写真de俳句の結果発表

【第5回 写真de俳句】《ハシ坊と学ぼう!②》

第5回のお題「廊下の吊り雛」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

雛縫いて夕食少し遅れせう

亀田かつおぶし

夏井いつき先生より
「雛縫いて」と「遅れせう」、仮名遣いに問題があります。歴史的仮名遣いで書きたいのですよね。
ならば「縫う」は「縫ふ」、ハ行です。「~て」に接続する場合は「縫ひて」ですが、音便を発生させるならば「縫うて」とすることもできます。
「遅れせう」は、遅れそうです、という意味を言いたいのだと思います。ならば、「遅れさう」です。

添削例
雛縫うて夕食少し遅れさう

これならば、人選に推せますよ。
“ポイント”
 

吊りびなの古布の匂いし雛の宿

亀田かつおぶし

夏井いつき先生より
「古布」の嗅覚をもってきているのが良いバランスです。惜しいのは「し」。これは過去の助動詞「き」の連体形です。この場合は、今、その匂いに気づいていてこその句ですから、そこを微調整しましょう。

添削例
吊りびなの古布の匂へる雛の宿

さらに、「吊りびな」と「雛の宿」が少々さわりますから、この句の場合は「吊り雛」を季語として、下五の展開をさらに工夫することも可能です。
《亀田かつおぶし》さんの句は、今後発表される並選の句も、どれも後一押しで人選になりそうなものばかり。推敲してみてください。
“とてもいい
 

縁側の揺れるつり雛さやさやと

清雅

夏井いつき先生より
「引き戸をあけて、つり雛が風に揺れるさまを詠みました」と作者のコメント。

まさに、そのような光景を詠みたかったのだと分かります。「さやさや」があれば「揺れる」は不要。

添削例
縁側のつり雛さやさやと○○○

最後の三音で「つり雛」を描写できれば、人選に入ってきます。
“難しい”
 

寮番の廊下をすべる初電話

いなだはまち

夏井いつき先生より
「寮番」と「初電話」の取り合わせ、この光景は良き句材です。中七、特に「~をすべる」という描写は要一考です。
“良き”

空き缶に折り紙の顔雛祭り

信茶

夏井いつき先生より
「空き缶」に「折り紙」で雛の顔を貼った、という光景でしょうか。ならば、下五「雛祭り」とするのではなくて、「雛」を季語として描写しましょう。
“良き”

吊り雛を作りし着物解きたる

京あられ

夏井いつき先生より
「吊り雛を作りし」の「し」は、過去の助動詞「き」の連体形です。ですから、この句は「吊り雛を作った着物を解いた」という意味になります。時間的な順番としては、「解いた着物で吊り雛を作った」のではないでしょうか? 推敲してみて下さい。
“ポイント”

ねんねこの雛の目線に春の空

那須のお漬物

夏井いつき先生より
「ガラス戸の縁側で、ねんねこにくるまる吊り雛の遠くを見る先は、ほんのりと霞んでいる時もあるが、清々しい春の青空である」と作者。

上五から中七にかけて「ねんねこの雛の」と続くので、意味が取りにくいのが問題点です。「雛」「春の空」と季重なりなのも気になります。

添削例
吊り雛の空ねんねこの子の目線

「吊り雛の空/ねんねこの子の目線」斜め線のところに意味の切れ目がある、句またがりの型です。
“激励”
 

明け染める廊下に足音蜆汁

つづきののんき

夏井いつき先生より
「古びた宿の木の廊下では、足音や軋みがひびき、懐かしい思いがします。朝早く、朝食の支度に足音と香が漂い、心地よい起床が誘われます」と作者のコメント。

上五「明け染める」という時間帯、中七「廊下」という場所と「足音」。ああ、夜明けなんだな、廊下から足音がしてるんだなと思ったとたん、いきなり下五「蜆汁」がでてくるのが気ぜわしいのです。一句に詠み込んでいる時間軸や場面が多すぎるということです。推敲してみましょう。
“難しい”

廻廊のたんぽぽのわた吸うルンバ

背番号7

夏井いつき先生より
「たんぽぽのわた」を「ルンバ」が吸っているという場面が面白いです。「廻廊」はかなり広い屋敷? 寺や神社? 上五がちょっと気になります。
“とてもいい

並べ置く雛の調度の黒光り

夏埜さゆり女

夏井いつき先生より
「お雛様を飾っていた幼い頃の記憶では、調度品が印象に残っています」と作者のコメント。

中七下五「雛の調度の黒光り」は、まさにその描写ですね。惜しいのは上五です。雛の調度ですから、並べ置かれていることは想像つきます。上五で変化球を投げることができると、一気に人選以上にいく可能性もあります。

添削例
○○○○や雛の調度の黒光り
“難しい”
 
 

金婚や祝いの宿に吊し雛

風蘭

夏井いつき先生より
中七「に」が散文的な助詞の使い方です。せめてここは「の」でしょう。
“ポイント”

母と子と芹摘み帰る春夕焼

小池令香

夏井いつき先生より
「子供が小さい頃は、よく皆で芹摘みに行きました。ちらし寿司や、お吸い物、お浸しなど、家族のおかずになりました」と作者のコメント。

「芹」と「春夕焼」、どちらも季語です。「芹」で春だと分かり、「摘み帰る」で時間経過も分かるので、むしろ「春夕焼」は不要かと。俳句における五音は、作品の約三分の一。添削というよりは、創作の範疇です。下五の展開によっては、すぐに人選になりますよ。
“良き”

踏み石にちょんちょん歩く雀の子

玉井令子

夏井いつき先生より
「雀の子が庭の踏み石の上にとまって歩いている景を詠みました。我が家の庭にも雀の子が来ることがあるので、写真の庭にもそういうことがあるのではと想像してみました」と作者のコメント。

上五「に」が損です。「に」は場所ですから、そこにじっといている感じ。

添削例
踏み石をちょんちょん歩く雀の子

助詞「を」は、動いている感じですね。
“ポイント”
 

がたがたと玻璃の窓鳴る春疾風

玉井令子

夏井いつき先生より
「春一番の強風に、ガラス戸がガタガタと音を立てている景を詠みました」と作者のコメント。

上五「がたがた」とあれば「鳴る」は不要です。下五に季語「春疾風」があるので尚更ですね。
“参った”

十何年納戸住まいの雛を出す

夏井いつき先生より
「この兼題を受けて、娘たちのお雛様を出してみました」という作者。

俳人として良き心がけではありませんか。その臨場感を少し添えてみましょう。

添削例
十何年納戸住まいの雛出さん
“ポイント”

稲取やつるし雛にも金目鯛

海羽美食

夏井いつき先生より
「十五年ぐらい前、何度か静岡県の伊豆稲取へ行く機会がありました。その頃、稲取の推しは金目鯛で、つるし雛は地元の方たちの手作りコーナーの雛飾り、という位置だったと思います。が、今やつるし雛はメジャーな飾り雛として全国的に売り出され、金目鯛も当時より更に高級魚となってしまい、世の中の変遷に驚くばかりです」と作者のコメント。

中七「~にも」がやや散文的です。ここは、せめて「なる」かなあ。

添削例
稲取やつるし雛なる金目鯛
“難しい”