ドリルde俳句の結果発表

【第7回 ドリルde俳句】②

ドリルde俳句結果発表!

始めに

皆さんこんにちは。ドリルde俳句のお時間です。
出題の空白に入る言葉を考えるドリルde俳句。出題の空白を埋めてどんな一句が仕上がったのか、【第7回 結果発表①】に引き続き、皆さんからの回答を紹介していきます。
“良き”

第7回の出題

○○○○や汝とならば○○○○も

その前にもう一度、今回の出題の元ネタになった正岡子規の原句を見ておきましょう。

てふてふや汝とならばどこまでも 正岡子規

正岡子規の原句を知ってか知らずか、下五「どこまでも」と回答した方がけっこういらっしゃいました。中七下五の一致数でいえば「汝とならば朝までも」以上に多かったです。

タンポポや汝とならばどこまで

花弘

「タンポポ」は原句「てふてふ」と似たイメージ。蝶が動物として動きを伴っているのに対しタンポポは植物ですが、綿が飛ぶことによって動きを獲得し得ます。風が吹いて綿毛が飛んでいく瞬間のイメージでしょうか。〈ばあさんや汝とならばどこまでも あすか風〉は長年連れ添ったご夫婦のイメージ。これも「どこ」が場所と時間、両方の要素を含み得ますね。

我夫や汝とならばどこまでも ともっち〉も、ご夫婦だけど「我夫」が漢字表記なのも相まって迫力があります。結婚式の誓いの場面の可能性も。〈寄居虫や汝とならばどこまでも 通翁〉は対象が人間以外になりました。手に乗せて運んでる? 啄木のようなさみしい海岸。
“激励”
ばあさんや汝とならばどこまでも
正岡子規の元句からしてそうなのですが、下五を「どこまでも」にした場合、「どこ」という不明確な場所・定まらない目的地をイメージに残して一句が終わってしまいます。

その結果、下五に「どこまでも」を配した場合、季語と、「汝」の存在へと意識がより強くフォーカスしていきます。

《花弘》さん以下四名の回答も、「汝」という相手の存在を強くイメージした結果、上五に具体的な「汝」を配したものと推察されます。このことは、言葉の経済効率に関連付けて考えてみると興味深い。

辞書をひいてみると……
 

汝【なんじ】
対称の人称代名詞。親しい者、目下の者、動物などに用いる。


とあります。親しい家族、動物(生き物)を具体的にするために上五を費やしているわけですが、以下のような例はいかがでしょう。
“良き”

春空や汝とならばどこまで

ぱんだ社長

 

夏空や汝とならばどこまで

横浜月子

上五を「汝」の説明に使っていない二句。「春空」はのどやか、「夏空」は溌剌(はつらつ)。雰囲気に若干の差はあれど、ともに明るい空が目の前に広がります。上五を「汝」の具体的な対象ではなく、「場所」あるいは「状況」の説明に使用しました。これは「汝」という言葉の経済効率を勘定に入れた上での選択と考えられます。

どういうことかといいますと……
「汝」は上述の通り、【親しい者、目下の者、動物など】を示します。中でも、優先的に思い浮かべるのは前者二つ。つまり「ある程度心的距離感のわかる人間」なのではないかと。

「汝」の一語で対象の人物の存在、しかもその親密度まである程度わかるなら、これは大変言葉の経済効率の良いことです。
“良き”
例えば「小学校からの大親友で、大人になった今も一緒にいるAくんと一緒にかき氷を食べる」という内容を述べたかったとします。この情報全てを丁寧に述べていたら、あっという間に十七音を超えます。

そこで登場するのが「汝」のような人称代名詞です。

代名詞とは、ある言葉を別の言葉に置き換えて述べるための器。上の例でいえば「小学校からの大親友で、大人になった今も一緒にいるAくん」を「汝」の代名詞に置き換えるわけです。「汝」だと格式張った感じがするので「君」くらいのニュアンスでしょうか。

もちろん、小学校からの大親友で云々といった情報までは「君」の一語がカバーしてくれるわけではありません。ですが、他の言葉との組み合わせ次第で読み手に「もしかしたら、この『君』との人間関係はこうだったのかもしれない」と予想させることはできます。例えば……〈廃校の今君と食うかき氷〉くらいならいかがでしょう。なんとなく「君」との関係性を想像できるのではないでしょうか。

長くなりましたが、「汝」の言葉の経済効率について伝わったでしょうか。
“ポイント”
廃校の今君と食うかき氷
〈③へ続く〉