ドリルde俳句の結果発表

【第4回 ドリルde俳句】①

ドリルde俳句結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。ドリルde俳句のお時間です。
出題の空白に入る言葉を考えるドリルde俳句。出題の空白を埋めてどんな一句が仕上がったのか、皆さんからの回答を紹介していきます。
“ポイント”

第4回の出題

春夕焼け にひとつの

第四回の出題意図はずばり「類想」!
様々な選句の場に携わっていると、どんな兼題が出されても不思議と目にするフレーズがあります。
その中の一つが「○○にひとつの△△△△△」。
たとえばこんな一句、どこかでお目にかかった経験はありませんか?

春夕焼にひとつの信号機

山川腎茶

 

春夕焼にひとつの信号機

まつぽっくり

 

春夕焼にひとつの信号機

でんでん琴女

一言一句同じ句が三人も! ドリルの穴埋め問題とはいえ、お見事な類想類句! まさにこういうケーススタディがしたかったのです、お三方、被ってくれてありがとう‼︎
「ひとつの信号機」が登場するのは「村」だけではありません。
“とてもいい”

春夕焼にひとつの信号機

 

春夕焼にひとつの信号機

西村小市

「島」も二人が完全一致。続けて読むと、同じ島にある村なのかとすら思えてきます。中七の頭二音で指定した場所こそ違えど、いずれも「村」「島」というひなびた場所。「ひとつの信号機」というフレーズを思いついたとして、それはどんな場所にあるのか? 連想を重ねると必然、こういった場所が導き出されるのでしょう。
“良き”
島にひとつの信号機

春夕焼にひとつの診療所

木染湧水

 

春夕焼にひとつの診療所

にゃん

 

春夕焼にひとつの診療所

もりたきみ

今度は「島」はそのままに、下五が変わりました。こんな診療所が舞台の漫画があったような気がする。「信号機」と違って、わざわざ訪ねる必要のある「診療所」を置くと、「ひとつの」という言葉はより特別さを帯びてきます。「のどかな島のやさしいお医者さん」かもしれないし、「逼迫した地方医療の現状」かもしれないし。読み手の性格に左右されるところ。
“激励”
島にひとつの診療所

春夕焼にひとつの金平糖

れんげ草

金平糖はその可愛い形のためか、句材になりやすい食べ物です。

 金平糖といえば? →食べるもの。
 食べる物はどこにある? →口にある。

……という思考経路での「口」でしょうか。同じ口の中でも、「春夕焼頬にひとつの金平糖 門司区ビリケン」は範囲を小さく絞っているのが違い。もごもごした頬に金平糖の角が確かな存在感。

春夕焼瓶にひとつの金平糖 谷山みつこ」「春夕焼壜にひとつの金平糖 郡山の白圭」は漢字は違えど共に「びん」。字の由来としては前者が陶器、後者がガラスを意味するのだそうです。容器の種類が違ってくると、映像の見え方も変わってきますね。
“良き”
口にひとつの金平糖

春夕焼にひとつの傷のあり

喜祝音

金平糖を含んだ頬もあれば、傷のある頬もあります。

「傷」は主に物質や肉体に付随するものですから、必然中七の二音分には身体の部位が入りやすい。「春夕焼ひざにひとつの擦り傷 ひつじ」「春夕焼ひざにひとつの擦り傷あり 白兎」はどんな傷か、その種類を具体的にします。縫ったりしているわけではない、と。

春夕焼指にひとつの浅き傷 おこそとの」は肉体の部位が変わります。「浅き傷」が負傷の程度を明確にしました。うっすらと切れてしまうこと、ありますよね。「指」ならば「浅き傷」があっても自然なチョイス。

春夕焼脛にひとつの傷ぢゃない 江藤すをん」は変化球。肉体の部位を用いながら、意味はまったく別。「脛に傷を持つ」=「隠し事がある。内心やましいところがある」という意味になります。しかもその傷はひとつではないらしい。おやおや。なにかに追われるような春の夕暮には長い影が伸びる。
“ポイント”
頬にひとつの傷のあり

春夕焼にひとつの秘密あり

小倉あんこ

 

