写真de俳句の結果発表

【第5回 写真de俳句】《ハシ坊と学ぼう!⑩》

第5回のお題「廊下の吊り雛」

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

底の色光る仔猫のための水

登りびと

夏井いつき先生より
「~の色光る仔猫のための水」というフレーズに強く惹かれます。「底の」とは、飲むための水を入れた器ですか? それとも川とか池とか、そういう「底」? そこが気になるのですが、残りの音数が少ししかない。うーむ、まずこのカタチを保険としてキープしておいて、脳の隅にこの句をストックしておきましょう。ある日突然、あ! とスゴ技を思いつくかもしれません。
“良き”

マスクかな聞き取り難い子守唄

宇野翔月

夏井いつき先生より
「仕事帰りのOLさんの大変な様子を詠みました」と作者より。

上五の「かな」はあまり利いていません。「マスクして」でいいかな。
“参った”
 

秋高し赤きベンチを小麦の香

ありあり

秋朝を赤のベンチのパン屋まで

ありあり

夏井いつき先生より
【一句目】「《第一回 並選》『秋朝や赤いベンチのベーカリー』の推敲句(その1)です。パンの種類を加えることを試みましたが、内容過多になってしまうかと思い、香りだけ残しました。季語も変えて別の句になりました」
【二句目】「推敲句(その2)です。平板なので動きを加えてみました。作句時の気分にぴったりではあるのですが、やはり薄味でしょうか」と悩む作者。

作者の表現したいことを実現するのが、一番大事なことです。作句時の気分にぴったりならば、そこに照準を合わせればよいかと思います。

添削例
秋の朝赤きベンチのパン屋まで
“ポイント”

飛行機となるべく猪の疾走す

凪太

疾走の猪の視線の先に雲

凪太

夏井いつき先生より
《第二回 ハシ坊と学ぼう!③》『飛行機になりたい猪の助走かな』を推敲しました」と作者のコメント。

なるほど、そういう感覚ですか。それはそれで面白いと思います。一句目は「~なるべく」が気になり、二句目は「視線の先に」が言い過ぎているように思います。中七って難しいですね。
“難しい”

落書きの猫目印に紅葉散る

木染湧水

夏井いつき先生より
《第三回 ハシ坊と学ぼう!②》の『落書きの猫目印に芋煮会』を推敲しました。映像がはっきりするようにしてみました」と作者のコメント。

うーむ、これもまだ推敲の過程にあるかと。「落書きの猫(を)目印に」のあとの展開は、さらに面白くやれそうです。もうちょっと悩んでみて下さい。
“参った”

落葉掃く朝一番の仕事かな

谷山みつこ

連日の修行のごとき落葉掃き

谷山みつこ

夏井いつき先生より
【一句目】「《第三回 ハシ坊と学ぼう!②》の『落葉掃く始業せっせとまた落葉』を再び推敲しました。今度は推敲になったでしょうか?」
【二句目】「先の句は、無理矢理一句に押し込めていたのかもと思い、別々の句にしてみました」と作者のコメント。

たった十七音に材料を入れすぎるというのは、よくある話です。そんな時は、カメラのシャッターを切るように、細切れな映像を一句一句にしていくと、案外上手くいくことが多いのです。一句目は素直な推敲となりました。これでよいと思います。
二句目は、小さなヒネりを大袈裟に入れてみるのも一手です。

添削例
連日や修行のごとき落葉掃き
“ポイント”

寒月や門より魔女の森尖る

古瀬まさあき

水涸れて水路の罅の刃先めく

古瀬まさあき

ジパングに日食まだき室の花

古瀬まさあき

夏井いつき先生より
【一句目】「『寒月の門より魔女の森尖る』の推敲です。寒月の見える門を「寒月の門」としましたが、強引だったかなと思い、「や」で切りました」
【二句目】「《第三回 ハシ坊と学ぼう!②》の『水涸れて水路の罅の散らばりぬ』『水涸れて水路の罅の放たれり』の推敲です。分析と思考過程も送ります。『水涸れて』の大景から『水路の罅』へ、ぐぐぐとフォーカスが絞られていきます。そこから『散らばる』『放たれる』では、再び大景へ戻ってしまうし、表現も工夫したとは言えないように思いました。幾つか考えた結果、やはり、季語『水涸る』が主役にならないといけない。寒さと不穏さ、それらを水涸れて現れた『水路の罅』で表現したい。現場に戻って映像と気付きを再生すると、その水路の深さ、罅の暗さや異形にギョッとしたのを思い出しました。まるで異界へ繋がるような闇、冷たく硬質な先端、その向こうには水涸れた荒涼な世界が広がっているかもしれません。覗けばナニカと目が合ってしまうような不安も想像しました。罅の冷たさや硬さに『尖る』を用いようと思いましたが、もう一つ心理的な冷たさを加えるために『刃先めく』としてみました」
【三句目】「《第四回 ハシ坊と学ぼう!②》の『室の花渇き日食狂ひだす』の推敲です。動詞『狂ひだす』には『渇く』という強い措辞でバランスを取ろうと思いましたが、強すぎるとのご指導でした。新たに『室の花』と『日食』の取り合わせで検討しました。推敲前の句も個人的に気に入っているので、これはこれで大切にしておきたいです」と作者のコメント。

古瀬さん、丁寧にご自身と対話しつつ、推敲をなさってますね。その姿勢を強く誉めたいと思います。
これで100%、自分の表現したいことが言葉として形になった! と思っていたのに、数年経つと、まだやれることがあるのに気づく。そんな体験もよくあります。これらの句は、これらの句として保管しておきましょう。いつか句集が作れるようになった時、再度吟味すればよいと思います。
“とてもいい

帰路一服空き缶弄び秋思

梵庸子

霜柱しづかな光放つ朝

梵庸子

夏井いつき先生より
【一句目】「《第一回 『並』》の『空き缶と秋思抱えて帰路の駅』を推敲した句です」
【二句目】「《第四回 ハシ坊と学ぼう!①》を推敲した句です。原句『霜柱しづかに光放つごと』の『しづかに』と『ごと』についてご指導いただき、ありがとうございました。あらためて自分が詠みたかった景は何だったかを考え、推敲しました」と作者のコメント。

どちらの句も、作者ご自身が表現したい方向に、言葉を寄せることができていると思います。特に、一句目「帰路一服」からの展開、よく工夫しましたね!
“とてもいい

針なしの柱時計に春の星

藤井天晴

玄関に針なき時計春遅し

藤井天晴

玄関の針なき時計春寒し

藤井天晴

夏井いつき先生より
《第四回 ハシ坊と学ぼう!②》でとりあげた「苦労したあとの残る三句」を、さらに推敲した句のようです。三択ならば、一句目がまず落ちます。問題は、二句目と三句目の助詞の判断。「に」は「玄関」という場所が強調されます。「の」ならば「時計」のほうが強いですね。作者が表現したいニュアンスは、果たして?
“良き”

大晦日の雪野につどう烏かな

ぷるうと

夏井いつき先生より
《第四回 ハシ坊と学ぼう!③》で『烏百羽大晦日の雪野』の添削、ありがとうございました。軽くして『かな』で詠嘆しました。利いているでしょうか。『烏』か『鴉』かでも迷います」と作者のコメント。

これも推敲の途中経過かと思います。ひとまず、これらの形でキープしておいて、引き続き、脳の片隅に置いておきましょう。
“良き”