写真de俳句の結果発表

【第6回 写真de俳句】《地》

評価について

本選句欄は、以下のような評価をとっています。

「天」「地」「人」…将来、句集に載せる一句としてキープ。
「並選」…推敲することで「人」以上になる可能性がある句。
「ハシ坊」…ハシ坊くんと一緒に学ぶ。

特に「ハシ坊」の欄では、一句一句にアドバイスを付けております。それらのアドバイスは、初心者から中級者以上まで様々なレベルにわたります。自分の句の評価のみに一喜一憂せず、「ハシ坊」に取り上げられた他者の句の中にこそ、様々な学びがあることを心に留めてください。ここを丁寧に読むことで、学びが十倍になります。

「並選」については、ご自身の力で最後の推敲をしてください。どこかに「人」にランクアップできない理由があります。それを自分の力で見つけ出し、どうすればよいかを考えるそれが最も重要な学びです。

安易に添削を求めるだけでは、地力は身につきません己の頭で考える習慣をつけること。そのためにも「ハシ坊」に掲載される句を我が事として、真摯に読んでいただければと願います。

 

【おウチde俳句くらぶ事務局よりお詫びと追加掲載のご案内】(2021年4月27日付記)

 

いつもおウチde俳句くらぶをご利用いただきまして、心より御礼申し上げます。

第6回「写真de俳句」結果発表の際に、システム障害により、一部の会員様におかれまして、一句も俳句が掲載されていない、という事象が発生いたしました。
夏井先生の選を楽しみにされていらっしゃいました会員の皆様には、ご落胆とご心配をおかけしましたことお詫び申し上げます。

調査の結果、第6回の投句データを入手する上で、システムの不具合により、一部の投句データが反映されず、抜けてしまっていたことが原因だと判明いたしました。

未掲載の会員様の第6回「写真de俳句」の結果につきましては、データが復旧次第、夏井先生に見ていただきまして、追加掲載をさせていただきますので、今しばらくお待ちいただきますようお願い申し上げます。

ご迷惑をお掛けしました会員様には、個別に順次ご連絡をさせていただいておりますが、改めてお詫び申し上げます。

「一人につき最低一句は評価する」という、おウチde俳句くらぶで、会員の皆様が俳句のある生活を楽しんで頂けますよう、システム改修の上、再発防止に努めてまいりますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。

また当サイトおよび公式Twitter(https://twitter.com/ouchidehaiku)にて、最新の情報を掲載してまいります。
ご質問やお問い合わせも、随時こちら(https://ouchidehaiku.com/pages/contact)より受け付けておりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 

おウチde俳句くらぶ事務局

 

第六回写真de俳句 地
鴉の巣もつたいないの形です びんごおもて

鳥たちの巣の作り方は、それぞれ独特の形をしていて実に興味深いです。

蜜柑農家の句友からもらった小さな巣は、何の鳥のものだか分かりませんが、まるで人間が両手で丁寧に作ったかのような、いかにも巣らしい形をした巣。実に愛らしいのです。片や、うちのベランダに鳩が巣を作ったことがあるのですが、こちらは本当にやる気があるのか? と問いたいほどの雑さ。枝を放り投げただけみたいな巣なのです。

それらに対して「鴉の巣」とは? と一言で表現するならば、「もつたいないの形です」と言い切りました。不要になったものを集めてきたかのような鴉の巣を、詩的に定義。コロンブスの卵みたいな一句です。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

鳥の巣のビニルも犬の毛もやはし かむろ坂喜奈子

「鳥の巣」を敢えて特定していませんが、中七から下五にかけての「ビニルも犬の毛も」と具体的な材料を書いているのがいいですね。さらに最後の一語「やはし」によって、それらが春の風にそよいでいる映像が見える。さりげないけれど確かな描写力です。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

洗濯を干す八分や春の鳥 青に桃々

洗濯物を干すという家事の時間を「八分や」と詠嘆します。この具体的な時間を短いと思うか、長いと思うか。それは読み手の家族数や家事の丁寧さなどによって感じ方が違ってきます。が、逆に、そこがこの句の面白さではないかと思うのです。(家事の中で洗濯物を干すのは嫌いじゃない)私は、「春の鳥」たちと同じ空間にいると実感できる「八分」を、大いに楽しんでいるのではないかと読みましたが、皆さんはいかがですか。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

