【第4回 写真de俳句】《ハシ坊と学ぼう!④》
評価について
本選句欄は、以下のような評価をとっています。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。
特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。
「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考える。それが最も重要な学びです。
安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません。己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。
霜柱水の命の太さかな
二重格子
枯れ草の根元に小さき命の芽
里山まさを
白菜の命を囲う霜柱
晴耕
枯れ草に命の白き霜が立つ
ともっち
「命」という言葉は、なかなか使い方が難しい。「命」と書かずに、それを表現できればカッコイイのですが。


枯れ草で暖とる朝の老夫婦
放夢走
「朝、外に出て、庭の掃除をし、落ち葉を燃やして暖をとっている光景を詠みました」と作者のコメント。
ならば「枯れ草で」ではなく、「枯れ草を焚き」と書いたほうが得ですね。不要な言葉がないか、考えつつ完成させて下さい。


霜柱ひかる枯れ草をティアラのごとく
まつぽっくり
枯草華やぐましろの霜柱
トウ甘藻
「枯草」と「霜柱」、やはり季重なり。気になります。さて、どうする?


夕日浴び廃屋飾る枯れ草や
ごまお
「自宅団地近くに廃屋がある。四季折々の草木が植わっており、花、虫、鳥、紅葉といろいろ楽しませてくれ、冬はお題の写真のように枯れ草に覆われる。天気のよい日は、角度にもよるが夕映えの枯れ草が美しい。そんな風景を詠みました。悩んだところは、『廃屋飾る』のは『夕日』か『枯れ草』か、『飾る』か『繕う』か、『夕日』は『射す』のか『浴びる』のか、下五の『や』、語順、です。いまだに迷いはありますが最終的にこうしました」と苦悩する作者。
考えて欲しいのは、「浴び」「飾る」の動詞が必要かどうか、です。コメントの中にある「夕映えの枯れ草」と書けば、かなり効率的な表現になるのではないかと思いますよ。


冬あたたか野辺の枯れ草儚しや
れんげ草
「冬あたたか」と「枯れ草」の季重なりをうまく解消できるとよいのですが。下五「~や」も少し難しい型です。


そら歩き猫の足跡ポツリポツ
伊藤あんこ
「北陸ではなかなか霜柱にはお目にかかれません。今回の大雪で田も埋まりそら歩きできました。が、先客は猫でした。『そら歩き』は季語ではないようなので、季語無し(無季)になるのでしょうか?」と作者のコメント。
上五「そら歩き」という言葉についての知識がないので、アドバイスができないのですが、雪の上を歩くことですか?


霜柱かなしきものや触れられず
橘明月子
枯れ草にこども転がる輝く目
和泉明月子
俳号が違いますが、同一人物だそうです。俳号を一つに決めて下さいね。
前句は「や」の使い方が、作者の意図に合致しているのかどうか。後句は「輝く」が必要かどうか。自問自答してみて下さい。


大根を横目に犬のひた歩く
ひつじ
大根を横目に犬のひた歩き
ひつじ
「『ひた歩く』を『ひた歩き』に変えてみました。この方が良い気がするけれど、何がどう違うのか、正確にはわからないです。『大根を』は『大根畑』にしようかと悩みましたが、何だかくどいのでこのままにします」と作者のコメント。
この句の場合でしたら、「大根」と単体をいうよりは、「大根畑」と広さを添えたほうが、中七下五も生きてきます。
添削例
大根畑横目に犬のひた歩く


霜柱朝霧晴れてしづかなり
益深
「霜柱」と「朝霧」の季重なりです。ひとまず、二句に切り分けてみて下さい。


ミルク取る目覚め近頃霜の串
藪椿
「牛乳配達が一般的だった頃、今よりずっと寒かったように思います。早朝、牛乳瓶を取るために外へ出るとき、毎日目にする庭先の枯れ草、近頃は寒さも増して霜の串みたい、というようなイメージです」と作者のコメント。
下五「霜の串」という表現が分かりにくいです。「串」という比喩が読み取りにくいのが原因かと思います。


杖あるも我には遠し霜柱
幸香
「霜柱のできる日は寒く、血圧の高い者にとって危険で出れません。それに腰が悪く、舗装された道を少し歩くことしか出来ないので、霜柱の体験を断念した思いを書きました」と作者のコメント。
惜しいのは上五です。特に「~も」が。
添削例
杖ありて我には遠し霜柱
杖はこの通りあるのだけれど……というニュアンスになります。これならば、人選に入ります。


ルピナスの枯れ枝雪を突きさして
ブチ猫
雪の庭コスモス枯草のままで立つ
ブチ猫
雪の中に立ち枯れている植物を描こうとしているのはよいのですが、具体的に「ルピナス」「コスモス」と書いてしまうので、一句の主役が分かりにくくなっています。後句を例にとると、
添削例
立ち枯るるもののあまたや雪の庭
これぐらいに書けば、「雪」が主役になってくれます。


灼熱も風雨も耐へし枯草かな
雅
「灼熱」から「枯草」まで、述べようとしている時間軸が長すぎます。「耐へし」の擬人化も、この句の場合は損か。


霜柱えのき歯ごたえ今夜鍋
豚玉
日も昇り汗かき痩せる霜柱
豚玉
一句目の「霜柱」「えのき」、二句目の「汗」「霜柱」、それぞれが季語です。まずは、歳時記と仲良くなるところから始めましょう♪


霜の路地朝陽輝く一瞬や
一久恵
霜の路地朝陽に輝く一瞬に
一久恵
どちらの句にしても、「輝く」は不要です。四音節約すれば、いろんなことができますよ。


枯野行く赤いチコチコ事件あり
大西みんこ
「チコチコ」って何? パトカーの点滅? でしょうか。ならば、そのように書いたほうがよいでしょう。下五「事件あり」は不要です。
添削例
パトカーの赤き点滅枯野行
添削例
パトカーの赤き点滅大枯野

