写真de俳句の結果発表

【第3回 写真de俳句】《地》

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

第三回写真de俳句 地
返り花ひげの増えてる壁の猫 ぷるうと

落書きの猫に何かを書き足す発想や、実際にヒゲを描き足すという類想もありましたが、掲出句の工夫を誉めたいと思います。

「落書きの猫」は七音ですが、「壁の猫」は五音。中七で、壁の落書きだと分かる描写がなされているので、下五がきちんと機能しています。上五の季語「返り花」が動くか否かの議論はあるかと思いますが、小さく光るように咲く返り花を見つけて立ち止まり、その後で猫のヒゲの本数に気付く、という作者の心の動きが素直に書かれていると感じました。毎日通る場所での小さな発見です。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

幾年前の落書きクリスマスカクタス 野良古

「クリスマスカクタス」という九音の季語。長い季語を扱う場合、どうしても調べがギクシャクしがちですが、この句のように独特のリズムを作ることができれば破調としても成功です。

「幾年前」でさりげなく時間経過を表現。「落書き」へ落とす視線、さらに溢れるように咲く「クリスマスカクタス」の鮮やかな色合い。クリスマスカクタスは、和名でいうと「蝦蛄葉仙人掌」。同じ花でも、字面の印象の違いはとても大きいですね。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

陳情書ちらばる枯野人つどふ 遊呟

こちらの季語「凩」は比喩として使われています。その分、季語としての鮮度が落ちるのは致し方ないのですが、「落書きのネコ」たちの周りに凩の存在を察知することはできます。無彩色のろう石やチョークで描かれた「ネコ」たちは、やがて凩に同化していくのでしょう。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

兼題写真から、自分自身の猫にまつわる経験を思い出したというタイプの一句だと思います。

「セーター」に猫が爪を立てる場面を切り取った句は、いくらでもあるのですが、下五「譲渡会」にハッと心が動きます。捨てられた猫たちと新しい飼い主との出会いを取り結ぶ譲渡会。セーターに爪を立てたまま離れようとしない「三毛」は、果たしてどうなったのか。小さなドラマを見せられているような一句です。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

上五に季語ではない名詞を置き、中七下五で季語を含んだワンフレーズを作る。これは中級者以上の難しい型です。

「ヒーローや」と強調されると、読者たちはさまざまなヒーローを思い描くのでしょうが、中七下五「木の葉は風に円描く」となれば、そのヒーローの種類が限定されていくようで、実に面白い。子どもの頃に観た仮面ライダーのポーズを思う人もいるだろうし、ある年代の人たちは眠狂四郎の円月殺法だと決めつけるかもしれません。いやいや、このヒーローとは、現在の自分への自嘲であると読む人だってでてくるでしょう。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

落書き→バンクシー、という連想の句も沢山ありましたが、そのほとんどが赤い風船、赤い薔薇、赤い林檎などを取り合わせておりました。

それらの句と掲出句の違いは、バンクシーが実際に描いたものではなく、バンクシーならどう描くだろうと発想した点です。「黄落の独り言」は作者自身の呟きとも、色づいて落ちてくる黄葉の擬人的呟きとも読めます。バンクシーが描くのは、社会への主張を込めた絵。作者の胸に去来しているのは、一体どんな思いなのでしょう。

俳句ではあまり使わない読点、下五の切れのない形なども、一句の主張に見合った効果を発揮しているといえます。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

修行僧の寒行のように思うかもしれませんが「寒施行」とは、餌の少なくなる寒中に狐や狸などに食物を施すことを意味する冬の季語です。兼題写真から「寒施行」にくるのはいかにも俳人らしい発想のように思えますが、実際にこの季語を使っていたのは、今回の投句ではほんの一句か二句。実は、私も予想していなかった発想でした。「石段」に置かれた「花かつお」が寒中の風にひらひらとなびくさまも見えてくるよう。下五の季語「寒施行」の出現によって、上五中七の光景に新しい意味づけがなされる。そういうタイプの句としても成功しています。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

上五に季語を置いて「や」で強調し、中七下五でワンフレーズ作るという基本形。温室育ちの見事な「カトレア」が飾られている部屋。愛猫の目やにが気になって挿してやる目薬。きっと血統書付きの猫なんだろうとか、座ってるソファもさぞふかふかに違いないとか、この猫は私らよりもエエもん食べとるんやろなとか、僻み根性も顔を出してきそうですが(笑)、そんな妄想を抱かせてしまうのもこの句の力というべきでしょう。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

兼題写真から、「窮鼠猫を噛む」という格言を連想したのですね。が、それにしても、噛むべき猫がいないので「マフラ噛む」という展開に、驚きつつ笑ってしまいました。一体どんなふうに追い詰められているのか、己の「マフラ」を噛んで耐えるしかない出来事とは何なのか。ショートショートが何編か書けそうな一句です。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき