写真de俳句の結果発表

【第5回 写真de俳句】《ハシ坊と学ぼう!①》

第5回のお題「廊下の吊り雛」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

「ハシ坊」と学ぼう♪ 「おウチde俳句大賞」、 たくさんのご応募、ありがとうございました!  オープンキャンペーンの締切は今月3月末です! 3月31日の時点で有料会員の人全員に、 「おウチde俳句手帖」をプレゼントするよ!  発送は4月中旬〜末頃の予定なので、 登録した住所に間違いがないか、確認してネ!今回は、春頃の兼題写真に使って貰えたらと、 まだコロナが広がる前に訪れた 茨城県・真壁のひな祭りの時の写真をお送りしました。 あざとく時期を狙ったとはいえ、本当に採用されるとは…… これは、インサイダーな私は、 頑張って良い句を作るしかないですね(笑)   また、以前の回で、拙句を人選に選んで頂いた上に、 貴重なハシ坊コーナーにまで取り上げていだだき 本当にありがとうございました。   私のくだらない自句自解が 先輩諸氏のお目に触れたのかと思うとお恥ずかしい限りですが、 ここは学びの広場と割り切り、 あんなもんで何某か他の皆様の参考になれば 恥をかいた甲斐もあるというものだと思う事にしました。   「俳句ポスト365」の過去の回を見ていたら、 一桁台の回数の頃には、添削コーナーがあった事を知り (現在は、投句数がその頃の10倍のようなのでとても無理かと…)、 羨ましく思っていましたので、 ここのハシ坊コーナーは、本当に貴重な場です♪  東京堕天使

玻璃窓のくすみてゆかし吊るし雛

野良古

夏井いつき先生より
「くすみてゆかし」の描写はちゃんとできているのですが、「くすむ」と「ゆかし」が調和しすぎて、勿体ない。描写に徹するか、余情を入れるか。最後のブラッシュアップです。
“良き”

嫁にゆき雛だけ出すも吐息かな

風呂猫

夏井いつき先生より
「これはこれで直接的過ぎるのか……? 夫婦二人で娘とのひな祭りを思い出して、ため息をつくのじゃないかしら、という実体験のない想像なのですが」と正直に語る作者。

実体験がないと、どうしてもありがちな発想になっていきます。実体験ほどリアリティとオリジナリティを兼ね備えている句材はありませんからね。想像で作る場合は、「脳内吟行」というかなり高度な想像力を必要とします。まずは、兼題写真を触媒として、自分の体験を掘り出す作業をしてみましょう。
“難しい”

さげもんの揺るる水面や春炬燵

きなこもち

夏井いつき先生より
「どんこ舟の炬燵に入りながら、さげもんを見ている様子を描きたいと思いました」というのが作者の意図。

「舟」であるという状況がこれだけで分かるかどうか。「水面」だけでは厳しそうです。
“難しい”

お茶うけのテーブル狭し吊し雛

洒落神戸

夏井いつき先生より
「吊し雛を飾っているおウチに、近所の人たちが集まってお茶をしているイメージです」と作者。

季語を主役にする配慮を少し入れると、人選になります。

添削例
吊し雛揺れお茶うけの卓狭し

「吊し雛」が揺れるのは当たり前のことですが、「吊し雛」の描写を少し足すと、言葉のバランスが季語の方に寄ります。「揺れ」以外に、二音で何かできるとさらによくなる可能性もあります。
“良き”

春ごとのシフォンの声の外科医かな

くま鶉

夏井いつき先生より
「シフォンの声」という表現が詩的です。「春ごと」は「春が来る度」という意味か、「春ごと=関西地方で、陰暦二、三月から四月にかけて行なっている春の事祭り」であるのか。ちと悩みます。
“良き”

雛飾急ぎ下校のはしゃぎ声

ハルノ花柊

雛飾ひとつ出してははしゃぎ声

ハルノ花柊

夏井いつき先生より
「一句目『雛飾急ぎ下校のはしゃぎ声』の推敲です。『急ぎ下校』は説明的かと思い、はしゃぎ声がすぐそこに聞こえるように直してみました」という作者。

ここまでの考え方は正しいですね。「ひとつ」によって一つずつ、手にとって取り出している感じがでてきました。となれば、「雛飾」ではなく「雛ひとつ」でよいですね。「飾(かざり)」の三音が節約できますので、さらに推敲してみましょう。
“ポイント”

暮れかぬる廊下の奥を諸鈍の海

黒子

夏井いつき先生より
「映画『男はつらいよ』の舞台となった、加計呂麻島(かけろまじま)の『リリーの家』。その廊下のどん詰まりに広がる諸鈍の海を表現しました」と作者より。

