写真de俳句の結果発表

【第5回 写真de俳句】《ハシ坊と学ぼう!⑨》

第5回のお題「廊下の吊り雛」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

踏石へ寝転ぶ猫や暖かし

山川腎茶

春暖や踏石へ猫飛び降るる

山川腎茶

夏井いつき先生より
【一句目】「春らしく、暑くも寒くもないほどよい日に、猫が庭の踏石の上で寝転んで遊んでいる様を詠みました。『猫や』と『猫の』で迷いましたが、下五が『暖かし』という大きな季語なので、『や』で詠嘆し、言いたいことは季語に託しました」
【二句目】「春らしい日に、中庭の踏石に猫が廊下から飛び降りている様を詠みました」と作者のコメント。

一句目の猫は、寝転んでいるのですから、「踏石へ」ではないでしょう。二句目の猫は、飛び降りているので、「踏石へ」でよいと思います。
“ポイント”

桃の日や女三代童のごと

箕かづき

夏井いつき先生より
「兼題写真から、古いお家の御座敷に、娘、母、祖母。祖母の子供の頃のお人形を囲んでの賑やかな桃の節句の語らいを思い浮かべました。上五『桃の日や』か『桃の日の』にするか、また、下五の字余りに悩みました」と作者のコメント。

問題なのは、下五です。「童のごと」と感じたのは、女三代のどんな様子を見たからなのか。そこを描写しましょう。
“ポイント”

ひな祭り嫁ぎしあの娘も二児の母

河内ごんた

夏井いつき先生より
語りがやや散文的です。

添削例
嫁ぎたる子も二児の母ひな祭り
“激励”

幼き夜朝日がもどし雛の顔

司香

夏井いつき先生より
「はじめて投句します。幼い頃、夜に見る雛の顔はどこか怖く、朝になると、朝日で明るくなるからか、ほっとしたという様を描きましたが、良いのか悪いのかわかりません」と作者。

描いている時間が、やや長すぎて分かりにくいのです。このようなことが言いたいのであれば、むしろ「夜見る雛の顔はどこか怖く」という部分を一句にしてはどうでしょう。
“ポイント”

吊り雛や横に干したるよだれかけ

丹波らる

夏井いつき先生より
この光景がおもしろいです。となれば、「や」ではないほうがよいか。

添削例
吊り雛の横に干したるよだれかけ
“良き”

つるし雛振れてドキリも震度1

紅雨

つるし雛振れて驚く!震度6

紅雨

夏井いつき先生より
どちらも中七「ドキリ」「驚く!」と書かなくても、充分驚きます。
“難しい”

行きし君焦がれ巡りて花のころ

風花

夏井いつき先生より
「去年(2020年)の夏に亡くなった彼のことを毎日想ううちに、季節が巡ってしまいました」と作者のコメント。

この字面「行きし」だと、ただ別れたみたいなニュアンスになるので、「逝きし」としてはどうでしょう。中七は、さらに推敲の余地がありそうです。
“ポイント”

床に豆や母の背中と雛飾り

宮澤ゆき

雨降る日立春の雛惜しみ発つ

宮澤ゆき

夏井いつき先生より
【一句目】「留学のため、桃の節句を待たずして日本を発ちました。そんな中、母はお雛様を出そうと、節分の翌日に雛飾りをしてくれました。飾り付けをしてくれている母と、寒いからとこたつの中に入ったまま手伝わない私。母の背を見て、お互い寂しさを感じながらも口にしませんでした」
【二句目】「一句目は伝わりづらいと思い、もう一度考え直しました。母が渡航する私のために飾ってくれた雛飾り。数日しか見られなかったけれど、お雛様は母の寂しさ、思いやりを溢れるほど含んでいて、私もやりきれないほどの寂しさを抱えて日本を出発しました」と作者のコメント。

推敲の考え方は正しいですよ。さらに、日本を出発する、という事情を書くことができると、母の心情に寄り添えるのではないでしょうか。もう一踏ん張り、推敲してみましょう。
“とてもいい

際で止め。廊下のつり雛はいはい児。

緑風

夏井いつき先生より
「赤ちゃんは、あっという間に、目的物を追い越して、落ちるかと思うと止まります。かわいいですよね」という作者。

俳句の表記において、句読点を使うのは特殊なケースのみです。五七五の間を空けるのも、間違った書き方です。
“激励”

蛤吸ぞあんたの戻り来たりなば

雨子

夏井いつき先生より
「戻って来たのは、私です。出戻りでございます」と作者のコメント。

このコメントが面白いよ、《雨子》さん。私も出戻りです。雨子さんに捧げる一句。「出戻りの我ら蛤吸熱うせよ」 ははは!
“とてもいい

夫の亡き女系三代雛の朝

雨子

夏井いつき先生より  評価    人 
「私の母方の祖母、母、姉は早くに夫を亡くし、子供を育てて生活を支えてきましたが、とても自由でのびのびしてしていました。 元気な感じを出したく、敢えて『雛の朝』としてみました」と作者のコメント。

今回、「女系三代」という言葉と「雛」を取り合わせた句、かなりありました。が、この句は最後の「朝」の一語で、颯爽たる現実の生活が見えてきます。たった一単語の工夫ですが、こういうのが大事なのだと思います。
“とてもいい

かすかなる玻璃の歪みの春めけり

片野瑞木

夏井いつき先生より
「『春めけり』という使い方について。歳時記に載っている俳句で使われている例もあるのですが、文法的にはどうなのでしょうか? 『けり』は活用語の連用形に接続するのだから、『春めきけり』となるのではないのか? と、乏しい知識で考えたりしています。『夫』と書いて『つま』のような俳句特有の使い方なのでしょうか?」と作者からの質問。

この「めく」は接尾語だと思います。辞書の解説は以下。
 

【め・く [接尾]《動詞五(四)段型活用》名詞、形容詞・形容動詞の語幹、副詞などに付いて動詞を作り、そのような状態になる、それに似たようすを示す意を表す。】


四段活用なので、「春めく」が終止形。活用は「か・き・く・く・け・け」ですね。この場合、完了の助動詞「り」に接続するのは、命令形なので「春めけ」+「り」、となります。
“ポイント”