写真de俳句の結果発表

【第3回 写真de俳句】《ハシ坊と学ぼう!④》

第3回のお題「落ち葉・階段・猫」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

竹馬や幼き頃の忘れ物

門司区ビリケン

冬ざれや幼き頃の忘れ物

門司区ビリケン

夏井いつき先生より
「一句目『竹馬』にしましたが、季語が近すぎても……と思って、二句目『冬ざれ』にしました」と作者のコメント。

確かに「竹馬」は近すぎる。さりとて、「冬ざれ」は淋しすぎる? (苦笑)。歳時記をめくっているうちに、もっと複雑な感情を表現してくれる季語に出会えるかも。さあ、ここからは持久走。黙々と歳時記をめくってみましょう。
“難しい”

冬小道お茶とお団子もうすぐだ

松原ひろゆき

夏井いつき先生より
「冬小道」という季語の使い方は少し強引。「お茶とお団子もうすぐだ」は率直すぎるほどの、ヘタウマ漫画の味わい。悪くはないですよ。どんな季語を取り合わせるかが、最後の勝負です。
“ポイント”

陸橋のスプレー文字に冬夕焼

Q&A

夏井いつき先生より
「に」は要一考です。
“激励”

討入の日に落書きの猫二匹

鮫みわ

夏井いつき先生より
「もしかして片方の猫が吉良の殿様で、もう片方が大石内蔵助かな? なんていう妄想」と作者のコメント。

これも「に」が惜しいです。妄想は作家としての才能ですから、それはそれでよいのです。その妄想を作品として結球させるために、技術を学んでいきましょう。
“ポイント”

踊り場の落書きが鳴く猫の顔

迫久鯨

夏井いつき先生より
上五中七には詩があります。が、季語がありません。下五にどんな季語を選択するかによって、これも人選になり得る素材です。
“ポイント”

猫の絵の凍る階段滑り落ち

鳴滝いたち

夏井いつき先生より
「階段から落ちて骨折した事を思い出しました。猫の絵にびっくり?? 」と作者のコメント。

下五は要一考。自分が「滑り落ち」たことは、この句には入れないほうがよいかと思います。そうすれば、季語「凍る」の映像をもっと丁寧に描写できます。
“参った”

開け放ちたる玄冬のタマテバコ

佳山

夏井いつき先生より
小惑星探査機「はやぶさ2」のことかな。この字面で、どこまでそれを読み解いてもらえるか、不安です。
“良き”

冬山に二両編成ガタンゴト

叶はなみ

夏井いつき先生より
「冬山に」ではなく、「冬山」でしょう。助詞「に」と「を」の違いについて、▶︎YouTube『夏井いつき俳句チャンネル』【一音で蛍の動きを変えよう!助詞「に」「を」「へ」でも解説しています。参考にして下さい。
“激励”

猫たちとぬくぬくしたい冬木立

松原のりこ

夏井いつき先生より
「猫たちを描いていたら、楽しくて、あたたかく幸せな気持ちになったような、そんな暖かな冬の一日」と作者のコメント。

上五中七の実感に対して、この季語がベストでしょうか。やはり季語を主役にして欲しいのです。
“参った”

日向ぼこ夢中で描いたギャング猫

松原のりこ

夏井いつき先生より
「落ち葉の中でいたずらな子達が描いた猫達よ。日が沈む前に背中に感じる暖かさで、キャットストーリーの出来上がり」と作者のコメント。

中七「夢中で描いた」は説明の言葉。映像の言葉にするにはどうすればよいか。ヒントは、他の人の作品の中にあります。
“難しい”

何杯目コーヒーの染み日向ぼこ

つき あかり

夏井いつき先生より
「側のカフェで遅い友を待ちながら」と作者のコメント。

カフェで待っているのならば、他の季語を探してみてはどうでしょう。その際、ひょっとすると「染み」が不要になるかもしれません。
“ポイント”

