【第4回 写真de俳句】《ハシ坊と学ぼう!②》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
霜柱清し御所へとつづく道
あすなろ子
「御所への道」と書けば、「つづく」の三音を節約できます。


星冴ゆる顳顬の受く音は青
巴里乃嬬
「受く」は「音」に繋げたいのですね。ならば、「受くる」と連体形にする必要がでてきます。となれば、中八になります。さて、どうする?


数へ日や月夜を犬のすたこらと
陽光
「先に投句した『数へ日や月夜の犬の散歩かな』に、切れ字が二箇所あった事に気づき作り直しました」と作者。
気づいたのがエライ! 残りの問題は「や」の位置はこれでよいのか、下五の着地はどうか、この二点です。


枯れ草の立つる軍旗や霜柱
比良山
「枯れ草」と「霜柱」の季重なりが気になります。「枯れ草」と「軍旗」、「霜柱」と「軍旗」、それぞれの取り合わせで、さらに作ってみて下さい。どちらもよい句になりそうな予感がします。


杖の跡校庭にあり霜柱
巴里の猫
「早朝に行ったつもりが既に誰か……! 杖の跡だと分かるくらい、綺麗な霜柱の校庭でした」と作者のコメント。
「~にあり」が説明になるので、語順を変えてみましょう。梅沢(富美男)のおっちゃんも、この語順問題で悩んでいます(笑)。


霜柱時計の針は動かない
藤井天晴
霜柱動かぬままの時計在り
藤井天晴
霜柱針なき時計掛かりたり
藤井天晴
「実家の玄関近くにあった古い柱時計は動かない(針がなかった気もする)。動かないのにずっとそこに掛けられたままだった。理由は聞いていないけれど、なんとなく分かる」と作者のコメント。
いろいろ苦労したあとの残る三句ですが、「針のない時計」を置き続けていること、その気持ちがなんとなく分かるという貴方の気持ちこそが、詩になるのではないかと思います。ちょっと難しいかもしれないけれど、「霜柱」ではない季語で、それが表現できる日もくるでしょう。


亡骸に土たっぷりと霜雫
しみずこころ
「息子の話し相手だった金魚に感謝を込めて、埋葬しました。寒い日だったので凍えないように土をたっぷりかけました」と作者のコメント。
この「亡骸」が人間ではないことが分かるように書きたいですね。


俺はもうとっくに雪を履いている
あすか風
「今日(2021年1月12日)、奈良市に初雪が降りました。霜柱の先輩顔を詠んでみましたが……」と作者のコメント。
そういうことを言いたいのか……。スノータイヤを履いている、という意味かと思いました。自分の表現したいことに意味を寄せるためには、絵本のような味わいの句にするのがいいのかも。再考してみて下さい。


電車ごっこ縄あるように麦を踏む
吉村よし生
「縄あるように麦を踏む」で描写できています。むしろ「電車ごっこ」は不要です。さあ、上五をどうもっていくか。最後の仕上げですね。


里芋の切り口真白寒夕焼
風早 杏
「里芋の切り口真白」、ちゃんと映像が切り取れていますよ。「里芋」も季語ですから、この場合はむしろ「寒夕焼」がないほうがいい。残りの五音、どうしますか。ここが大事な勝負所です。


霜柱サクッと感じ下駄の朝
花弘
「感じ」は不要です。俳句における三音は、まだまだ色々できますよ。


枯れ草の一刀めいて反りにけり
ウィヤイ 未樹
枯れ草の一刀めゐて反りにけり
ウィヤイ 未樹
「一句目『枯れ草の一刀めいて反りにけり』と投句しました。旧かな(歴史的仮名遣い)で統一しようと決めましたが、『い』の表記が『い』なのか『ゐ』なのか、よくわからないです」と作者からの質問。
「めく」は、接尾語。[名詞、形容詞・形容動詞の語幹、副詞などに付いて動詞を作り、そのような状態になる、それに似たようすを示す意を表す]と辞書には解説してあります。
結論からいうと、「めゐ」は間違いです。「めく」の連用形は「めき」で、「~て」につくときには、音便を発生させる場合もあります。この句は、イ音便を発生させると「めいて」となります。ですから、一句目のままでよいのですが、格調高くしたいのならば、「めきて」でもよいかと。


北国を驚かしたる深雪かな
ピアニシモ
「このところの大雪で、雪に慣れているはずの東北や北陸でも、車の立ち往生や雪下ろし中の事故が多発していると、報道で知り作句。高浜虚子氏の『鎌倉を驚かしたる余寒あり』を真似てしまって×(バツ)でしょうね」と作者のつぶやき。
そうですね、「~を驚かしたる~かな」という類型を使うのがダメというわけではないのですが、上五が「鎌倉」「北国」と土地情報ですし、下五が「余寒」「深雪」なので、発想が近い。類型を使う時は、キーワードと季語を全く違う方向に向けてみましょう。成功する確率が格段にアップします。


露地庭の薄霜踏みしむ藁草履
灯り丸
中七が八音になっています。ここをなんとかしたい。


火を放つ日をたくはへし枯草に
春陽
奈良の若草山で行われる、冬の代表行事「若草山焼き」を表現したいそうです。となれば、「~をたくはへし」という叙述、さらに工夫できそうです。


室の花渇き日食狂ひだす
古瀬まさあき
「既出の『冬眠の夢に日の音と月の音と』の句の推敲です。『冬眠の夢』といふ漠然としたイメージを『室の花』に転換しました。太陽と月の不協和音は日食のズレていく映像に変えています」と作者のコメント。
それぞれ全く違う句として、素材に魅力を感じます。「室の花」と「日食」の取り合わせには惹かれますが、動詞がどちらも強すぎて、お互いを殺しているようにも思われます。


水涸れて水路の罅の放たれり
古瀬まさあき
「『水涸れて水路の罅の散らばりぬ』の推敲です」と作者のコメント。
うーむ、まだ私には納得がいかない……。


20cm力自慢の霜柱
松虫姫の村人
「20cm」と具体的に書いてあるのはよいのですが、「力自慢」という擬人化は損。要一考です。


枯れ草を食む牛達の息白く
抹茶子
「枯れ草」と「息白く」、季重なりです。何か方法はないかな?


空つ風二区の走者をごぼう抜き
そうり
「二区ごぼう抜き」「二区をごぼう抜き」と書けば、「走者」の三音を節約できます。


人をらぬ宮殿めける霜柱
武井かま猫
「宮殿めける」という比喩をよしとした時に、「人をらぬ」がベストかどうか、一考してみて下さい。

