写真de俳句の結果発表

【第4回 写真de俳句】《地》

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

第四回写真de俳句 地
霜柱息は純白にはあらず 登りびと

「霜柱」が白いのも、寒い日の息が白いのも当たり前のことですが、「息は純白にはあらず」といわれると、ハッといたします。なぜ、私たちの息は純白ではないのか。肉体の熱や心の歪みや、そんなものによって濁っているのだろうか……とも思い始めます。

「霜柱」の純白に心惹かれての一句か。はたして「霜柱」は純白なのだろうか、という問いかける一句なのか。思いの外、奥行きの深い作品であることに気づきます。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

この丘は火薬庫でした霜柱 泉楽人

「霜柱」の「丘」が広がっているのです。見渡すかぎり白々と霜がおりているのでしょう。「この丘は火薬庫でした」という振り返る言葉から始まる一句は、下五「霜柱」という季語の力によって、過去へむかってタイムスリップし始めます。これらの言葉が、非常に興味深いメカニズムで、一句の世界を作ります。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

陳情書ちらばる枯野人つどふ 遊呟

なんの「陳情書」なのでしょう。ここに空港を作るな、基地は要らない、そんな主張をしたためたものなのでしょう。「枯野人」という季語が、およそ詩には似つかわしくない「陳情書」という言葉と取り合わせられることによって、新しいリアリティを獲得する。そんな化学変化をみせてくれた一句。「ちらばる」「つどふ」の二語も、作者の意図を的確に表現しています。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

霜柱野に生死あり生多し 花屋英利

眼前には「霜柱」。そして霜の野はずーっと広がっているのです。この「野」は「生死」というものに満ちている。が、死よりも少し「生」が多いに違いないと、作者は信じているのです。暗い色調の作品ですが、内容には「生」の希望がしっかりと描かれています。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

霜雫きらめく犬の胴震い 眠 睡花

「霜」「霜柱」に対して「輝く」「光る」「きらめく」などの動詞は、実にありがちなのですが、この句の巧さは「きらめく」の位置です。

「霜雫」がきらめく。その「霜雫」をきらめかせているのは「犬の胴震い」なのだという映像が見事に切り取られています。言葉の選択、語順、よく考えられている作品です。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

霜柱きらきらするな月曜日 けーい〇

「霜柱」に対するオノマトペとして多かったのが「ザクザク」「サクサク」。勿論、「キラキラ」もそれに続くほど多かったのですが、「きらきら」も使いようですよという一句です。

「霜柱」に対して「きらきらするな」と、禁止する。たったこれだけのことでささやかなオリジナリティを手に入れられます。なぜ、そんなふうに命令するのか。その答えが下五「月曜日」なのです。週明けの重い心身に、「霜柱」は眩しすぎるのです。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

ざくざくと霜マラソンの呼吸法 幸の実

「霜」「霜柱」に対して、最もありがちなオノマトペが「ざくざく」です。この句は、誰でも思うそのオノマトペを、最大限の共通理解として逆用しているのです。

前半「ざくざくと霜」だけで、霜を踏んでいることが分かります。そして、後半「マラソンの呼吸法」と取り合わせるだけで、走っていること、独特のリズムで息をしていること、鼻腔の奥には冷たい空気が届いていること、肺がハアハアしていること等、さまざまな経験的リアリティを蘇らせます。小学生俳人、現役の強みの一句です。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

一限目は化学アロエに積もる雪 三千里ねおじむ

「一限目は化学」で意味が切れる、句またがりの型。化学の教科書をかかえて、化学室に移動している渡り廊下でしょうか。授業が始まっている窓の外でしょうか。独特のかたちをした朱色の「アロエの花」に、どんどん「雪」が積もっていく。何気ない記憶が、今回の兼題写真によって引き出されたのかもしれないと思うほどの、リアリティがある作品です。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

キーパーをやらされているカイロ振る 佳山

兼題写真からこんなことを思い出した人もいるのかと、ちょっと笑ってしまいました。「キーパー」の一語で、サッカーだと分かります。しかも「~やらされている」ですから、やりたくもないけど人数が足りないからと頼み込まれた……とか、みんな攻撃したがるからゴールキーパーをする人間がいない……とか、幾つかの理由が思い浮かびます。「~やらされている」のあとの「カイロ振る」の、なんたるリアリティと俳諧味。昼休みの中学生を想像しました。

この人物はきっと、大人になってもこんな感じで、付かず離れずの人間関係のなかで、無理せず、気張らず、カイロ振りつつ生きていくんじゃないかと、めっちゃ深読みしてしまいました。いやはや、面白い。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき