写真de俳句の結果発表

【第5回 写真de俳句】《ハシ坊と学ぼう!⑧》

第5回のお題「廊下の吊り雛」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

ちりめんのぽこぽこ羽化す春の雲

まこ

夏井いつき先生より
「ちりめん」は布の種類だとは思うのですが、白子干しのことを「ちりめんじゃこ」といい、「ちりめん」とも略します。布らしさをどこかに入れると、誤読は避けられます。
“ポイント”

雛の間に樟脳の香の夕まぐれ

もりたきみ

夏井いつき先生より
「初めは『雛の間の樟脳の香や夕まぐれ』としていましたが、薄暗い夕方が忍び寄ってきた感じにしたくて、この句にしました」と作者のコメント。

やはり「や」は少し強すぎるかと思います。「の」の選択は、作者が表現したいことに見合っています。ただ、「雛」と「樟脳」の句は、かなりあることも申し添えておきます。
“難しい”

吊り雛やきしむ廊下にそっと揺れ

こたま

夏井いつき先生より
「兼題写真の中に入ると、だれかが廊下を歩く音が聞こえてきました。それを表現したかったのですが、どうもヒネりがないように思います。これではいけませんね……」と作者のコメント。

下五「そっと」は無くてもよいかと。廊下のきしみが聞こえるほどの静けさですから、吊り雛の揺れ方も想像はつきます。俳句における三音は、あと一つ何かできる音数です。
“参った”

時重ね生地はあめ色吊るし雛

麦星

夏井いつき先生より
「吊るし雛は、着物を解いた古布で作られています。近づいて見ると、色褪せたりあめ色に変わった生地が醸しだす優しい風合いに、子を思い、針を動かしていた母たちの気持ちが伝わってくるようです」と作者より。

中七「生地はあめ色」という映像があれば、上五「時重ね」という説明は不要です。五音節約できるので、新しい情報を入れることも可能です。
“激励”

三月のちりめん細工に孵化の芯

池内ときこ

夏井いつき先生より
発想はとても面白いと思います。「孵化」という比喩をどこまでリアルに受け止めてもらえるか、そこはちょっと気になるけど。
“良き”

直角に床拭けば木の芽風かな

山本先生

夏井いつき先生より
「知人の寺の廊下を、雑巾掛けしたことを思い出しました。九十度の曲がり角が印象的であったので、詠み込みました。接続助詞の『ば』が、因果関係っぽくなってしまっていないか悩みました」と作者のコメント。

直角に拭くということと、九十度に曲がるということは、少し違いますね。そこをきちんと描写する必要があります。この句の場合、下五「かな」はあまり利いていません。是非、推敲して下さい。
“難しい”

三鬼忌のそうつと倒す七対子

碧西里

夏井いつき先生より
「兼題写真の家が、親戚の家の中庭に面した部屋の雰囲気にちょっと似ています。正月はその部屋で親戚麻雀をします(2021年はコロナ禍でできませんでしたが)。七対子(チートイツ)は麻雀の役の一つです。初春の季語にするか迷いました」と作者のコメント。

中七「そうつと」は、ありがちな描写。季語との取り合わせをどうするかは、さらに悩んでみて下さい。
“激励”

着ぬままに奥にしまいし春陽ざし

山口ながれ

夏井いつき先生より
「例年のお正月のように、家族や親戚と会う時に着ようと新しい服を買っていました。コロナ禍で誰とも会えず、その服も着ないまま春になってしまいました」と作者のコメント。

この書き方だと、「春陽ざし」を奥にしまったことになります。
“参った”

ゆりかごの吾子掴まんと吊し雛

茶木美奈子

夏井いつき先生より
「この語順で良いのでしょうか。最初は『吊し雛掴まんとゆりかごの吾子』としていましたが、語順を逆にしました。ただ、この語順だと散文的で面白くないように思います。とはいえ季語が最後にあるので、季語の映像で終わる効果はあるかとも考えました。一番の問題点として、この兼題写真であの吊り下げ式玩具を詠むのは、類想の気がします」と作者のコメント。

推敲の考え方は正しいと思います。ただ、最後に指摘されているように、赤ちゃんが吊し雛を掴もうとしているという発想は、かなりありました。
“良き”
 