日だまりの猫にも序列冬麗

蓼科 嘉

夏井いつき先生より
「勝手にいるようだけど、日だまりの数匹の猫にもきっと序列があるように思います」と作者のコメント。

中七「にも」が、やや散文臭いです。季語も「冬うらら」という表記のほうが似合っているかも。さらに別の季語との良き出会いもありそう。
“難しい”

供え米待ちわぶ雀冬の庭

猫柳

夏井いつき先生より
「待ちわぶ」は説明の言葉です。ここを映像の言葉にできると、俳句としてワンランクアップ。ヒントは、他の人の作品の中にありますよ。
“参った”

冬すずめ門限やぶりの吾囲む

黄色いくじら

夏井いつき先生より
「門限を過ぎて家に入れてもらえず、通りのガードレールに座っていた自分を思い出しました」と作者のコメント。

季語としては「寒雀」のほうが適切かも。

添削例
寒雀門限やぶりの吾を囲む

「吾(あ)を」として、対象を明確にすると、さらに分かりやすくなります。
“ポイント”

返り花「予言の自己成就」か

惠華

夏井いつき先生より
「口にしたり、思い続けていると現実化する、という心理学用語があるそうです。小春日に、桜や躑躅(つつじ)がぽつりと咲く姿に、条件を整えれば達成出来るという仕組みを実感した次第です。六十五歳の自分も自己実現を目指します」と作者のコメント。

うーむ、俳句にするには、やや内容が張りすぎているか。むしろ、短歌とか詩にするべき内容かもしれません。
“参った”

寒つばき片目の猫の首の紐

キッカワテツヤ

夏井いつき先生より
季語「寒つばき」がベストかどうか。悩ましいところです。
“難しい”

かくれんぼ嚔に鬼はしたり顔

里山まさを

夏井いつき先生より
「鬼はしたり顔」の部分が説明になっています。かくれんぼをしていた、嚔(くさめ)をした、鬼にも聞こえた、その事実を書くだけでよいのです。
“参った”

洟ぬぐい子猫落書きろう石で

チリンドロン

夏井いつき先生より
「猫に好かれた亡き弟が、小さかった頃の思い出です」と作者のコメント。

ということならば、「弟」という情報が入ったほうがよいかと。むしろ「ろう石で」が不要でしょう。
“激励”

初雪や凍る階段怖々と

チリンドロン

夏井いつき先生より
「高いところから雪景色を見ようと歩道橋に。手すりにしがみつき、上って下りて、大変な思いをしました」と作者のコメント。

「初雪」と「凍る」、季語が二つあります。どちらを主役にしたいのか、自問自答して下さい。さらに「怖々と」と説明するのではなく、まさに「手すりにしがみつき」という様子を描写するべきです。
“激励”

階段に猫の二匹絵冬温し

晴耕

夏井いつき先生より
素材は面白いと思いますが、「二匹絵」は、なんだか寸足らずな言葉。「階段」は四音なので、「壁」の二音にすれば、こんな感じに。

添削例
二匹目を描き足す壁や冬温し
“ポイント”

供え物ねらう猫の影えびす講

なしぞ~

夏井いつき先生より
「神社の階段かと思ったので、だとしたら落書きは罰当たり」と作者のコメント。

「影」は必要ですか。実際の猫ならば、以下のような書き方もあります。

添削例
供え物狙う恵比須講の猫か
“良き”

エビリファイ飲み狐火のめらりめらり

雪陽

夏井いつき先生より
「『エビリファイ』は向精神薬です。鬱病などの治療に用いられますが、副作用の出やすい薬です」と作者のコメント。

カクテルの名ではなく(笑)、薬だと分かるような書き方もあります。

添削例
エビリファイ服用狐火のめらり
“ポイント”

朝靄に箒のリズム乱れたり

森比古

夏井いつき先生より
「静かな寺社の朝に、箒の清々とした音が聞こえてきました」と作者のコメント。

「リズム乱れたり」は説明です。描写の言葉にしたい。
“激励”