春夕焼にひとつの秘密あり

みづちみわ

なぜか「秘密」で登場するのはもっぱら「夫」のようです。「秘密」という単語の持つイメージは、組み合わされる言葉によってプラスの方向にもマイナスの方向にも振れ得ます。たとえば「秘密のスイーツ」「秘密の名酒」なんていうと、隠れた名店の美味しそうなモノをイメージしますよね。逆に「組織の秘密」だの「本社上層部の秘密」なんていうと、陰謀の臭いがぷんぷんしてきます。

さあて、「夫」と「秘密」が組み合わされるとどうなのか。ちょっとした可愛い「秘密」をもっている「夫」か、イケナイ「秘密」にうつつを抜かす「夫」か。読み手によって全然違う夫の姿が出現しそうです。

春夕焼恋にひとつの秘密あり 毒林檎」は「恋」の甘やかさが「秘密」のイメージの陰陽を両方包み込みます。さきほどの「夫」の場合、「夫」という個人の性質について述べることになりますが、「恋」を置くと少し違う。個人的な体験としての読みに限らず、「恋」についての通説、あるいは「恋」という概念への定義のような意味合いを持ち始めます。「恋ってものには秘密があるもんだよね~」みたいな話。「秘密」は話を大きくも小さくもできる力がありそうです。
“良き”
夫にひとつの秘密あり
 

春夕焼にひとつの嘘ありて

飯村祐知子

 

春夕焼にひとつの嘘ついて

朝月沙都子

 

春夕焼にひとつの嘘をつく

眠 睡花

 

春夕焼にひとつの嘘をつく

風花まゆみ

 

春夕焼吾子にひとつの嘘をつき

加加阿

 

春夕焼にひとつの嘘をつき

まあぶる

 

春夕焼にひとつの嘘をつき

ちえ

見事に嘘をついております。壮観です。これぞ類想。

誰を対象にしているのかに多少の差異はあれど、こうやって並べると共通する部分が見えてくるのが面白い。「嘘」という名詞は、動詞「つく」を伴いやすいようです。最も日常的に使う言葉に近い言い回しですから、当然といえば当然。

ここに類想類句を回避するための糸口がひとつ見つかるかもしれません。

句を作ったあとに一度、こう自問自答してみましょう。「この言い方(動詞)って普段からしてるよね?」と。
“激励”
君にひとつの嘘をつく

春夕焼にひとつの嘘を見る

沙那夏

上の“嘘”グループでいえば、《眠 睡花》さん、《風花まゆみ》さんの句と下五の助詞までは同じです。実に十五音まで同じ。最後の二音の動詞を工夫することで、他の類想との差別化ができています。まず「嘘」を行う人物が自分か相手かが変化します。

さらに、言葉だけでなく、動作や物の様子に嘘を見いだした瞬間であるとも読める。心の襞が反応した瞬間。両者を並べて味わうと、その鮮度の違いに驚きます。
“良き”

春夕焼にひとつの嘘を添え

やま猪口

こちらもラスト二音での差別化。加えて、中七で指定する対象も「恋」という抽象的なものになっています。直接的な行いではなく「添え」る程度。やんわりとした動作を導くには「君」などの具体的な対象ではそぐわない、との判断でしょうか。

それぞれの作品を例に見ていくと、この「○○にひとつの△△△△△」フレーズの場合は下五の影響力の方が大きく、下五になにを置くかによって、中七頭の二音が変化する傾向が強いのかもしれません。
“ポイント”
恋にひとつの嘘を添え

春夕焼にひとつの嘘「元気」

しみずこころ

さっきの“嘘”グループでは《まあぶる》さん、《ちえ》さんと「~嘘」までは同じ。ラスト三音での差別化が秀逸です。カギ括弧を使うことで、人物の言葉であることが明確になります。「元気」という言葉は嘘である。元気なはずはない、と知っている切なさ。カギ括弧を伴ったたった三音だけで、病状や家族との関係性まで想像させてくれました。
“良き”
母にひとつの嘘「元気」

今回のドリルde俳句出題にあたり、正人個人としては、最も多く寄せられるのは「村にひとつのほにゃららら」的な回答なのではないかと予想していました。(本当にめちゃくちゃよく見るんです、いろんなところで。)

が、蓋を開けてみると違った結果が出てきたわけです。多種多様な類想が並び、しかも中には極めて似た回答が複数の方から寄せられるとは。データが集まって初めてわかることがあるな、と実に意義深く感じております。

ところで、皆様。ここまでの回答紹介で気になりませんでしたか?
複数のジャンルに渡って共通する頻出ワードがあるのです。
 
“ポイント”