置き配のキャベツ鴉に無惨なり ふるてい

一読、うちも鴉で無惨な目にあったのを思い出しました。プラスチックごみを入れた透明な袋を鴉につつき回されて、引きずられて大変なことになっていたのです。私はちり取りと箒を手に、ご近所に散乱したゴミを回収して歩いた覚えがあります。

この「置き配」も実に気の毒。「キャベツ」は確かに季語なんだけど、季語としての力を発揮するというよりは、気の毒な犠牲としての映像がありありと見えてきます。笑っては申し訳ないけど、共感もあって思わず笑ってしまいました。鴉に襲撃されたものらは、まさに「無惨なり」の一言。イマドキの「置き配」という言葉もうまく生かされています。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

カラスしかゐない双眼鏡に梅 高橋寅次

バードウォッチングの「双眼鏡」でしょうか。お目当ての鳥には一向に出会えないのか、初心者でなかなか見つけられないのか。「カラスしかゐない」という投げやりな言い方や、敢えてのカタカナ書きなど、全ては、最後に出てくる季語「梅」のための伏線。作者の意図どおりの作品になりました。

  

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

子雀の引っ張り回すひげ根かな 亀山酔田

「子雀」は春の季語。巣に使われていた「ひげ根」を引っ張り回して遊んでいるのでしょう。親鳥が餌を採りに行っている間、子どもたち同士で遊んでいるのかもしれません。「子雀」の一物仕立てとして、中七の描写がいいですね。「~かな」という詠嘆は、飄々とした味わいです。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

鳥の巣があるからよそで戦おう 凪太

最初、悪ガキたちの戦いを思ったのです。「鳥の巣があるから」という理由で戦う場所を変えるって、この子たちどんな戦いをしているんだろう。そっか、一人一人がラジコン飛行機を持っていて戦っているのか。卵を抱いている鳥がいるみたいだから、「よそで戦おう」とは、ええ子らやなあ~と。

そう読んで自分なりに納得しているのに、なぜか脳内にイマジンが流れてきて……戦争をしている国や人々が、そこに「鳥の巣がある」と気づくようになるといいな。それに気づくようになれば、いつか「よそで」戦うことも止める日がくるのかもしれない。そんな深読みまでしてしまいました。ミャンマーの惨状に心痛めているからかもしれません。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

花冷や切れぬはさみのごと烏 古瀬まさあき

「花冷」は桜の咲く頃に気温がさがることを指す季語です。その季語の後に「切れぬはさみ」が出てくると、読み手は誰もが、切れ味が鈍ってきた鋏の感触を、我が手に反芻します。「切れぬ」ことが、季語「花冷」と響き合うので、冷たい鋏の鉄の感触がフラッシュバックします。その瞬間「~のごと烏」と比喩に展開する。これが実に巧いです。私は、真っ黒な烏が羽を折りたたもうとする一瞬の動作を思いました。こんな表現もあるのかと感心しました。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

鳥の巣や靄立ち込めるジャンプ台 砂楽梨

「鳥の巣や」と詠嘆していますので、ほとんどの読み手が鳥の巣のアップに近い映像を思い浮かべるはずです。そこから中七「靄」がでてきます。「立ち込める」という描写によって、鳥の巣を包んだ靄が濃く広がっていることが分かります。一句は少しずつ、引きの映像になっていきます。そして下五に出現する「ジャンプ台」によって、高低差と広さを併せもった映像となる。このカメラワークのなんと巧いことでしょう。たった十七音でこれだけの映像が描けるってカッコイイですよね。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき

鴉の巣愁ひの空の中腹に 西原みどり

「鴉の巣」があんな高い梢にある、と気づいたのです。まさに作者は、今回の兼題写真の桐の木の下に立ち、鴉の巣をありありと見上げたに違いありません。「愁ひの空」という詩語によって、春のなんという理由もない鬱々たる気分が思われます。その空の「中腹に」ある「鴉の巣」を見上げる作者は、己の心にある深い春愁と向き合っているのかもしれません。

おうちの中にもタネがいっぱい 夏井いつき