巻耳や落書きのごと猫の背を

大月犬ラルフ

夏井いつき先生より
「巻耳(おなもみ)」と「猫」は企みのある取り合わせだと思いますが、「落書きのごと~背を」という比喩が、分かるようで分かりにくい。もう一工夫欲しいな。
“参った”

冬茜絵描き歌友待つ暇

かいぐりかいぐり

夏井いつき先生より
「写真de俳句は初投句です。(初心者にはめっちゃ難しい(涙))絵描き歌を歌いながら落書きしていると、待つ時間もまた(ちょっと)愉しいという気分が、季語『冬茜』で伝わるのかなぁ」と作者のコメント。

もっと短くするなら「友待つ絵描き歌」九音で、中七下五の情報が伝わります。残り八音、まだいろいろできますよ。

添削例
冬茜○○○友待つ絵描き歌

この○の音数で、季語「冬茜」を描写するのが、ひとまずの定石。やってみましょう。
写真から俳句を作る発想方法は、▶︎第一回の結果発表の時に解説しています。遡って、参考にして下さい。
“ポイント”

招き猫寒さこらえて年の市

放夢走

夏井いつき先生より
「寒さ」と「年の市」、季語が二つです。中七の描写を「寒さ」という言葉を使わないで、寒そうな様子を書けるとよいですね。
“難しい”

復興の城下に園児落葉駈け

谷口詠美

夏井いつき先生より
「この写真を見ていたら、三年ぶりに訪れた熊本城の階段を駈ける園児たちの姿と重なりました。銀杏城の名のとおり、落葉の黄色が目に染みました」と作者のコメント。

中七「に」の一音が気になります。それぞれの自立語に優先順位をつけてみましょう。言い換えることのできる言葉がないかも、確認しましょう。
“参った”

炬燵入り猫の絵本に老母笑む

ごまお

夏井いつき先生より
「遠方にいる認知症の母を思い作りました。昔から動物が好きで、特に猫は飼っていたこともあります。今は飼うこともかなわず猫の雑誌、絵本をよく買って送っています」と作者のコメント。

全体が散文の叙述になっています。「今は飼うこともかなわず猫の雑誌、絵本をよく買って送っています」という内容のほうが、俳句として鮮度が高くなりそう。上五、少し音数が余りますが、

添削例
母へ送る猫の絵本や○○○○○

下五の季語を探して、作品を完成させて下さい。
“ポイント”

今宵の宿落ち葉に問うや地域ねこ

ひろみ

夏井いつき先生より
「猫ちゃんの箱が空っぽです。休み心地のいい落ち葉の山を知っているのでしょうか」と作者のコメント。

「猫ちゃんの箱が空っぽです」という文言のほうが、ずっと率直で臨場感があります。

添削例
猫ちゃんの箱が空っぽ○○○○○

下五の季語、探してみましょう。
“良き”

里山を跳ねて狐の毬となる

ちかひか

里山を跳ねて狐の毬と化す

ちかひか

夏井いつき先生より
【一句目】「『て』『の』や語順を悩みました。が、そもそも発想が凡人なのでしょうか……」
【二句目】「一句目『里山を跳ねて狐の毬となる』を推敲したものです。どうせありがちな発想ならばベタを極めた方が良いのでは、という考えで直しました」と作者のコメント。

「狐」が「毬」になるという句材が問題なのではなく、「~を跳ねて~と化す」という叙述が散文的なのです。

添削例
○○○○や跳ねて狐は毬となる

○○○○に入る単語を、思い切って離すと、とんでもなくスゴい句になったりします。俳句は言葉のパズル。筋トレだと思って、色々やってみましょう。
“ポイント”

中華屋の勝手口出れば冬の月

小山美珠

夏井いつき先生より
「中華屋さんで働いている人あり。裏口のドアを開けて、空を見上げると月が朧に見える。裏の勝手口の奥は、憩いの場のような場所」と作者のコメント。

「出れば」が不要かも。「美し」は「いし」と読みますが、俳句では慣用的に「はし」とも読みます。

添削例
冬月は美し中華屋の勝手口
“ポイント”