母になる娘の幸を祈る雛

てんこ

夏井いつき先生より
「娘はお産のため、雛飾りを顧みる余裕はありませんが、娘の雛たちは幸せを祈り続けているということを表現しました」と作者のコメント。

後半「幸を祈る」は不要です。季語「雛」そのものに、その思いが入っています。

添削例
母となる子よ吊り雛の○○○○○
“激励”

妻娶り白酒に酔う白髪かな

安楽人

夏井いつき先生より
「男子ばかりの家に嫁がきて、初めてのひな祭りに喜ぶ両親を描きました」という作者。

この「妻」を娶ったのが、「白髪」の人物だと読めてしまいます。誤読されないように推敲してみましょう。
“参った”

目を細め夢と希望をちりめんに

陽調波

夏井いつき先生より
「ちりめん」を季語としてとらえると、「ちりめんじゃこ」「白子干し」の意味になります。
“難しい”

狭くとも家族で祝う吊るし雛

横じいじ

夏井いつき先生より
「我が家に吊るし雛を飾りたいのですが、狭い家なので小さな吊るし雛で、家族で祝っている状況です」と作者。

上五「狭くとも」という言い方が散文的です。

添削例
○○○○○狭き我が家の吊るし雛

これで、原句で言おうとしたことが入りましたので、上五をどうするか考えてみましょう。
“ポイント”

風吹きてガラス窓揺れ雛の揺れ

まゆ

夏井いつき先生より
「風が吹いてきた様子を想像しました」と作者より。

中七下五があれば、上五「風吹きて」は不要です。
“激励”

この雛に頼みし願うコロナZERO

km0916

夏井いつき先生より
「コロナ禍の一年を過ぎようとするこの春、ワクチンを期待し、以前の生活を取り戻せることを願います」と作者のコメント。

季語「雛」は、子の健やかな成長を願うもの。「コロナ」までは引き受けにくいかもしれないなあ、お雛さまも(苦笑)。
“難しい”

雛あられ戸棚の中で白骨化

文寂

夏井いつき先生より
「毎年雛あられを買いますが、最後まで食べきれたためしがありません」と作者のコメント。

うーむ、「白骨化」は面白いといえば面白いが、季語「雛あられ」は切ない主役やな(苦笑)。
“参った”

輪になりてひそひそ聞ゆつるし雛

碧水

夏井いつき先生より
「聞ゆ」が分かりにくいかなあ。「つるし雛」が「輪になりて」というのも、形としてそれでいいのかどうか迷います。いや、ひょっとすると、つるし雛ではないものが輪になってるのか? 読み手としては迷います。
“難しい”

雛見つつどんこ船ぐいと進みけり

央泉

夏井いつき先生より
「先日、家の中からの柳川のどんこ船の様を詠みました。今回は、素直に船からの景を詠みました。ぐいで竿をさして押し進むと詠んでいただけたでしょうか。下五が字余りとなってしまいました」と作者のコメント。

「どんこ船」から、柳川だと分かってくれた人は、吊し雛の光景を思ってくれる、と信じましょう。

添削例
どんこ船ぐいと進みぬ吊し雛
“ポイント”
 
 

おぼろ夜をそつとしぼりてくくり花

斉藤立夏

おぼろ夜をしぼりて白きくくり花

斉藤立夏

夏井いつき先生より 【二句目】おぼろ夜をしぼりて白きくくり花 評価    人 
【一句目】「『くくり花』はちりめん細工の一つで、飾り雛の彩りとしても用いられます。初めは『おぼろ夜の糸をしぼりてくくり花』としていましたが、『糸』が説明的のような気がしたので変えてみたものの、上五の『を』と『そつと』に少し迷いがあります」
【二句目】「推敲句です。『そつと』という曖昧な言い方をやめて、『白き』と色の描写を足しました」と作者のコメント。

推敲の考え方、正しいですね。「くくり花」という用語を知らない人もいるでしょうが、それは一種の専門用語として使うしかないですね。
この形でひとまずキープしておきましょう。ひょっとすると、さらに鮮やかな表現が見つかるかもしれません。
“とてもいい

初雛や代わってくれぬ耳の切れ

みおつくし

夏井いつき先生より
中七下五の意味が取りにくいなあ。自分の耳が聞こえにくくなってるのか?
“難しい”