真(画像)です。階段の上には教会が……」と作者のコメント。

「凩」と「マリア像」の取り合わせはよいです。下五は、いかにもという展開。もう一工夫欲しい。
“難しい”

ねこの絵踏まぬようかじかむつま先

あすかきょうか

かじかむつま先ねこの絵踏まぬよう

あすかきょうか

夏井いつき先生より
「語順迷う。文字数めちゃくちゃ(^^;」と作者のコメント。

口語で素直に書けばよいかも。

添削例
悴んだつま先ねこの絵踏まぬよう
“ポイント”

忠魂碑子猫寄り添う昼下がり

啓子

夏井いつき先生より
「忠魂碑」に寄り集まっている「小猫」(春の季語)という素材がよいです。下五にもう一工夫あれば、人選になりそうな句材。「昼下がり」という時間情報が必要なのでしょうか。ここが大事なポイントです。
“とてもいい”

桐の葉の縮れ初めたる冬の空

啓子

夏井いつき先生より
「散る前に、枯葉色した葉が未練たらしく縮れ、やがてガサッと散っていく」と作者のコメント。

中七の描写は、目が利いていると思います。が、「冬の空」を描きたいのか、「桐の葉」を描きたいのか。再度、自問自答してみて下さい。
“良き”

家事終えて日課の寺の落ち葉数

春来 燕

夏井いつき先生より
「家事を終えて寺に行く事が日課となっています。寒くなり、寺に積もる落ち葉の数が減ったような気がする、という気持ちを詠んでみました」と作者のコメント。

この表現で、その気持ちまでは読み取れません。材料が多いのです。二句に切り分けてみましょう。「家事を終えて寺まで行く日課」で一句、「寺に積もる落葉が少なくなった気がする」で二句目。
“難しい”

石段に増す黄葉や枯れかけて

春来 燕

夏井いつき先生より
「石段に落ちる黄葉は、時期の最初の頃はまだ真っ黄色で明るい色ですが、晩秋になると枯れた葉が落ちていることが多くなります。寂しさを冬の訪れと共に感じる光景を詠んだ句です」と作者のコメント。

「黄葉」に対して「枯れかけて」というと、季節を一気にまたいでしまったような印象になります。「黄葉」がどう変化していたから「枯れかけて」いると判断したのか。あなたの眼球に映った映像を再生してみましょう。ヒントは、他の人たちの作品の中にありますよ。
“ポイント”

階段で猫ふんじゃった冬公園

宙海(そおら)

夏井いつき先生より
「ウッカリでも猫の落書きは踏みたくないです」と作者のコメント。

「猫ふんじゃった」の意図は分かりますが、「冬公園」という季語の使い方は、ちと乱暴です。
“良き”

落書きのねこふんじゃった日の鬼火

あみま

夏井いつき先生より
狙いは分かるのですが、「ねこふんじゃった」の狙いと「鬼火」の狙いが、やや噛み合ってない感じです。
“参った”

石段にわらじのかけら薄紅葉

颯萬

夏井いつき先生より
「わらじ」のほつれた藁? それとも朽ちている「わらじ」? 「かけら」の選択が微妙に分かりにくいです。
“難しい”

月命日墓地へと続く石の段

古都 鈴

夏井いつき先生より
「義父が亡くなったせいか発想が喪に服している感じになりがちで。この石段、どこに行くのかなと思ったらこうなりました」と作者のコメント。

やはり季語が欲しいです。お義父さんの亡くなった季節の季語を入れてみましょう。選んだ季語によって、「月命日」「墓地」あるいは「続く」等の言葉が不要になるはずです。
“難しい”

口の端に虫の羽光る鼬かな

大西どもは

夏井いつき先生より
「猫の落書きから発想を飛ばして鼬(いたち)へ」と作者のコメント。

よい観察眼です。ただ、「虫の」は必要ですか。展開によっては「かな」の二音も違った使い方ができそうです。
“ポイント”

冬ざれの校舎独逸のしゃれこうべ

大西どもは

夏井いつき先生より
「放課後、校舎裏の風景をみて。冷えた校舎の中に入ると、人体模型と二人きり」と作者のコメント。

「校舎」と広くいうよりは、どの部屋に? と具体的に書くほうが得なのではないでしょうか。なんせモノが「独逸のしゃれこうべ」ですから。
“参った”

階の雪昨日と同じ落し物

新陽

夏井いつき先生より
「落し物」が昨日のまま、同じところにあったのですか? 昨日の「落し物」と同じものが、また落ちていたのですか? そこは明確に書くべきです。
“激励”

あかぎれた手で書きなぐるいたずら児

石原まなぶ

夏井いつき先生より
「子供を表現したかったので『皸(あかぎれ)』をひらがなにしてみました。『児』の字は『手のかかる子供』という意味らしいので使いました。子供の頃は壁でも階段でも、そこら中いたずら書き。多少の傷怪我の痛みなど忘れて、もうそれは夢中になって……そんなことを思い出しての作句です」と作者のコメント。

「いたずら児」が説明です。いたずら書きで、何を書いて(描いて)いるのかを描写すれば、子どもに違いないと想像させることは可能です。
“ポイント”

石段の香の強さや仏の日

砂楽梨

夏井いつき先生より
「初めは『香強く匂う石段仏の日』としていましたが、よく考えたら香は匂うものだということに気付き、作り直しました。自分ではなにかインパクトが弱まった気がしますが、ほかの言葉がどうしても見つけられませんでした」と作者のコメント。

「仏の日」が季語? と思って調べてみました。「正月になってから初めて仏をまつり、また墓にまいる日をいい、正月十六日に行なう所が多い」との解説。新年の季語として載せている歳時記もあるのですね。知らなかった。
そして「香」は、お香あるいは線香なのですね。「石段」は外せない情報かどうかを自問自答して下さい。そこからの推敲ですね。
“良き”

冱てし石段迂回す骨粗鬆症

蒼求

夏井いつき先生より
「骨密度検査を受けたところ、骨粗鬆症と診断されてしまいました! しかしこれも俳句のタネになると思った時、これが組長のおっしゃるところの"辛いことも俳句にして昇華する"という行為なんだと思いました。滑って転んで骨を折ったりしないように注意し、俳筋力と背筋力の両方を時間をかけて鍛えていきます!」と作者のコメント。

なんかスゴい素材やな……。材料が多いので、リズムを作るのが難しい。「凍つる」の字のほうが臨場感ありそう。「凍つる石段」を字余りで上五に置いてからの展開しかないか。

添削例
凍つる石段迂回すは骨粗鬆症

「凍つる石段迂回す/吾(あ)は骨粗鬆症」斜め線のところに意味の切れ目があります。とはいえ、作者が言いたいことを全部入れると、こうなってしまいます。この中で、外せそうな言葉は分かりますか?

添削例
石段は凍れり吾は骨粗鬆症

「迂回す」その後の動作を書かなくても、凍った石段の前に立つ吾=骨粗鬆症患者を描くだけでいいのです。
“良き”