うーむ、各自の情報の有無によって、この句を理解できるかどうか、判断が大きく分かれます。前書き、あるいは後書きが必要になるか。
“激励”

シニア猫小さきジャンプつるし雛

房総たまちゃん

夏井いつき先生より
「老猫なので、届かないけどつるし雛を捕りたいという句です」と作者のコメント。

上五「シニア猫」という表現が気になります。「老猫」あるいは「太りたる猫」など、表現を考えてみて下さい。
“ポイント”

老い猫のへそ天真上つるし雛

房総たまちゃん

夏井いつき先生より
「『へそ天』はおなかを出して寝てる様子です。つるし雛の暖かい空気を、老い猫が感じてるという句です」と作者のコメント。

材料が一つ多いのです。「老いた猫が寝ている」+「つるし雛」か、「へそを天に向けて寝ている猫」+「つるし雛」か、どちらかにしましょう。あるいは、それぞれ作ってみるのもいいですね。
“難しい”

レジ袋より肉・チーズ・雛あられ

石井一草

夏井いつき先生より
並列にする場合には、小さな意外性が必要。全て食べるものになっているのが、惜しいのかもしれません。どんなものを出すか、これがまさに取り合わせの妙になっていきますので。
“難しい”

ひとりだけ住む家広し春寒し

ゆすらご

夏井いつき先生より
「もし、この家に私ひとりになったら……と考えたら、寒くて寂しいと思った日を詠みました」という作者。

その「もし」という想いを、正直に句に入れることができたら、読む人の心を打つはずです。
“ポイント”

誰もゐぬ館を雛の垂れ徹す

内藤羊皐

夏井いつき先生より
下五「垂れ徹す」は少々強引な表現です。
“良き”

隣室のけはひの欄間はるの宵

東京堕天使

夏井いつき先生より
「襖で隔たれた向こう側のイメージです。『欄間からとなりのけはひ春の宵』からの推敲句です」と作者のコメント。

推敲前の「となりのけはひ」は、これでよいように思います。「隣室」という言葉が、襖の向こうの間というニュアンスにそぐわない感じ。

添削例
欄間よりとなりのけはひ春の宵

添削例
春宵の欄間よたれかゐるけはひ

前者なら、襖一枚隔てて泊まる宿。後者なら、自宅あるいはどこかのお屋敷。どちらのニュアンスが伝えたいのかな。
“ポイント”
 

チョロQのゴールは欄間つるし雛

杜まお実

夏井いつき先生より
「今は亡き祖母の家と、あまりにそっくりな今回の兼題写真に思い出が蘇りました。撮影者である《東京堕天使》さんに感謝です! 二間続きの和室や長い廊下は子供の遊び場。私の孫なら『チョロQ』レースでしょうか!? 『吊り雛』は歳時記に載っていなかったので、使用して良かったのか少々不安です……。兼題写真のタイトルが『吊り雛』ですが、我が地域は『つるし雛』と呼んでおります」と作者のコメント。

「欄間」とは、採光、通風、装飾といった目的のために、天井と鴨居との間に設けられる開口部材をいいます。「チョロQ」は床を走らせるオモチャですから、その「ゴール」が天井と鴨居の間にある「欄間」というのが、分かりにくいですね。欄間の下をくぐったら? という意味かもしれませんが、それが分かるような書き方をする必要があります。
“参った”
 

母の字の「さげもん」の箱初雛

梵庸子

母の字で「さげもん」届く初雛

梵庸子

夏井いつき先生より
【一句目】「実家が福岡県にあるため、吊るし雛というと柳川の『さげもん』を思います。長女の初節句のとき、実家の母がさげもんを送ってくれたのが、とても嬉しかったです。毎年段飾りの左右に吊るしています。全国的にはあまり知られていないと思いますので、『さげもん』とカギ括弧をつけるべきか、諦めて『吊るし雛』とすべきか、迷いました。さげもんの句をいくつか投句します。『 』を付けた句は『 』を生かす内容にしました」
【二句目】「『初雛に母の字で「さげもん」届く』とすると、説明的・散文的になるかと思い、この語順にしました。季語『初雛』を『はつひいな』と読んで、下五に置いてもよろしいのでしょうか」と作者のコメント。

二句とそのコメントを読んで、表現したいニュアンスは分かりました。カギ括弧問題ですが、母の字で書いてあるということを強調する意味で、カギ括弧をつける判断は、これはこれでよいと思います。
あと考えるべきは、「届く」を書くか書かないか、です。

添削例
母の字で「さげもん」とある初雛

添削例
初雛届く「さげもん」とは母の字
“ポイント”